[No.386-2]片親
No.386-2
「そっか、そうだな・・・」
彼女の瞳には、彼らがどのように映っているのだろうか・・・。
バラバラになる前の家族と重ね合わせているのかもしれない。
「子猫はお父さん似なんやね」
「なんで分るんだよ!?」
目の前の猫を母親と仮定すれば、父親はこの場には居ない。
だから、似ている・・・なんて分りっこない。
「そんなん簡単なことやん!」
「簡単・・・あっ!」
母親と思われる猫の毛色は、黒が大部分を占めている。
それなのに、子猫は真っ白だった。
「確かに、お父さんにそっくりだな」
顔じゃない・・・毛色からそう判断したんだ。
でも、皮肉なものだ。
肝心の父親が居ない。
「まぁ・・・今だけ居ないのかもしれないけどな」
もしかしたら、近くで見守っているのかもしれない。
人間の父親だって、そんな時がある。
「どこか、その辺に居るんじゃない?」
「だったら、ええけどな」
最初はあきらめのような言葉に感じた。
でも今は、期待が込められている言葉のように感じた。
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