[No.388-2]想い出の道
No.388-2
当時、ある女性と付き合っていた。
ただ、ちょっとわけありの複雑な関係だった。
「けんかでもしたの?」
「・・・それより、先に聞かないのか・・・」
「昔のことでしょ?」
その言葉に嘘はない、表情を見れば分かる。
それでも聞かれたら正直に答えるつもりだった。
「そうだな、簡単に言えばけんかだな」
(簡単に言わなくてもけんか・・・か)
緊急の用事で呼び出されたにもかかわらず、すぐに覆された。
「それが目的の場所の意味ね」
「そこに向かうつもりだったからな」
だから、それを反故にされて、つい・・・。
「誰が見ているわけでもないけど」
「引っ込みがつかなくなった・・・」
そのまま目的の場所へ向かった。
もちろん、向かったところで彼女はそこには居ない。
「向かっただけで、着いてはいないでしょ?」
「なんでそう思うんだよ?」
確かに途中で引き返した。
「だって、想い出は道にあって目的の場所にはないから」
(No.388完)
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