[No.412-2]昔のケータイ
No.412-2
答えは単純明快だ。
「目覚まし時計の代わりよ」
「目覚まし?」
スマホにその機能が備わっていないわけじゃない。
「じゃぁ、なんで?」
「いちいち、面倒でしょ?アレもコレも1台に任せてたら」
ただでさえ、色んな役目を背負わせている。
「だから、目覚まし時計専用にしようかと」
目覚まし時計を買わないのは、地球にやさしい行為のつもりだ。
使えるものは使えばいい。
それにしても当時の最新機種がいまや時計代わりだ。
何となく神妙な気持ちにもなる。
「それに、これ見てよ!」
「見てって・・・普通にメニュー画面じゃん」
見てもらいたいのは、画面そのものじゃない。
「文字、見てよ?」
「文字?・・・今となっては随分、見難いわね」
極端に言えば、昔遊んだファミコン風のドット文字だ。
今とは滑らかさが違う。
「これが良いんじゃない!」
「全然、その気持ちわかんないけど」
何となくノスタルジックな気分になる。
ちょっと、一息つけるような、そんな感覚だ。
その目覚まし時計は今でも現役だ。
ベットの傍らに置いてある。
ただ、メールも着信履歴も全て消去した。
毎晩、枕を涙で濡らすわけにはいかないからだ。
(No.412完)
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