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2012年10月

[No.408-2]黄色い電車

No.408-2

「今で言う、都市伝説だったかもしれないな」

それに正確に言えば電車ではなく、“汽車”だ。

そもそも、なぜそんな噂が出たのか知る由もない。
噂が噂を呼び、いつしか幸せを運ぶ幻の黄色い電車になっていた。
その電車を見ると願い事が叶うとか、どうとか・・・。

「もしかして、だからこの場所を選んだのか?」

あの日、優美子(ゆみこ)から告白された。
でも、あくまでも幼なじみとしてしか見ていなかった。

「そうね、だからフラれたのかな?」

電車が来なかったことを言ってるのだろう。
つまり、願いは叶わなかったと。

「来るわけないのは、優美子だって知ってただろ?」
「鈍感ね!だからここを選んだの」
「あっ・・・」

ある意味、女性らしいけじめの付け方なのかもしれない。
フラれることが分っているからこそ、あえてこの場所を選ぶ。

「ごめん・・・」

僕を気遣ってのことだろう・・・電車には悪いがそう言うことだ。
電車が来なかったから、優美子はフラれた。
お互い、そう考えればそれで済む部分もある。

「それはそうと、どうしてここに呼び出したか分かる?」

線路がない以上、どう転んでも電車はこない。

「来たわよ」
「えっ!・・・なんだ・・・脅かすなよ、バスじゃないか!」

確かに黄色いバスのせいか、一瞬驚いた。

「あ!バレた?」
「呼び出したのは驚かせる目的があったからだろ?」

この時は知らなかった。
地元をしばらく離れていたために、ある噂が広まっていたことを。No408
(No.408完)
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[No.408-1]黄色い電車

No.408-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「ねぇ、覚えてる?」
「・・・線路のことか?」

今まさに歩いているこの道に、かつて線路が通っていた。
単にそれだけじゃない。
だから、何気ない問い掛けにでも、すぐに答えることができた。

「こんな広い道路になるなんて、想像すらしてなかったよね」

当時は線路が1本だけの幅の狭い、土手だった。

「牛、居たしな」
「そう!今じゃ信じられないけど」

なぜ牛が居たのか、説明できない。
物心ついた時には、すでに牛が放し飼いされていた。

「話を戻すけど、まだ覚えてる?」
「まぁ・・・な」

高校生になる前の最後の春休みだった。
僕らは、この場所に居た。
休みが終われば、僕らは別々の高校に通うことになっていた。

「急に呼び出されて驚いたよ」

優美子(ゆみこ)とは、いわゆる幼なじみの関係だ。
今となれば、この言葉自体、死語に近い。

「だって、初めて別々の学校に通うのよ?」
「当時も言ったけど、理由になってない」

幼なじみであっても恋人ではない。
それどころか、友人と言いがたいところもある。

「だから、気持ちを伝えておこうかと思って」

黄色い電車が走ると噂されるこの線路で、気持ちを確かめあった。

「別に、ここじゃなくても良かっただろ・・・」
「だって、幻の黄色い電車に出逢えるかもしれないのよ?」

いつの頃からか、幻の電車の噂が広がっていた。
噂によれば、その電車は海沿いの工場へ資材を運んでいるらしい。
ただ、目撃情報はまるでなかった。

(No.408-2へ続く)

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ホタル通信 No.143

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.56 エンドロール
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

実話度は高いのですが話をまとめられずに、苦労したことを今でも覚えている作品です。

この話、2つの実話をやや強引に組み合わせた作品であり、概ね前半と後半でそれぞれひとつの話になっています。
本来は前半の話を主軸として最後まで展開するつもりだったのですが、後半の話を組み合わせたら、上手くラストを飾ることができるかもと当時は思っていました。
ところが、結果的にこんな出来栄えになっています。何と言いましょうか・・・“散らかった”感が満載です。

前半の話、恥ずかしながらほぼ事実なんですよね。
結局、何がしたかったんでしょうね、私って・・・。彼に、良くも悪くもキズを付けたかったのかもしれません。
それと、ポインセチアに付けた手紙の内容、今でも何となくですが覚えています。ただ、手紙と言っても一行程度の非常に短い内容でした。

後半は友人との会話に関しては創作です。それ以外の映画やエンドロールにまつわる部分が事実なんです。
たまに演出としてありますよね?エンドロールが終わったあとに、次回作への布石や何年後かのシーンが流れたり・・・。
そんな経験から、今でも映画を見るときにはエンドロールまでしっかり見て、それ以上何もないことを確認してから劇場を後にします

最後にこの流れを受けて、もう一言だけ付け加えますね。
エンドロール・・・これが流れている時が映画って一番楽しいってご存知でしたか?エンドロールこそ、映画の最大の見せ場なんですよ。
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[No.407-2]旅の終わり

No.407-2

「じゃあ・・・ちょっと迎えに行ってこようかな~」
「うちも行く!」

更にまずい。
家に居させる理由を何か考えなければならない。

「そうそう!お土産・・・びっくりさせたいって!」
「だから、家に居てくれって、せいじゅうろうが」

口からでまかせの割には、ナイスアイデアだ。

「ほんま!?」

菜緒(なお)以外には絶対使えないアイデアだ。
でも、全く勝算がないわけではない。

(あれを使おう・・・)

昨日、沖縄帰りの人からお土産を貰った。
まだ封は切っていない。

「あぁ、だからちょっと行ってくる」

大急ぎでお土産とせいじゅうろうを自分の家に取りに行った。

「沖縄行ってはったん!?」
「・・・みたいだね」
「どうりでええ感じで焼けてるやん!」

多分・・・いや100%、もとから焼けている。

「しばらく、菜緒の家に居たいって」
「うちはええよ」

俺もその方が都合がいい。

「じゃ、せいじゅうろうはここ!」

まるで俺と菜緒と・・・・みたいだった。
No407
(No.407完)
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[No.407-1]旅の終わり

No.407-1    [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
(困ったぞ・・・)

前から分ってはいたし、それを承知の上で買い替えた。
でも、さっきからスマホとにらめっこが続いている。

「せいじゅうろうは元気にしてはる?」
「ん?も、もちろんだよ!」
「あいかわらず、ダラランとしてる」

かわし方も板についてきた。
加えて、その内容も菜緒(なお)好みだ。

「やっぱり、そうなんや!」

俺のせいじゅうろうだけでなく、リラックマの基本設定だ。
ただ、そこを突っ込んではいけない。

「ほんなら、あいさつしとこか」
「・・・せいじゅうろうに?」

聞くまでもないが、つい聞いてしまった。
まずい・・・非常にまずい。

「どないしたん?」
「い、いや・・・ね・・・せいじゅうろうは旅に出てまして」

買い替えたスマホにはストラップが付けられない。
つまり、せいじゅうろうはそこにはいない。

「そうなんや!じゃあ、帰りを待つとしますか」
「・・・どこで・・・って、ここで!?」

別に試されているわけじゃない。
菜緒が至って本気なだけだ。

「自分の家やもん、待っててもええやん」

確かに間違ってはいない。
でも、待っていてもせいじゅうろうは帰って来ない。

(No.407-2へ続く)

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[No.406-2]自分磨き

No.406-2

「だからね、自己研鑽って、自分のためというよりも・・・」
「人のため、会社のため・・・って感覚ね?」

本来はそうでなければならないとは思っている。
単なる趣味感覚ではなく、アウトプットできてこそ成果だ。
それの方がやりがいもあるだろう。

「ただ、自己研鑽と言う名の“仕事”のように感じるの」

仕事であり、義務であり・・・一種の強迫観念にも似ている。
自分を磨き続けなければ、輝きを失うという・・・。

「頑張り過ぎじゃない?」
「・・・そうなのかな」
「それに、あなたA型でしょ!」
「関係あるの!?」

この後、顔を見合わせて、ふたりとも大笑いした。
どんよりしていた雰囲気が一気に晴れて行った。

「・・・ありがとう」
「別にいいわよ、それに磨き過ぎたらどうなると思う?」

もし、私がホンモノなら磨き続けてもいい。
逆にニセモノなら、メッキが剥がれる・・・そんなことを言い出した。

「だから本質を変えて、本物にならなきゃ!」

話が横道に反れている気がする。
けど、有り難い話を聞いているような気もする。

「何だか微妙だけど・・・そうする!」
「でも、メッキが剥がれるのは何も悪いことばかりじゃないのよ?」
「どうして・・・あっ!」

メッキが剥がれたお陰で、私は本音を友人に話すことができた。
メッキが剥がれた後に、自分を磨けばいい。

(No.406完)
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[No.406-1]自分磨き

No.406-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
かつて学生だった頃の私と今、社会人としての私。
同じことに対して、感じ方が異なる。

「いきなり、秋のなぞなぞ大会?」
「そう!それって、な~んだ・・・って、違うわよ!」

久しぶりに、ノリツッコミした。

学生時代、英会話に興味を持ち、授業とは別に勉強を始めた。
それは社会人になってからも続いている。

「その割には実力が伴っていないけど・・・」

とにかく、自己研鑽のつもりで続けている。

「で、なぞなぞの答えは?」

学生時代は、自己研鑽という感覚は微塵も感じていなかった。
趣味とも言えないけど、それにも似た感覚だ。

「それが社会人になったら」

それが自己研鑽に変わった。

「何か問題でも?」

別に問題はない。
ただ、今まで自分のためにやってきたことなのに・・・。

「・・・なのに?」
「何となく、誰かのためというか・・・」

社内ではグローバル化に向けて、英語の能力向上を求め始めた。
丁度、私が入社した時期からだ。

「いつしか、会社のために勉強するような感覚になったの」

決して悪くない、むしろ社員の鏡だろう。

(No.406-2へ続く)

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ホタル通信 No.142

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.175 ポストの前で
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

実話度の通り、ほぼ100%創作なのですが、なぜこのような話が生まれたのか、不思議に思うことがあります。

ほぼ100%とは言え、何らかのきっかけがなければ、話が生まれないのも当ブログの特徴です
決して「このような話を作ろう」から生まれるのではなく、例え、ごく小さな出来事であったとしても、現実に経験したものからしか創作はしません。
今回はそれが郵便ポストであり、ポストに手紙を入れる小学生でした。

冒頭に記載しましたが、今回のポストがなぜこのような話に展開したか、自分で言うのも何ですが不思議です。
現実にありそうな話でもあり、なさそうな話でもあり・・・ただ話としては“でき過ぎ”感は否めません。都合良く手紙の相手が、それも早期に判明したりしていますからね。
超短編なので多少、時間を飛び越して、話を展開させてはいるものの、ちょっと狙い過ぎです

なぜこのような話にしたのか、不思議だとは思いながらも意図したものが無かったというわけではありません。
シチュエーション的に小学生、それも低学年の女の子がポストに手紙を入れようとしている。もちろん、両親に頼まれたのかもしれませんが、その時はそうは考えませんでした。
そこに根拠はありませんが、とにかくその時は友人に宛てた手紙である・・・私にはそう見えたのです。

内容はほぼ創作ですから、読んで頂いた通りの内容です。
ただ、ラストがイマイチで、何とも締りがない終わり方になっています
言うなれば、謎めいた話でもあるため、その謎を解き明かすようにラストへ向かいますから、こんな感じになってしまった・・・と、振り返ればそう思っています。
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[No.405-2]御堂筋線

No.405-2

「せっかく、ここに来たんだからプレゼントするよ」
「ホンマに!?」

その後の奈美(なみ)の喜びようといったら・・・。
こちらとしてもプレゼントのしがいがある。

「ついでに、3つ買えばいいよ」

これでいわゆる1セットというか、1家族というか・・・。

「これなら奈美の家に、居候・・・って設定もありだろ?」
「うん!うちが“かおるさん”の代わりやね!」

そう言うと、吟味に入った。
奈美曰く、大量生産とは言え、微妙に表情が違うらしい。

「これとこれと・・・これにする!」

やっと決まったらしい、時間にしておよそ30分。

「ちょ、ちょっと・・・休憩タイム!」

とりあえず、近くのカフェで休憩することにした。
けど、休憩するはずのカフェでも相変わらず奈美は元気だ。
もう、さっき買ったキャラクターで遊び始めた。
それを僕はただ、黙って見ていた。

「・・・そろそろ、時間じゃない?」

目的の場所が難波とは言え、そんなにノンビリしていられない。

「ほんまや!仕方ないなぁ~」

奈美だけではなく、僕も渋々、カフェを後にした。

「じゃあ、また」
「うん」

ごく短い言葉を交わしてから、奈美の背中を見送る。
けど、すぐに行き交う人の波にのまれ、その姿を見失った。
ここは、御堂筋線天王寺駅・・・。
僕は改札前でいつまでも遠くを見ている。
No405
(No.405完)
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[No.405-1]御堂筋線

No.405-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「じゃあ、また」
「うん」

ごく短い言葉を交わしてから、奈美(なみ)の背中を見送る。
けど、すぐに行き交う人の波にのまれ、その姿を見失った。

「もっと居たいけど用事があるねん」

以前なら、サラッと受け流していただろう・・・でも今は違う。

「どんな用事?」
「撮影があるんよ」

今更、驚きはしない。
奈美がモデルの仕事しているのは知っている。
ただ、いわゆる表立ったモデルとは装いが異なっていた。

「何時までならいいの?」
「せやね~15時までなら」

面倒を避けるなら、OLだと言えば済む。
それでも面倒なら、フリーターやアルバイトと言えばいい。
けど、奈美はあえて面倒な方を選んだ。

「わかった、15時だね」

だから、ウソも付いていないし、隠そうともしない。
ただ・・・何かを避けている。

「うち、行きたいとこあるねん!」
「どこ?」

僕の問いは答えず、とりあえず僕を腕を引っ張る。
その雰囲気から、目的の場所は近くだということがわかる。
案の定、数分後には目的の場所に到着した。

「ここにも売ってたんだ!」

目の前に見慣れたキャラクターが山積みになっていた。

「どれにする?」
「・・・どれって?」

(No.405-2へ続く)

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[No.404-2]暗証番号

No.404-2

「他にも・・・ね」
「そんなに軽々しくしゃべって大丈夫?」

少なくとも自分の記憶以外の場所には、それらは存在しない。
だから探すことも推測することもほぼ不可能だ。

「誕生日もあるのよ、もちろん自分のじゃないけど」
「家族?」

家族の誕生日も自分と同じくらい危険だ。
範囲が限られているため、バレる危険性は高い。

「違うよ、元カレ・・・」
「それも、一番最初の」

6番目とか9番目の人だと中途半端過ぎて覚えられない。
だから、一番最初の人を選んだ。

「私にケンカ売ってる?」
「・・・い、いや、その・・エヘヘ」

モテると言うより“続かない”と言った方が正解だ。
それに惚れっぽいところもある。
だから、数だけは多い。

「ある意味、一番最初のカレは“忘れられない”人ね?」
「うまいこと言うわね!」

随分と前のカレだ。
さすがに引きずるものもなければ、ヨリを戻すつもりも全くない。
でも、言われた通り、確かに今でも忘れられない。
・・・というより、忘れてはいけない。
404
(No.404完)
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[No.404-1]暗証番号

No.404-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・何番だと思う?」
「わかるわけないでしょ!!」

他人に容易に推測されるなら、暗証番号とは言えない。
それは百も承知している。

「だってぇ~たくさんあるんだもん!」

世の中、暗証番号で溢れている。
加えてネット社会だ。
ログインIDだの、ログインパスワードだの、きりがない。

「たかが4桁じゃない?」
「でも、自分の生年月日は使えないし」

適当に4桁を選ぶわけにはいかない。
それこそ忘れてしまえば、二度と思い出すことはないからだ

「今まではどんな数字使・・・って、いえるわけないか?」
「構わないわよ、ひとつは私書箱の数字を使ってる」
「・・・ししょばこ?」

中学生の頃に、とあるラジオ番組をよく聞いていた。
私書箱とは、その番組へのハガキの送り先だ。

「私書箱もビックリだけど、ラジオってことも驚いたわ」
「意外に面白いのよ!」

へたなテレビ番組よりもずっとおもしろい。
それに受験勉強しながらでは、テレビを見るわけにもいかない。

「正論のような何か違うような・・・」
「まぁ、まぁ、それはそれとして!」

そのラジオ番組の私書箱の数字を今でも使っている。

(No.404-2へ続く)

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ホタル通信 No.141

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.144 彼の傷
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

最初にネタばれさせておきましょう。小説上では女性が男性を傷付けたようになっていますが、現実はその逆です。

それでは、もう少し話を進めて行きましょう
前述通り、男性が女性を傷付けてしまったことは事実です。
ただ、作者がどちらであるかはいつも通り、秘密とさせてくださいね。
また、ちょっとややこしいですが、小説上の男女を入れ替えて読み直して頂けませんか?同じ話であっても、感じ方が変わってくると思います。
例えば、後半冒頭を女性に置き換え、2行目まで続けると次のようになります。

「知っての通り、私の人生はお世辞にも幸せじゃない」
「子供心に、随分傷付いたしね」

“僕”が“私”に替わっただけですが、これである事実が浮かび上がってきます。つまり、この“私”という女性は当ブログで度々登場する“ある人”に他なりません。
もちろん、“ある人”は他人かもしれませんし、作者そのものかもしれません。

小説の内容が特にグロテスクということもなく、どちらかと言えば淡々と話が進んで行きます
ただ、表面的にはそうであっても、事実はこんな程度では済まないため、例え、それを知らない方々に公表するのであっても、少しためらいがありました。
そこで、性別を入れ替え、第三者的な立場でそれらを描いて行こうと考えた次第です。

彼の傷・・・ではなく、“彼女の傷”が正解ですよね。
その傷は目に見えないものもあれば、目に見えるものもある。それに浅い傷もあれば、深い傷もある。
その傷が癒えることはなかったけど、一緒に泣いたり、怒ったり、笑ったり・・・少しでも同じ時間を共有することで、何らかの答えを見出そうとしていました。
全体的に冬のホタルらしい重いムードでラストを迎えようとしていたので、ラストは少しコミカルにしてみました。
No144
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[No.403-2]時は流れる

No.403-2

「逆に転勤でブルーじゃないって、やっぱり大物よ、あなたは」
「そうかな・・・」

同僚もまた転勤で私の職場にやってきた。

「私なんか、どれだけブルーだったか・・・」
「そうなの?歓迎会のハシャギっぷりからは想像できないわね!」
「それは言わないの!」

会社勤めの宿命だ。
それは会社に入る前から、承知している。

「それにしても、そんなの単なる偶然よ」
「別に偶然があなたに合わせたわけじゃない」
「それは分ってるの」

ホームページも近所のカフェも物理的に姿を消した。
端的に言えば、無くなった。
でも、私の中ではそうではない。
無くなったと言うより・・・。

「なんだか役目を終えたように感じてしまうの」

自らの引き際が分っていたかのように・・・。
さしづめ、スポーツ選手の引退にも似ている気がする。

「ほんと・・・大袈裟というか・・・」
「まぁ、そこがあなたらしいけど」


新天地に着くなり早々、私好みのカフェが近所にオープンした。
それに、閉鎖されたホームページがリニューアルオープンした。

「そろそろ唯一、止まったままの時を動かさないと・・・ね!」

これから本気で恋をしようと思った。

(No.403完)
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[No.403-1]時は流れる

No.403-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「あっ・・・」

お気に入りのホームページが閉鎖されていた。
いわゆる、ページが見つからないのではない。
はっきりと“閉鎖のお知らせ”が掲載されていた。

(続くね)

1週間前、近所のカフェが閉店した。
日曜の午後はそこで過ごすのが定番になっていた。
それが・・・突然の閉店だった。

「なんだか元気ないわよ?」
「あっ!ごめん・・・」

同僚が気を使ってくれたけど、理由はそれじゃない。

「転勤のこと言ってる?」
「やっぱり、ブルーになっちゃうよね」

ゼロではないが、ブルーになるほどでもない。

「それより、他に理由があるんだ」
「他に?もしかして・・・」
「ん?違う違う!居ないのは知ってるでしょ?」

ホームページ、近所のカフェ・・・。
単なる偶然だろうが、他にも似たような出来事が続いた。

「まるで私の転勤に呼応するかのように」

次々に馴染みのものが姿を消して行った。

「私の想い出まで消されていくようで・・・」

偶然だと分っていても、こうも重なると文字通り“重く”なる。

(No.403-2へ続く)

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[No.402-2]前方後円墳

No.402-2

「“かぎ穴”って書いたの」
「・・・なるほど、まんまね」

逆に当時はそれ以外考えられなかった。

「それで恥をかいたとか?」
「ううん、恥は書いていない」

それを公表されたわけでない。
それに、そう答えたのは私だけではなかった。

「少しも、悲しい話には聞こえないけど?」
「ちゃんと答えていた人も結構居たのよ」

教科書には“前方後円墳”の記載はなかった。
授業中にもそんな言葉は出てこなかった。
もちろん、私の思い違いかもしれないが・・・。

「答えていた人ね・・・みんな塾に通っていたの」

その時、友だちとの間になんらかの距離を感じた。

「知らないうちに、みんな勉強してるんだなっ・・・てね」
「・・・そっか」

今、振り返ると既に競争社会がそこにあったように思える。
人より先に進む人、知らず知らずに置いて行かれる人・・・。

「でも、丸は貰えなかったけど、三角は付けてくれたのよ」
「今じゃ、そうはいかないけどね」
No402
(No.402完)
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[No.402-1]前方後円墳

No.402-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「“前方後円墳”に想い出がある人って居るの!?」

友人がそう言うのも無理はない。
デートコースの定番では到底ないのだから。

「観光で?」
「ううん、場所ではなくて・・・」

言うなれば、この言葉自体に想い出がある。

「私の中では、ちょっと悲しいエピソードかな?」
「是非、聞かせて欲しいわね」

当時の顔ぶれから、多分、小学5年生か6年生の時だと思う。
社会のテストで、これが出題された。

「写真付きで“この古墳の形状は?”的な問題だったと思う」

とにかく“前方後円墳”が答えとなる問題だった。
でも、私は別の答えを書いた。

「それに対して、私は何て答えたと思う?」
「無難な線で、後方前円墳とか?」

なにが無難なのか不明だが、そんな高度な間違いではない。

「見たまんまで答えたの」
「見たまんま?」

当時は結構自信をもってその答えを書いた。

(No.402-2へ続く)

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ホタル通信 No.140

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.158 白いネコ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

冬のホタルでは人間以外の動物が中心となる話が数多くあります。そのひとつが、ネコです。

今でもネコと出逢う機会は多く、度々小説に登場して頂いております。ただ、この話は自宅周辺ではなく、勤めている会社近くでの出逢いを描いたものです。
話が若干それてしまいますが、作者はネコ好きで、それも野良ネコ派です。別に飼いネコが嫌いという意味ではなく、品種はどうであれ、野良としてたくましく生きている姿から人間は多くのことを学ぶ必要があります・・・ちょっと大袈裟だけど

さて、今回の話は小学生の頃に好きだった男子をネコとダブさせています。小説中も書いた通り言葉は悪いですが、薄汚れた部分を重ね合わせました。
つまり、毎日、泥まみれになりながらも遊びに夢中になっているワンパク小僧ということです。話をネコに戻せば血統書付きのネコよりも、野良ネコ、それも薄汚れてどうしようもないような、そんなネコが大好きです。結果的には今回の話は、これに尽きるわけです。

では、ラストシーンに触れておきますね。
“あの日の彼も・・・そうだった”は特にひねりは加えていませんので、読んで頂いた通りです。
朝、ネコがぎこちないながらも私の呼び掛けに応じてくれたように“あの日、彼も照れくさそうに私の元へ来てくれた”というようなシーンを想定しています。
今更ですが、実話度は前半についてはほぼ実話で、後半はほぼ創作です。

様々な境遇にいる野良ネコを見ると、今でもそこに何らかの想いを重ね合わせてしまいます
人間が居てもお構いなしで、目の前を堂々と歩いている姿を見ていると、自分のちっぽけな悩み事が吹き飛んでしまうことさえ・・・。
No140
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[No.401-2]水なす

No.401-2

“すっぱいぶとう”かもしれないが、そう思うことにした。

水なすのことは最近知った。
たまたま別の用事で立ち寄った場所が、その名産地だった。
やたら水なすを強調した店先ののぼりが気になってはいた。

「でも後で聞いたんだよな、美味しいって」

結局、気になりながらもその場所を後にした。

「・・・で、何の気なしに聞いたら・・・」
「美味しいって?」
「それに“考えが変わるほどに”って言うもんだから」

居ても立っても居られず、その足で近くのデパートへ向かった。

「冷静なってみると近くのスーパーでも売ってたけどな」

その時は、そこそこ値が張り、やや特殊な存在と聞かされていた。
だから、確実に手に入れるため、デパートを選択した。

「結構、行動力あるのね!」
「まぁな、食に関しては」

実際、髪を切りに行くことすら、面倒に感じる自分だ。
ん?・・・髪・・・切る・・・!

「あっ!さっき、髪がすっきりしたことを問い掛けただろ?」
「ん?・・・そうよ」

なんだ・・・ちゃんと耳に入っているじゃないか。

「じゃあ、どうして“水なす食べたい”になるんだよ」
「だって、水なすっぽかったんだもん!髪型を含め」

(No.401完)
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[No.401-1]水なす

No.401-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「どう?すっきりしただろ?」

行動力が欠けているせいか、しばらく髪を切りに行ってなかった。
でも、昨日ようやく切りに行けた。

「水なす、食べたい・・・」
「へっ?」

思いも寄らない言葉に、なんとも間の抜けた返事をしてしまった。
ただ、思いも寄らないとは言え、思い当たる節はある。

「そんなに美味しかった?」
「えっ!私、何か言った?」
「水なす食べたい・・・って言ったけど」

うわ言のような雰囲気は漂っていたが・・・。

「あっ・・・うん・・・確かに食べたい」

答えになっているようで、なっていない。

「また買って来ようか?」

少々値は張るが、確かに美味しい。
愛奈(まな)から、うわ言のような言葉が飛び出すのも理解できる。

「いいの?」
「それほど美味しかったんだろ?」

(それにしても・・・)

愛奈に何かを問い掛けていたはずなのに、もう思い出せない。

「やったぁー!」

まぁ、いい・・・どうせ思い出すほどのことでもないのだろう。

(No.401-2へ続く)

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[No.400-2]あなたと繋がる場所

No.400-2

「見てもらえたの?」

本当なら先に“誰に?”と聞きたいのが本音だろう。

「・・・どうだろう・・・わからない」
「そもそも“見に来てね!”なんて言ってないから」
「それじゃ・・・」

確かに矛盾している。
見に来て欲しい人が居るのに、何も話してはいない。
友人が不思議そうな顔をするのも無理はないだろう。

「でもね、大丈夫なの」
「何か秘密がありそうね」

そこまで大袈裟ではないけど、それなりに秘密がある。

「私のブログのサブタイトル、覚えてる?」
「えっと・・・確か・・・」

“何気ない日常と人の心をテーマに、実話や実話からヒント・・・”

「もしかして、その人にしか分らない話があるとか?」
「・・・そうね、そういうことかな」

一般的な出来事に見えても、その人にしか分らない。

「特に、あるキーワードなんて・・・」

その人にしか理解できない・・・いや、笑えないだろう。

「そのキーワード、何となくわかるけどね」

いつかまたその人と繋がることができる。
そう信じて、今でも、そしてこれからもブログを続けるつもりだ。No400
(No.400完)
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