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[No.411-1]交錯する季節

No.411-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
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「ん?」
「ん?」

世界一とも言えそうな短い会話を彼と交わした。
でも、意志の疎通はできていると思う。
私は何かに気付いた“ん?”だ。
彼は私の“ん?”に対する“どうしたの?”的な“ん?”だ。

「もう、そんな季節になってきたのね」
「もしかして、この匂いのことか?」

今時期になると飛び込んでくるキンモクセイの香り。

「ただ、いつもすぐに名前が出てこなくて」

・・・というより、ある植物と間違えてしまう。

「間違える?」

香りに気付き、何の植物か考える。

「この香り・・・“沈丁花”だったかなぁ~って」

はっきりしないので、それを確かめるべく、ネットで検索してみる。
そこでようやく間違いであることに気付く。

「確か、春の植物だよな?」

似ても似つかない名前なのに、いつも勘違いしてしまう。

「そうなんだよね、季節的に似てるからかな?」

キンモクセイの香りが漂うのは、だいたい10月の上旬ごろだ
一年の中で、気温的に過ごしやすい時期でもある。
ただ、そう考えると、過ごしやすい時期がもうひとつある。

「・・・春?」
「うん、4月ごろもそうかな」

寒さが暑さに変わる時と暑さが寒さに変わる時。
その一点で捉えると同じだ。
その頃にキンモクセイも沈丁花も香る。

(No.411-2へ続く)

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