[No.390-2]折れた定規
No.390-2
「いつもなら、すぐに捨てちゃうじゃない?」
心なしか、嫌味に聞こえる。
物のようでもあり、人のようにも聞こえるからだ。
「そうね、拘らないタイプだから」
使わない物はすぐに捨ててしまうたちだ。
それが壊れた物となると、なおさらだ。
「どうして、これに限って捨てなかったの?」
「捨てるタイミングを失ったのかも」
事実、折れてしまった後も不自由なまま使っていた。
仕事上、使う必要があったからだ。
「帰りに買えばいいじゃない」
「拘らないなら、コンビニでも売ってるでしょ?」
そう、いつも通り捨てて新しいものを買えば済む話だ。
けど・・・そのタイミングも失った。
その日に限ってなぜだかコンビニに立ち寄ることさえ面倒に感じた。
「・・・で、結局そのまま?」
「案外、これが使えるんだよね」
もちろん、長さを必要とする場面では使えない。
でも、7:3の割合で折れた定規はそれぞれの役目を果たしている。
「あら、珍しい発言だこと!」
「・・・なんか、さっきから引っかかるのよね!」
「いいじゃない!それに元に戻る可能性もあるしね」
(No.390完)
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