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2012年9月

[No.400-1]あなたと繋がる場所

No.400-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
この小説で丁度、400話目になる。
ブログを始めてから、約3年と8ヶ月ほど経過した時点でだ。

「すごいね!続けるだけでも大変なのに」
「逆にテーマを絞ったから良かったのかも」

今のブログを始める前に、短期間だけ公開したブログがあった。
そこではいくつかのテーマを取り上げた。

「テーマが多い方が、続けられると思ったんだ」

それこそ、テーマを決めなければ、テーマは無限にあることになる。
日々感じたこと、ニュースだって何だって、記事にすれば良い。

「でも、その方が続かないでしょ?」
「さすが経験者は語る・・・ね」

書くことはいくらでもあるのに、筆ならぬ“キーボード”が進まない。
だから、ほどなくして、そこは閉鎖した。

「なぜ、小説に絞ったの?」

理由はひとことでは言えない。
ただ、無性に書きたかったのは事実だった。

「当時、心情的に色々あってね」

心の叫びを文字にしたり、自分に対する応援歌であったり。
そして何よりも・・・。

「この小説を見て欲しい人が居たの」

当時、自分の心の中で、ある人の存在が大きくなっていた。

(No.400-2へ続く)

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ホタル通信 No.139

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.134 ハイブリッドな・・・
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

この話も最近、私が頻繁に使っている“商業的な小説”の部類に入るのかもしれません。

実話度は前半が概ね事実であり、後半は全て創作です。ただ、前半は実際のエピソードではなく、当時の心境を具現化させたものです。
さて、No.134ともなると、もはや初期の作品とは言えず初期に見られた作り込みの甘さはややましになっています。でもその一方で心境の“グロテスク度”もやや陰を潜めてしまい、物足りなさもあります。
つまり、この物足りなさが“商業的な小説”と私は自分の作品に対して、そう呼ぶことにしています

では内容に触れて行きますね。
前半を極端に言えば、目標を失い路頭に迷う私・・・そしてその私を動かしてくれる原動力を求め・・・が後半です。
読んで頂ければ分るように、前半はやや重く、後半は逆にかなり軽いノリです。
タイトルでもあり、オチに相当する部分にも“ハイブリッド”という言葉を使っていますが、これは話を書き進めている途中で思い付き、アイデアとして盛り込みました。
原動力、燃料とキーワードが繋がった後にハイブリットの考えが浮かび、燃料からは人の燃料である、食べ物へもキーワードが繋がりました。

手前味噌で恐縮ですが、この小説は文字にして読むよりも映像として小芝居を見た方が様になるのかもしれません。
作者が言うのも変ですが、何だか楽しそうです
No139
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[No.399-2]幼い恋

No.399-2

それもあるのだろうか・・・。
見た目はかなり童顔と言える。
ただ、行動も含めると、決して悪く言うつもりもないが幼く感じる。

「それにしても大きなかばん持ってるね」
「これ?色んなもんが入ってんねん!」

よほど二十歳過ぎの大学生とは思えないものが続々出てくる。

「それ・・・なに?」
これ?かえるのご隠居やん!」

かろうじて、かえるのぬいぐるみだと見てとれる。
しかも、手作り感が満載だ。

「まぁ、それはおいといて・・・」

そのネーミングからして危険なものを感じた。
だから受け流すことにした。

「・・・それはバナナ?」
違う、バナナ入れ

よく見ると、硬そうなバナナの形をしている。
だからこそ、バナナ入れなんだろうけど・・・。

「なんでそんなものが?」
「便利なんやで!ほら!」
「わぁ!」

本当にバナナが入っていた。
ただ、かなり熟していたのが気にはなったが。

彼女を好きになったのは、ひたすら純粋な幼さに惹かれたからだ。
それに、この僕も幼かったからだ。
No399
(No.399完)
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[No.399-1]幼い恋

No.399-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
改めて振り返り、ふと気付いたことがあった。

彼女とはコミュニティサイトを通じて知り合いになった。
住んでいる所もそう遠くはない。
それから、数ヵ月後に彼女と会うことになった。

「雰囲気違うやろ?」
「・・・あ、う、うん」

彼女の第一声だった。
既に電話やメールで自己紹介済みで、気心は知れている。
だから、とりわけ改まることはない。

「ちょっとダイエットしたねん」

確かに以前見た写メでは、ふっくら感はあった。
それでも、ダイエットが必要なほどではない。

「そ、そうなんだぁ」

単純にダイエットの効果を誉めるわけにはいかない。
以前のふっくら感を強調することになり兼ねないからだ。

「こんなうちでも、かまへん?」
「もちろんだよ!」

それこそ、逆なら大変だ。
それに、写真の修正だって今なら容易にできる。
プリクラに至っては、その“盛り”ようと言ったら・・・。

「それにな、うちほとんど化粧してへんやろ?」

女性には聞かせられない発言だ。
間違いなく敵を作る。
彼女の場合、してないというより、する必要もない。

(No.399-2へ続く)

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[No.398-2]きゅうりちん

No.398-2

しばらくしてから、響子(きょうこ)から写メが届いた。
時期的に多分・・・。

『トマト順調!』

メールのタイトルからすると、どうやら順調に育っているらしい。

(どれどれ・・・)

添付されていた写真には、たわわに実ったトマトが写っていた。

「すごい・・・」

それに、どれもこれも赤くて大きい。
去年目にしたあの写真に似ている。

『見た目と違うかもしれないけどね!』

ちょっと、いじわるでもあり、事実でもあるメールを返した。
去年からすれば、十分考えられるからだ。

『残念でしたぁ~もういくつか食べちゃったのよね!』

特に味の感想はなかった。
でも、満足していることを、うかがい知ることができる。

『ごめんねぇ、食べる前にメールしたかったんだけど』

収穫を報告する前に、食べることを優先してしまったらしい。

(響子らしいけどな)

『きゅうりちんも、スクスク育っているよ!』

(きゅうりちん・・・?)

一瞬、とまどったが、今年は“君”ではなく“ちん”で行くらしい。

(No.398完)
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[No.398-1]きゅうりちん

No.398-1       No.279「うちの子」

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
また今年もアレの季節になってきた。

「今年はトマトも始めたよ」
「そうなの?僕は去年・・・」

去年から響子(きょうこ)に誘われて、家庭菜園を始めた。
まずは無難な所できゅうりとトマトを選んだ。

「トマトは全然だめだったな~」
「きゅうりは何とか美味しく戴けたけど」

購入したトマトの苗には、説明書のような写真が添えられていた。
そこには、たわわに実ったトマトが写っていた。
それこそ、ぶどうのように・・・。

「確か、4つくらいしか実らなかったし、それに・・・」
「・・・4つとも熟さなかったし」

結局、青く小さいまま、それ以上育たなかったもの。
また、赤く大きく育ったものの・・・。

「そう言えば、“超すっぱい!”ってメールもらったね」

唯一、赤く大きく育ったトマトを口にした結果だった。

「そうくるとは思わなかったしな」

まさに、レモンを超えるすっぱさだったような気がした。
図々しいけど、完熟の甘さを期待して口に入れた。
だからこそ、その反動で余計にすっぱく感じたのかもしれない。

「だから、今年は“きゅうり君”だけにするよ」

“きゅうり君”とは響子が名付けた。
僕たちの中だけで通じる、きゅうりの呼び名だ。

(No.398-2へ続く)

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ホタル通信 No.138

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.135 動く夜景
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

この小説を書くきっかけとなるエピソードが割と単調な分だけ見せ方に一工夫加えています。

シチュエーション的には、比較的実話度は高めで、オチに相当する、飛行機の中での出来事を切り取ったものです。
飛行機の中、そこから見える夜景、独特の光の配置・・・等々は事実で、そこで交わされる会話は創作です。
飛行機からの夜景の眺め・・・ある意味、特別なシチュエーションかもしれませんが、非常に限られた中で話を作らなければならず、その意味では前述した通り、単調な展開になりそうな予感がありました。

そこでそれを逆手にとり、夜景を見ていることを前面に押し出しながらも、そこがどこであるかを伏せて話を進めています。
前半の中盤辺りに“遠くからでも観覧車”のくだりがありますから、読み手は高台や建造物などから、それを見ているのだと思っているでしょう。
もっとシチュエーションを限定的に語るのであれば、関西空港発の新千歳行きの飛行機の中であって、着陸の10分前くらいの夜景になります

夜景を小説のテーマとして使ったことはあります。
でも、案外話が広がりません。場所や演出の小道具としては優れていますが、そこにうまく心情を乗せることができません。
夜景そのものが、ロマンティックで綺麗なもの・・・との印象が強く、どちらかと言えばその逆を描きたい自分とのギャップを感じているからかもしれません。
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[No.397-2]宇宙の始まり

No.397-2

「そう、言われてみれば・・・」

何もない所から生まれる。
それは、突然変異だとかなんとかで片付けるとしよう。
でも、何もない所の周りに何かあったり・・・。

「・・・するわけないよね」
「そうね、何もない所の周りに何かあったら、何もないって言えない」

こんなことを真剣に悩むから、ますますモテない気がしてきた。

「わけわかんなくなってきた!」
「右に同じく・・・」

だったら考えなきゃいいのに!と自分に言い聞かせてみた。
けど、人知を超えた内容だ。
多少のロマンもある。

「宇宙の果てもそうよね」

宇宙に果てがあるかどうかより、宇宙は何に属しているのだろうか。
仮に何かに属しているのなら、その属しているものは何に属・・・。

「わぁ~!もう限界!」

考えれば考えるほど、頭が混乱する。

「今日はここまでにしない?」
「そうね・・・そうしましょう!」

いずれ、どこかの偉い学者がきっとこの謎を解いてくれるだろう。
そう願いたい。

「さて・・・と、今日も行きますか?」
「そうね!」

そろそろ私たちも属さないといけない。
少なくとも会社という小さな範囲に。
No397
(No.397完)
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[No.397-1]宇宙の始まり

No.397-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
宇宙は何もない所から、ある日突然生まれた。

「こんな話してる私たちって、やっぱりモテない?」
「そうね・・多分」

歴女、山ガール・・・。
多少、マニアックな部類の女子がもてはやされている。

それなら・・・宇宙女?スペースガールとか?」

後者ならまだ良い。

(宇宙女って・・・・)

「まぁ、それより、話を続けましょう!」

モテる、モテないは二の次だ。

宇宙は何もない所からある日、突然生まれた。
それはそれで良しとしよう。
それよりも気になるのは、生まれる前のことだ。

「何もないって前って・・・」

何もない前・・・どう考えれば良いのだろうか。
それに、何もない所は、どこに属していたのだろう。

「属する?」
「ほら、私たちなら・・・」

広く考えると日本に属し、地球に属している。
更に広く考えると・・・。

「太陽系、銀河系・・・に属していると言えるよね?」

そう、私たちは必ず何かに属して生きている。
属する範囲が見えているから現実味があるし、安心もできる。

「だから、“何もない”は何に属していたのかなって?」

(No.397-2へ続く)

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[No.396-2]洗濯日和

No.396-2

決して他人には聞かせられないような話だ。
正直、恥ずかしいからだ。
でも、反面話すと、この上なく楽しい。

「じゃ、お風呂の準備を・・・」

洗面台にぬるめのお湯を張った。
お風呂にしては大きすぎるが、露天風呂・・・ということにした。

「準備はこれでヨシ!・・・と」
「じゃ、着ぐるみを脱がさんとアカンな」

設定上、着ぐるみらしいから、それを脱ぐ必要がある。
まぁ、あくまでも設定上だが・・・。

「そうだな・・・確か背中にチャックがあったよな?」
「うん!うちが脱がす~」

実際には脱がせることはできない。
そのような作りにはなっていないからだ。
だから、あくまでも脱がす振りだけだ。

「あっー!」
「ど、どうした?火傷!?」

お湯はぬるめにしたはずだ。

「違うねん!チェックがあらへん!」

確かに以前はあったチャックがちぎれてなくなっていた。
・・・ということは・・・。

「お風呂に入られへん!」

だから、俺のせいじゅうろうは今も汚れたままだ。

(No.396完)
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[No.396-1]洗濯日和

No.396-1    [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
確か、3年くらいだろうか?
せいじゅうろうが俺のケータイに居座るようになってから・・・。

「プッ!居座るやて」
「そう笑うなよ・・・」

普通ならケータイにぶら下げてから・・・なんて表現だろう。
そう考えれば随分とリラックマワールドに染まっている。

「せやかて、設定上も居座ってるやもん!」
「確か・・・かおるさん、だったっけ?」

ある日、突然、家の中に居たらしい。

「そうやで!早い話、居候やな」

そんな設定を知っていたから、つい“居座る”という表現を使った。

「もう、3年にもなるんや!」

俺が3年だとすれば、菜緒(なお)もほぼ3年だ。
俺より、数週間、早いだけだろうから。

「・・・しみじみ、どないしたん?」
「随分と汚れたな・・・と思って」

元々、茶色だから汚れは目立ち難い。
でも、それ以外の部分は明らかに汚れているのがわかる。
買った時は、もっと色は鮮明だった。
実際、店で売られている同じタイプのものは色鮮やかだ。

「一度、洗おう・・・じゃなくて、お風呂、お風呂!」

うっかり、せいじゅうろうを“モノ”として扱おうとしてしまった。

「そや、そや!お風呂いれたらなアカン」

(No.396-2へ続く)

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ホタル通信 No.137

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.184 怒るって難しい
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

実話度60%の内訳ですが、前半はほぼ100%、後半は10%、従って、平均約60%としました。

まず、前半の内容からご紹介しますね
人物設定は抜きにして、内容についてはほぼ100%ですから実際にこのような出来事が起こりました。
メールって、例え返信が不要な内容であったとしても、何らかの反応がないと不安になることがあります。それに自分の都合を相手にも押し付けたようになったりすることも少なくはありません。
ところで、前半を読んで「相手はずさんな人」と思われた方も多いのではないでしょうか?でも、事実は多少違っています。

次に後半ですが、ここでは心情を文字にしており、友人との会話が実際に行われたわけではございません
つまり、会話という事実はなかったけれども、自分の心情を言わば具現化したようなものです。そのため、実話度は控えめに、10%とさせて頂きました。

小説のタイトルにもあるように“怒るって難しい”ことだと思っています。ここでいう“怒る”は“おこる”と読んでくださいね。
それは恋人同士に限らず、友人同士や先輩と後輩・・・様々な人間関係について言えると思います。
怒らなかったから、関係がダメになることもあれば、怒ったからこそ関係が今まで以上に深まることもあるでしょう。

最後に前述した“でも、事実は多少違っています”について触れてから締め括りとします。
一見すると、ずさんなのか、ケータイに興味がないのか・・・そんな人に見えるかもしれません。
確かに、これらも事実と言えば事実だったのですが、それよりも影響が大きかったのは次の事実でした
 “彼はもう私には興味を失くしてした”
小説上ではハッピーエンドともバットエンディングとも言えない終わり方ですが、現実は後者の方でした。悲しい涙では終わらないのが、当ブログのモットーなので、ちょっとお茶を濁した終わり方だったかな~・・・と、明るく締めくくってみますね。
No137
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[No.395-2]漢字検定

No.395-2

「そう言えば・・・」

おかしな表現だが“生”で字を書くことが少ない。
今じゃ、多少お堅い書類だって、パソコンで作成できる。

「字が下手な私にとっては好都合だけど?」
「・・・なんて、いうか、ほら・・・あれよ」

普段、使い慣れない言葉だけあって急には出てこない。

「・・・そう!“人となり”が見えるじゃない!」

単に字が綺麗、汚いではない。
きっちり書く人、荒っぽい字の人、その人の本質が見える気がする。

「メールだって、絵文字とかあるじゃん!」
「それは表面上の感情表現でしょ?」

文字だって、その時の感情が出ないわけではないだろう。

「そんなに言うなら今度、手紙書くから」

「じゃ・・・私はそれに返事を書くわ」

いつの間にか、話が大きく変わっていた。

「漢字検定が・・・手紙になっちゃたわね」
「私、悪いことしたかな・・・」
「別にいいよ、私の手紙、しっかり添削してよね!その実力で」

(No.395完)
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[No.395-1]漢字検定

No.395-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「そう言えば、漢字検定持ってたよね?」
「もう、自分で調べなさい!」

漢字検定を持っていることを誉めようとしていたのではない。
辞書代わりに利用しようとしている。

「だってぇ、面倒なんだもん!」
「ケータイでも調べられるでしょ?」

何のためのケータイ電話か分からない。
まぁ、友人の場合は、ほとんどゲーム機化しているが・・・。

「まったく・・・それで、なんて漢字?」

結局、甘やかせてしまった。

「そうこなくっちゃ!」

ケータイに頼ればいい・・・さっきは確かにそう言った。
けど、それこそが漢字離れの弊害かもしれない。
それに、漢字離れだけではなく・・・。

「話は変わるけど、見たことない・・・」
「何を?」
「あなたの字」

逆に私の字も、友人は見たことないだろう。
私たちの世代は完全にメール文化が根付いている。
それこそ“手紙”なんて書いたことがない。

(No.395-2へ続く)

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[No.394-2]はやさの時代

No.394-2

「はやさの時代・・・?」
「スピードの時代ってこと」

気付けば私たちの周りにはスピードで溢れ返っている。
ネットにしたって、以前と比べようがないくらい高速化した。
今では“待つ”ことすらない。

「未来を先取りしちゃうことも」
「・・・ほら、スポーツの試合結果なんて」

これからテレビ放送する試合の結果が分かっている時がある。
はやいとか遅いとか・・・そんなレベルではないだろう。

「だから、気にすることないんじゃない?」

試合結果の話は別にしても、はやさに欲が出てくる。
今よりも、もっとはやく、更にはやく・・・。

「そう考えると、イライラしちゃうんだ」
「だったら階段、使ったらよかったじゃん・・・」
「・・・う、うん」

この後、なぜだかふたりとも笑いが止まらなかった。
はやさに翻弄されるふたり・・・。
それにその価値を分かっていないふたり・・・。

「だよね?私たち」
「損もしてないけど得もしてない」

見えないものに踊らされるのはもうやめよう。

「明日から階段をゆっくり下りることにするよ」
No394
(No.394完)
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[No.394-1]はやさの時代

No.394-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・ん、もぉ、遅いっ!」

(あっ!・・・いけない)

幸い周辺には誰も居なかった。
ただ、かなり苛立った私の声は周辺に響き渡っただろう。

「あぁ~、最近どうしちゃったのかな・・・」
「疲れてるんでしょ?仕事忙しそうだしね」

仕事のせいにはしたくない。
けど、最近、イライラ度が増しているのは隠しようがない。
今朝だって・・・。

「エレベータさえ待てなかったのよ」

1階で止まっていたエレベータを自分の階まで呼んだ。

「確か・・・7階だったよね?」
「そうよ」

呼んだ時、途中で止まらずにストレートに7階までやって来た。
時間にして・・・そう、約10秒程度だと思う。

「10秒!?・・・相当、せっかちね」
「なんていうか、その時はすごく遅く感じたの」

いつも通りの時間に家を出て、特に急ぐ用事もなかった。
だから会社へ向かうために、焦っていたわけではない。

「でも、分かるな・・・その気持ち」
「今は・・・“はやさの時代”だもんね」

(No.394-2へ続く)

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ホタル通信 No.136

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.84 シグナルの向こうへ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

この小説はある意味、未来小説だと言えるかもしれません。

小説上では、軽い接触事故が起こっていますが、実際には事故は発生していません。毎日の通勤途上の中で「もしかしたらそうなるかも」と言う危険性を小説にしています。

何度かそんな目にあっていた所、ありがちな話ですが、このような話を思い付きました。
ありがちな話ゆえ、サクサクと書き上げることができました。
オチに相当するラストシーンまではいつも通り、何も考えずただひたすらキーボードを連打、連打・・・で、ラストはどうしたものかと考え始めたのが、後半の中盤あたりだったのですが、奇跡的にも前半冒頭の「信号が青になった・・・」の下りに救われることになりました。
青信号は進めではなく、進んで良いという意味に着目して「信号も恋も注意しながら進む」をオチに持ってきました。

商業的な小説・・・たまに私が口にする言葉です。
もともとラストにオチだとか気の利いたことを言うつもりはなく、ブログ小説を始めました。
今でもそうなんですが、自己満足できればそれはそれで良かったのですが、最後が締まらないと単に身勝手な小説になってしまうため、極力最後は締めています。

その締めがあまりにも上手く行き過ぎることがあり、それを自分の中では「商業的な小説」と呼んでいます。
小説としてはまぁ、そこそこな出来なんでしょうが、自分的にはあまり好きではありません。
今回の話もちょっと綺麗に終わり過ぎたかな?と思っていますが・・・まぁ、良しとしましょう

最後に、小説のタイトルはある歌のタイトルをそのまま使わせて頂きました。
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[No.393-2]恋の練習

No.393-2

「うちが最初につきあった人に似てたからやろ?」
「そ、そんなこと言ってた!?」

あまり記憶にないから、強く否定はできない。
でも、事実だとすれば結構失礼な発言だ。

「確かによく似ているけど・・・」

本当にそんなこと言ったのだろうか?

「うちと付き合う前の彼女もそうだった・・・て」
「前の彼女も!?」

顔の好みは変わってないから、そうかもしれないけど・・・。

(ん?・・・なんか変だぞ)

「あっ!バレた?」
「本当はそんなことゆうてへんよ」

彼女の悪ふざけに付き合わされてしまったようだ。

「勘弁してよ・・・びっくりするだろ」
「でもな、うちが最初の彼女に似てるんと違う」
「最初の彼女がうちに似てるんや」

やきもちにも似た発言に女心を見た気がした。

「うちと恋するための練習だったんや、過去の恋は」

(No.393完)
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[No.393-1]恋の練習

No.393-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
時々、ふと思うことがある。
なぜ、数多くいる女性の中から、彼女を選んだのかと・・・。

「どうしたん?」
「ん!?い、いや、なんでもない」

多分、“心ここにあらず”のような表情をしていたはずだ。

「心ここにあらず、って感じやん」
「ちょっと考えごとしてたんだ」

別に隠す必要もない話だ。
素直にそれを話した。

「そんなん、うちが聞きたいわ」
「・・・だよな」

今の場合、彼女は選ばれる側の立場だ。
逆に僕は選ぶ立場だ。
上から目線で大変申し訳ないが・・・。

「そやけど、前、話してくれたやん!」
「何を?」
「うちを選んだ理由・・・みたいなこと」

言われて見れば・・・話したような気もする。
気のせいかもしれないが。

(No.393-2へ続く)

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[No.392-2]片目の子猫

No.392-2

向かって右の目が真っ赤に充血している。
その上、生きてはいるのだろうが動く気配がまるでない。

「おい・・・」

その子猫に手を伸ばした時だった。
力なくも、その場から30cmほど逃げ出した。

「動けるのか!?」

ただ、それ以上逃げる気配はない。
野生の本能とでも言えばいいのだろうか?
力の限りを尽くしたようにも感じる。

「ご、ごめんな」

つい、謝ってしまった。
状況的にもしかしたら・・・体もかなり汚れている。

「ご飯食べてるか?」

自分でも恥ずかしくなる言葉を子猫に掛けた。
それに、なぜその言葉なのか・・・自分でもよく分からない。

「あっ・・・ちょっと待てよ!」

そうこうしている内に、子猫が動き出した。
決して足元はおぼつかない。
でも、“生”に対する力強いオーラを感じる。

「頑張れよ!」

最後に声を掛けた。
その姿がどことなく、かつて出逢った女性と重なったからだ。No392
(No.392完)
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[No.392-1]片目の子猫

No.392-1

登場人物
=牽引役(男性)
-----------------------------
「わっぁぁ!」
「お、驚かすなよ!」

会社帰り、自転車を駐輪場に停めた時だった。
白い塊が僕を見た。

「また猫かよ!まった・・・」

隣に停めてある、スクーターにうずくまっていた。

それにしても、ここ最近、こいつらと出逢う確率が増えてきた。
夜・・・それも仕事帰りは疲れ気味で気が抜けている時が多い。
そんな状況下では、誰もが突然の出逢いにビックリするだろう。

「・・・く、あれ?」

さっきまでの自分の威勢が、急にしぼんで行くのがわかる。
いつもなら、既に猛烈な勢いで逃げ去っているからだ。
それなのに・・・。

「どうした?」

いつもと違う状況に、つい声を掛けてしまった。

「・・・子猫じゃないか!?」

突然の出逢いとは言え、今頃気付いた。
それに、何だか雰囲気が変だ。

「おまえ、目・・・どうしたんだよ!?」

片目が赤い。
それにさっきから一向に逃げる気配もない。

(No.392-2へ続く)

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