« ホタル通信 No.138 | トップページ | [No.398-2]きゅうりちん »

[No.398-1]きゅうりちん

No.398-1       No.279「うちの子」

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
また今年もアレの季節になってきた。

「今年はトマトも始めたよ」
「そうなの?僕は去年・・・」

去年から響子(きょうこ)に誘われて、家庭菜園を始めた。
まずは無難な所できゅうりとトマトを選んだ。

「トマトは全然だめだったな~」
「きゅうりは何とか美味しく戴けたけど」

購入したトマトの苗には、説明書のような写真が添えられていた。
そこには、たわわに実ったトマトが写っていた。
それこそ、ぶどうのように・・・。

「確か、4つくらいしか実らなかったし、それに・・・」
「・・・4つとも熟さなかったし」

結局、青く小さいまま、それ以上育たなかったもの。
また、赤く大きく育ったものの・・・。

「そう言えば、“超すっぱい!”ってメールもらったね」

唯一、赤く大きく育ったトマトを口にした結果だった。

「そうくるとは思わなかったしな」

まさに、レモンを超えるすっぱさだったような気がした。
図々しいけど、完熟の甘さを期待して口に入れた。
だからこそ、その反動で余計にすっぱく感じたのかもしれない。

「だから、今年は“きゅうり君”だけにするよ」

“きゅうり君”とは響子が名付けた。
僕たちの中だけで通じる、きゅうりの呼び名だ。

(No.398-2へ続く)

| |

« ホタル通信 No.138 | トップページ | [No.398-2]きゅうりちん »

(016)小説No.376~400」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.398-1]きゅうりちん:

« ホタル通信 No.138 | トップページ | [No.398-2]きゅうりちん »