[No.382-2]オーバー・ライト
No.382-2
「いつも思うんだ・・・」
「見てるようで見てない、って」
そんな場所がいくつもある。
「私だって似たようなものよ」
「でも、見てないとか、覚えてないとかじゃなくて・・・」
そう言うと、友人がいつになく真剣に語り始めた。
建物は空き地に、空き地は再び建物へと変わった。
物理的にそうなんだろうが、記憶の上では違う。
記憶の中で、それらはつねに上書きされて行く・・・。
「つまり、ひとつの場所に記憶はひとつだと?」
「そうね、そうとも言える」
「だから、女性の恋愛にも似てる」
友人がなぜか恋愛に置き換えた。
「どういうこと?」
「前の恋を忘れるのが上手だってこと」
「男性じゃ、こうは行かないでしょ?」
まるで前の恋愛が無かったかのごとく忘れることができる。
ただ、友人の言葉を借りれば・・・。
「新しい恋で、上書きされた・・・ってことになるわね」
「そういうこと!」
(ひとつの場所にはひとつの“今”の記憶・・・か)
こう考えるのも悪くない。
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