[No.398-1]きゅうりちん
No.398-1 No.279「うちの子」
登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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また今年もアレの季節になってきた。
「今年はトマトも始めたよ」
「そうなの?僕は去年・・・」
去年から響子(きょうこ)に誘われて、家庭菜園を始めた。
まずは無難な所できゅうりとトマトを選んだ。
「トマトは全然だめだったな~」
「きゅうりは何とか美味しく戴けたけど」
購入したトマトの苗には、説明書のような写真が添えられていた。
そこには、たわわに実ったトマトが写っていた。
それこそ、ぶどうのように・・・。
「確か、4つくらいしか実らなかったし、それに・・・」
「・・・4つとも熟さなかったし」
結局、青く小さいまま、それ以上育たなかったもの。
また、赤く大きく育ったものの・・・。
「そう言えば、“超すっぱい!”ってメールもらったね」
唯一、赤く大きく育ったトマトを口にした結果だった。
「そうくるとは思わなかったしな」
まさに、レモンを超えるすっぱさだったような気がした。
図々しいけど、完熟の甘さを期待して口に入れた。
だからこそ、その反動で余計にすっぱく感じたのかもしれない。
「だから、今年は“きゅうり君”だけにするよ」
“きゅうり君”とは響子が名付けた。
僕たちの中だけで通じる、きゅうりの呼び名だ。
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