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[No.408-1]黄色い電車

No.408-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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「ねぇ、覚えてる?」
「・・・線路のことか?」

今まさに歩いているこの道に、かつて線路が通っていた。
単にそれだけじゃない。
だから、何気ない問い掛けにでも、すぐに答えることができた。

「こんな広い道路になるなんて、想像すらしてなかったよね」

当時は線路が1本だけの幅の狭い、土手だった。

「牛、居たしな」
「そう!今じゃ信じられないけど」

なぜ牛が居たのか、説明できない。
物心ついた時には、すでに牛が放し飼いされていた。

「話を戻すけど、まだ覚えてる?」
「まぁ・・・な」

高校生になる前の最後の春休みだった。
僕らは、この場所に居た。
休みが終われば、僕らは別々の高校に通うことになっていた。

「急に呼び出されて驚いたよ」

優美子(ゆみこ)とは、いわゆる幼なじみの関係だ。
今となれば、この言葉自体、死語に近い。

「だって、初めて別々の学校に通うのよ?」
「当時も言ったけど、理由になってない」

幼なじみであっても恋人ではない。
それどころか、友人と言いがたいところもある。

「だから、気持ちを伝えておこうかと思って」

黄色い電車が走ると噂されるこの線路で、気持ちを確かめあった。

「別に、ここじゃなくても良かっただろ・・・」
「だって、幻の黄色い電車に出逢えるかもしれないのよ?」

いつの頃からか、幻の電車の噂が広がっていた。
噂によれば、その電車は海沿いの工場へ資材を運んでいるらしい。
ただ、目撃情報はまるでなかった。

(No.408-2へ続く)

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