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[No.392-2]片目の子猫

No.392-2

向かって右の目が真っ赤に充血している。
その上、生きてはいるのだろうが動く気配がまるでない。

「おい・・・」

その子猫に手を伸ばした時だった。
力なくも、その場から30cmほど逃げ出した。

「動けるのか!?」

ただ、それ以上逃げる気配はない。
野生の本能とでも言えばいいのだろうか?
力の限りを尽くしたようにも感じる。

「ご、ごめんな」

つい、謝ってしまった。
状況的にもしかしたら・・・体もかなり汚れている。

「ご飯食べてるか?」

自分でも恥ずかしくなる言葉を子猫に掛けた。
それに、なぜその言葉なのか・・・自分でもよく分からない。

「あっ・・・ちょっと待てよ!」

そうこうしている内に、子猫が動き出した。
決して足元はおぼつかない。
でも、“生”に対する力強いオーラを感じる。

「頑張れよ!」

最後に声を掛けた。
その姿がどことなく、かつて出逢った女性と重なったからだ。No392
(No.392完)
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