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2012年7月

[No.384-1]青空に聞く

No.384-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「怒らないのか?」
「だって、もう終わったことでしょ?」

以前にもこの場所で、こうやって青空を見上げたことがあった。

「まぁな」

その相手は元カノではない。
だからと言って友達でもない。

「こんなに景色が良いんだもん!誰だって来たくなるわよ」

彼女をわざとこの場所に連れてきたわけじゃない。
以前、訪れていたことを完全に忘れていた。
でも、青空を見上げた途端・・・。

「・・・聞いていい?」
「元カノのことか?」
「うん」

一応、彼女の前では元カノとしている。
その方がスッキリするからだ。

「なにが知りたい?顔のタイプ、それとも性格か?」

自分と比べたいのかもしれない。

「そんなんじゃないよ、どうしてここに来たの、元カノと?」
「・・・景色がいいからだよ」

うそじゃない。
目の前の景色がそれを証明している。
けど・・・それは理由のひとつに過ぎない。

「それだけ?」
「あぁ・・・」
「そっか」

短い言葉の反面、何か言いたげな表情だった。

(No.384-2へ続く)

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ホタル通信 No.131

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.87 最後のページ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

この話は学生時代の出来事をヒントにして作りました

学生時代、それまで本を読む習慣はなかったのですが、彼女と付き合うようになってから、彼女の影響を受けて小説を読むようになりました。
読むと言っても彼女が小説を持ってくるので、それを最初は「読まされていた」と言うのが本音です

さて、この話・・・オチに相当する部分は創作です。
つまり、小説の最後のページに彼女の感想が書いてあって彼女がその感想を僕に求めていた・・・なんてことはありませんでした。ただ、似たようなことはあったんですよ。

この話を作ったずっと後に関連する話しをふたつほど作っています。
ひとつは「No.315 三行小説」、もうひとつは「No.340 三毛猫ホームズ」です。どちらも人物設定等はバラバラですが、今回紹介したこの話をベースにして作っています
このふたつを読めば、当時どのような小説を読み、読後はどうしていたか?が分かります。別に三部作にするつもりは全く無かったのですが、結果的にそのようになりました。
いずれ、このふたつの話もホタル通信で紹介する時が来ますが、「No.315 三行小説」についてはほぼ実話なんですよ。
 
冬のホタルでは人物設定等は違えども、色々な話がリンク関係にあります。それに意外と登場人物って少ないんですよ。
作者を含めると、今でも両手で充分足りています。
No131
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[No.383-2]雨女VS晴れ女

No.383-2

「やっぱり、彼女が来てくれたお陰よね」
「・・・彼女・・・お陰・・・?」
「知らなかった?」

同僚が不思議そうな顔で私を見つめる。

「・・・さん、“晴れ女”って社内では有名なのよ」

知らなかった、と言うより・・・。
最近、この職場に転勤してきた私では知りえない情報だ。

「彼女が来ると、雨が降っててもピタッ!と止んじゃうんだよね!」
「だから、ここぞと言う時には彼女に来てもらうの」

(・・・だから・・・か)

ここ最近を振り返ってみると、確かに思い当たる節がいくつもある。
取引先のイベント、部長の送別会・・・人が集まる所“彼女在り”だ。

「そうなんだ・・・晴れ女・・・ね」

どうやら、彼女の神通力に負けているらしい。
雨女としての神通力が単に衰えているわけでもなさそうだ。
これなら、まだまだいける。

「どうしたの?なんかホッとした顔して」
「えっ!う、うん、なんでもない・・・」

そう言えば、私の歓迎会と時は雨だった。
それも、これぞ雨女!と言わんばかりの大雨だった。
確か・・・その時に彼女の姿はなかった。

(まだまだ雨女は健在ね!・・・あれ?)

「さっき、ここぞと言う時には彼女に来てもらうって言ってたよね?」
「そうよ、それがなにか?」
No383
(No.383完)
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[No.383-1]雨女VS晴れ女

No.383-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうしたの?浮かない顔ね」

今時、珍しいのかもしれない。
日帰りとは言え、今日は一年に一度の社内旅行の日だ。
だから、浮かない顔というわけではないが・・・。

「そ、そうかな・・・」

仕事を離れてまで、社内の人間と付き合うのが嫌いなわけじゃない。
むしろ、好きなくらいだ。

「は、は~ん、彼が来ていないから?」
「違うわよ!」

浮かない理由はちょっと馬鹿にされそうな内容だ。

「それなら天気も良いし、もっと明るく行こうよ!」

そう・・・それが浮かない理由だ。

「それにしても、雨降らなくて良かったね!」

同僚がダメ押しする。

「そうね」

今日は雲ひとつ無い、抜けるような夏の青空だ。

「昨日までの大雨が嘘のようね」

最近、明らかに自称雨女としての神通力が弱まっている。
普通、雨女と旅行がセットになれば・・・結果は想像が付く。

(それなのに、なんで!)

雨で旅行を台無しにしてやろうと、考えているわけではない。
神通力の衰えに危機感を抱いているだけだ。

(No.383-2へ続く)

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[No.382-2]オーバー・ライト

No.382-2

「いつも思うんだ・・・」
「見てるようで見てない、って」

そんな場所がいくつもある。

「私だって似たようなものよ」
「でも、見てないとか、覚えてないとかじゃなくて・・・」

そう言うと、友人がいつになく真剣に語り始めた。

建物は空き地に、空き地は再び建物へと変わった。
物理的にそうなんだろうが、記憶の上では違う。
記憶の中で、それらはつねに上書きされて行く・・・。

「つまり、ひとつの場所に記憶はひとつだと?」
「そうね、そうとも言える」
「だから、女性の恋愛にも似てる」

友人がなぜか恋愛に置き換えた。

「どういうこと?」
「前の恋を忘れるのが上手だってこと」
「男性じゃ、こうは行かないでしょ?」

まるで前の恋愛が無かったかのごとく忘れることができる。
ただ、友人の言葉を借りれば・・・。

「新しい恋で、上書きされた・・・ってことになるわね」
「そういうこと!」

(ひとつの場所にはひとつの“今”の記憶・・・か)

こう考えるのも悪くない。

(No.382完)
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[No.382-1]オーバー・ライト

No.382-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
(えっ!そんなぁ・・・)

久しぶりに、とある道を通った。
それに数ヶ月前にも、この道を通った。

「思い出してもいなかったのに!」

数ヶ月前、あるべき建物が無くなっていた。
もちろん、SFのように忽然と消えたわけではない。
単に取り壊されただけだろう。
見通しの良い空き地がそこに広がっていたからだ。

「結構その話、聞いてない?」
「いつもは“思い出せない”話よ」

気付いてみれば、とある場所が空き地になっている。
少し前までは、そこに何かが建っていたのは間違いない。
ただ、不思議と思い出せない。

「いつも“何が建ってたんだっけ?”としばらく考えてるの」

結局、思い出せないまま終わる。

「今回はね、そうこうしてるうちに別の建物が建っていたの」

数ヶ月前からその消えた建物を必死に思い出そうとしていた。
それなのに、肩透かしを喰らった感じがした。
いつも通りの結果が待っていたとしてもだ。

「いつも通る道じゃなかったから」
「・・・久しぶりに通ったら、あれ!?ってことね」

今は、しばらく空き地だった事実さえ忘れてしまいそうだった。

(No.382-2へ続く)

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ホタル通信 No.130

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.73 Sensitivity
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

前回No.129のホタル通信でご紹介させて頂いた通り、今回はこの小説をご紹介させて頂きます。

実話度については、ほぼ実話です。
実話と言っても、心情を語るタイプの小説ですから、心情がほぼ事実ということになります。人物設定については、秘密とさせてくださいね

大袈裟ですが、人生で最も大変な時期の心情を小説にしています。ただ、現実にそうような出来事があったのはこの小説を書く随分前です。
逆に言えば、冬のホタルを書くきっかけがこの出来事であったわけですから、随分後にこの小説を発表しました。

内容は読んで頂いた通りです。
今でこそ、これを教訓として多少は冷静に考えることが出来ますが、当時はそれこそ、闇に包まれてしまったかのような毎日でした。
それを打開するために、ブログを始めたのもいくつかある理由のひとつです。“書く”と言うより、“吐く”ことを目的としていましたから、ブログを始めた当初に暗めの話が多いのはそのためです。

ラスト付近は、ブログを始める決意みたいなものを改めて書いています。「悲しい結末がない」のはブログを始めた当初から今までもずっと守っていることです
前述した“吐く”ことを目的としたブログであることは事実ですが、自分の経験が誰かの応援歌になれば・・・との想いもあるのも事実です。
No130
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[No.381-2]初恋×初恋

No.381-2

「それはあるわね」

5年生は丁度、心も体も変化しやすい年齢だ。

(でも・・・)

「あなたの場合、1年生じゃない?」
「いくらなんでもまだ“変化”には早いんじゃない?」
「それもそうね」

何か理由はあるはずだ。
自分が女の子ではなく、女性として意識した何かが・・・。

「言っとくけど、変な想像は止めてよね!」
「そっちこそ!」

恋に飢えたふたりだ。
適当な所で想像と言うか妄想は止めたほうが良いだろう。

「もしかして・・・」

あることを思い出した。
幼稚園の頃にはなく、5年生の時にあったもの。
正確には“あった”というより、“居た”と言ったほうが正解だ。

「居た?」
「そう・・・居たの」

その男子を好きな女の子が他にもひとり居た。
彼女の存在を知ってから、猛烈に自分が変わって行った気がする。

「つまり、ライバルってことね?」

今思えば、女の子から女性へ変わった瞬間でもあったのだろう。No381
(No.381完)
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[No.381-1]初恋×初恋

No.381-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「ねぇ、初恋はいつ?」
「そうね・・・幼稚園の時かな」

当時、結婚の約束までした男の子がいた。

「なに、アイドルぶった発言してるのよ・・・」
「聞きたいのは、自分を“女性”と意識した初恋なの!」

間違いなく、当時は“女の子”だった。
逆に女の子じゃない方が末恐ろしい。

「それなら多分、小学5年生の時じゃないかな?」
「私はね、小学1年生」
「早っ!」

幼稚園とさほど変わらないと、本人は気付いているのだろうか?

「あなたと違って、1年生でもちゃんと女性として意識してたわよ」

肉食系は、どうやら1年生の時から始まっていたらしい。

「ませてない?1年生なんて」
「そう?」

当時の話を聞きたいような聞きたくないような・・・。

「でも、なんで自分を女性として意識するようになったのかな?」

確かに幼稚園の時とは違った感覚だった。
子供ながらも、胸が苦しくなるくらい好きになった。

「そうね・・・なんでろう?」

もちろん、自分自身が成長したこともあるだろう。

(No.381-2へ続く)

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[No.380-2]中途半端

No.380-2

「昨日、高校生の女の子とすれ違ったんだ」
「まさか!?」
「・・・な、わけないでしょ」

小学生とも思える幼い顔に似合わない、今風のへアスタイル。
それに化粧も決して薄くはない。

「髪型も化粧も無理してる・・・って感じだった」
「幼い顔なのに、どうしてその子が高校生だと?」
「私が卒業した学校の制服だったから」

髪型と化粧に幼い顔が追いついていない感じだった。
それを見た途端、なぜか元野球少年をイメージした。

「不釣合い・・・という点では一致してない?」
「微妙・・・だけどね」
「まぁ、自分に何が似合うのか、まだ分らない年齢よ」

俗に言われる“背伸び”は、私たちにとっては眩いばかりの言葉だ。
でも、かつて私もその一人だった。

「そうね・・・そのうち、見つけられるよね!」

今は自分自身が鏡であっても、そのうち世間が鏡になる。
良くも悪くも、それで人は変わって行く。

「あぁ~ぁ、若いっていいね」

中途半端は若さの特権なのかもしれない。

(No.380完)
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[No.380-1]中途半端

No.380-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
言うなれば、元野球少年が髪を伸ばし始めた時と似ている。

「何となくイメージはつくけど・・・」

例えば高校野球。
絶対とは言えないが、野球部は基本丸坊主だと思う。
けど、野球を辞めたりしたら・・・。

「何とも言えない髪型の時期ってあるじゃない?」
「・・・ほら、アレよ、アレ・・・」

頭の中ではすっかりそれがイメージできる。
でも、言葉として出てこない。

「・・・もしかして“ねぎぼうず”?」
「そう!それ、それ!」

伸び始めた髪が制御不能に陥っている感じだ。

「元野球少年が聞いたら怒るわよ」
「そうね・・・ごめん!」
「・・・って誰に!?」

とにかく、そんな感じだ。

「それはそうと、何の話なのよ?」

そう言えばまだ肝心なことをしゃべっていなかった。
反面、随分長い前置きをしゃべってしまった。

(No.380-2へ続く)

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ホタル通信 No.129

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.96 巡るギザ十
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

実話度は限りなくゼロに近く、登場人物や設定は創作ですが、話の主軸となる“ギザ十”は事実であり、その十円玉を手にしたことで小説が生まれました。

“ギザ十”は、そこそこ珍しい十円玉であり、財布にいつも入っているわけではありませんよね?まれに「あれ?」という感じで、財布の中に入っています。
貨幣としての価値もそれなりにあると思いますが、この小説では、ラッキーアイテムとして位置付けています。小説にも登場させた“茶柱”と同じ扱いです。

話の構成としては、ショートショ-トに近いと思います。
若干、暗めの話が多い“冬のホタル”において、そんな雰囲気を微塵も感じさせない話です
それもあってか、どちらかと言えば商業的な仕上がりになっています。ですから、個人的にはあまり好きではありません。
自分の作品であってもです。
多少、オチらしきものをラストに持って来てはいますが、それが狙いではなく、何となくそうなっただけ・・・が本音です。

それよりも、たかが十円玉ひとつでワイワイガヤガヤ・・・とと言った空気を感じてくれればと思います。
もともと、冬のホタルでは「どうでもいいこと」や「ごく普通の日常」を描いています。
それこそ道端に、犬のウンチが落ちていても(お食事中の方すみません!)話を作るヒントにはなります。
ですが、そこから何も感じとることがなければ小説が生まれることはありません。

日常から“何かを感じとること”ができなくなれば、当ブログは終わりをむかえることになります。
でも、感性が強すぎると、時として苦しむことも少なくはありません。次回のホタル通信ではこの流れで「No.73 Sensitivity」を紹介させて頂きます。
No129
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[No.379-2]中華街

No.379-2

もちろん、家の近所に居るハトが付いてきたわけじゃない。

「ほんと嫌になっちゃう・・・人の集まるところハトあり!って感じ」
「なんか因縁でもあるわけ?」
「そうじゃないけど・・・」

因縁は無いが、縁はある。
何かとこいつらには、苦笑させられることが多い。

「それより見て・・・体」

彼らがここに集まる理由は明白だ。
私たちのように、皆も外で色んな食べ物をほうばっている。
そのおこぼれを、狙っているのだろう。

「・・・ほんとだ」

この混雑ぶりだ・・・おこぼれは十分過ぎるほどあると思っていた。
その割には、彼らはそんなに太っていない。
むしろ、痩せている。

「ほら、街中のハトなんて」
「普通、メタボだもんね」

ハトの数もそんなに多いとは感じない。
けど、なぜかここでは生存競争は激しいらしい。

「そんなにおこぼれに与れないのかもしれないね」

それを物語るように道路はとても綺麗だ。
食べ物らしきものは一つも落ちていない。

「案外、活躍してるじゃん!」

肉饅頭の欠片をわざと道路に落とした。

(No.379完)
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[No.379-1]中華街

No.379-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「うぅ~ん・・・美味しい!」

店を出ると、すぐにそれにパクついた

肉饅頭とでも言えば良いのだろうか?
それが美味しいと評判の店を訪れた。

「そうね!とってもジューシー」

自宅から神戸までは、遠くなく近くもない距離だ。
だからこそ、訪れるまでになかなか踏ん切りが付かなかった。

「ねぇ、落ち着いて食べない?」
「・・・そこなんてどう?」

店の前はちょっとした広場になっている。

「そうね、椅子はふさがってるから」

ふたり位なら、とりあえず座れそうな場所を見つけた。
辛うじて地べたではない程度の階段だった。

「じゃあ、あらためて、いただきぃ・・・・!?」

その瞬間、目があった。

「何よ、こんな所まで!」
「ど、どうしたのよ!?急に」

周辺が混み合っていることが幸いした。
私の雄たけびにも似た叫び声は、友人にしか聞こえなかった。

「ハト・・・」
「はと?」

明らかにモノ欲しそうなハトが、私の顔を凝視している

(No.379-2へ続く)

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[No.378-2]あめちゃん

No.378-2

「食べていい?」
「もちろん!」

袋の中で更に小袋に別れている、オーソドックスなタイプだ。
小袋が透明ではないため、中身は見えない。

(どうせなら・・・)

中を見ずに口に入れてしまおう。
自分自身でサプライズを演出してみた。
小袋を軽く裂いてから、中身を見ないように飴を口に運んだ。

(・・・甘い)

正確に言えばそんなに甘くはない・・・甘く感じる程度だ。
砂糖の甘さではない最近よく口にするあの甘みだ。

「・・・さわやかな甘・・・んっ!?」

舌が何かを感じとった。

「うっ!す、すっぱぁ!!」

レモンらしき酸味が舌を襲う。
でも、次の瞬間、飴が口の中で転がり再び甘さを取り戻した。
思わず、袋の中から小袋をひとつ取り出し中身を確認した。

「なるほど2重構造か・・・美味しい!」
「ね!ねっ!いけるでしょ?」

それにしても優衣(ゆい)を少しでも疑ってしまったことが情けない。

(ごめんな)

ちょっとした罰として、すっぱい部分を積極的に舐めた。No378
(No.378完)
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[No.378-1]あめちゃん

No.378-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「あっ、これ・・・」

優衣(ゆい)が、飴を買ってきてくれた。

「そう!これがうわさの・・・」

自分も日常生活の中で、たまに使ってしまうセリフがある。

“売ってたら今度、買ってくる”

少なくとも、その瞬間は本当にそう思っている。
決して、その場をしのぐための発言ではない。
ただ・・・実現しないことが圧倒的に多いだけだ。

「ありがとう!」

意外に応え方が難しい。
忘れてた、と言えば“そんな程度だったの?”と思われてしまう。
覚えてた、と言えば・・・しつこい人間だと思われそうだ。

「なかなか、売ってなくてごめんね」

確かに今日までに、何度か報告があった。
“売っていない”と・・・。
けど、その時は忘れたことに対する、言い訳だと思っていた。

「き、気にしなくていいよ」

若干、声が上ずってしまった。
もちろん、後ろめたさから来るものだ。

「黄色のパッケージが眩しいね」
「でしょ!」

その飴は甘くて、酸っぱい飴だと聞かされていた。
単に・・・甘酸っぱいとは違うらしい。

(No.378-2へ続く)

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ホタル通信 No.128

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.45 ブリキのロボット
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

初期の作品によく見られた“雰囲気”を重視して作られています。何かを伝えたいのに、うまく伝えられていません。

実話度は、ほぼゼロと言っても良いでしょう。
ただ、ブリキのロボットのモデルとなるものは実際に存在しています。尚、素材はブリキではなく、焼き物と同じような素材です
素材が素材なため、左腕の手首あたりから折れてしまっており、それもあって物置の中に入れっぱなしになっていました。それを久しぶりに見たことが、小説のヒントになっています。

前半はありがちなワンシーンでしょう
恋愛ドラマだろうがホラー映画だろうが、それをきっかけにして何かが始まる・・・そんなシーンです。
加えて、ちょっとだけ謎めいた雰囲気がある、アンティーク調のロボット。いつもの通り後半の展開は考えずに前半を書き上げました。

後半はロボットが動き出した話です。
彼がカギを手に入れるくだりは、多少“無理やり感”が否めません。と言うのも、当初はロボットを動かすつもりはなく、“動かない”ことを前提に話を進めていたからです。

ラストは、恥ずかしながら自分で読み返してみてもピンとは来ません
カギを探し回ってくれた彼、それに応えてくれたロボットの彼を“二人の彼”と呼んでいますが、なぜこんな終わり方をしたのか、あまり覚えていません。
冒頭に書いたように、何かを伝えたかったとは思うのですがうまく伝えられていません・・・まぁ、これが“雰囲気重視”なんでしょうけどね。
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[No.377-2]季節の色

No.377-2

「やっぱり、植物の影響が大きいのかな?」

桜から始まり、ひまわり、もみじへとつながる。
そしてついには花も葉も落ちて色を失う。
今まで会話してきた内容は、植物が持つイメージに似ている。

「多分・・・そう思う」
「視覚の影響は大きいと思うな」

知らず知らずの内に、季節に色を感じている。

「けど・・・変わったね」

最近はその色も薄れてきたように思える。
学校までの道のりは、数年前よりも随分と殺風景になったからだ。

「自然破壊?話が壮大になってきたじゃん!」
「そんな大袈裟じゃないけど・・・」
「冗談よ、気持ち分かるから」

だからこそ、植物の香りが教えてくれた。
自分達が今ここに居るのだということを。

「ねぇ、学校で育ててみようよ!色とりどりな植物を」
「・・・無理よ、そんなの」
「大丈夫よ!私に任せておいて」

その後、季節は巡り、学校は色とりどりな植物に包まれた。

「・・・凄いわね」
「生徒会長の最後の仕事よ!」

季節の色が踊る学校で、私達は高校生活を終えようとしている。

「季節の色か・・・」

もう一度、振り返り、校舎を後にした。
No377
(No.377完)
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[No.377-1]季節の色

No.377-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
春と秋・・・すごしやすさの点では似ていると思う。

「平均気温はどちらも同じなのかもしれない」

調べたことはないが、感覚的にはそんな気がする。
だからこそ、すごしやすさの点では似ていると考えた。

「けど、イメージは違うよね?」

これから夏に向かう春、一方、冬に向かう秋・・・。
夏と冬が両極端だけに、どうしても後者には侘しさが付きまとう。

「そうよね、春は淡いピンクに始まり・・・」
「赤、青、黄・・・原色の夏が来る!って感じだもんね」

一方・・・。

「モノトーンと言うか、セピア色と言うか・・・」

確かに、それはそれで落ち着いた感がある。
大人的で“しっとり”してるとも言えるだろう。

「冬は冬で、ウィンタースポーツもあるのにね」

白銀のゲレンデは、夏の海よりも眩しいくらいだ。

「うん・・・それでも冬は辛く厳しいイメージがある」

生活の上では、雪は厄介者だろう。
そんな映像をニュースなどで何度も見ている。

それにしても・・・独特の香りがする。

私達の周りには、秋に特徴的な香りを放つ植物が咲き誇っている。
それにしても見事なオレンジ色だ。
だからこそ、フッとそんなことを考えてしまった。

(No.377-2へ続く)

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[No.376-2]御札の効果

No.376-2

「そうなんだけど、実は・・・」

買うには買った。
ここしばらく小さな災難が続いていたから、嫌な予感があった。
だからこそ、体調不良になった時、迷わず買った。

「その効果かどうかわからないけど・・・」
「体調はその後良くなったんだよね」

この時点では確かに効果はあった。
けど、彼に対しては・・・。

「効果がなかったみたい」

もちろん常識的に考えれば、別れてしまった原因は私達にある。
それを御札のせいにしているのは非常識だとは認識している。

「別れちゃったから?」
「そう、それも突然だったし」

見えない所で、厄年の魔の手が迫っていたのだろう。
気付いた時には、もう手遅れだったのかもしれない。
自分としては昔を思い出して、先手を打ったつもりだった。

「でもね、彼と別れた以外、逆に好調なんだ」

体調もすこぶる良好だし、仕事も順調過ぎる位だ。

「・・・肝心の彼には効かなかったけどね」
「あはは!そうじゃないよ」
「何よ、その笑い・・・」

何がそうじゃないと言うのだろうか?

「時には彼が居ない方が良い時だってあるんじゃない?」
「御札が彼を厄介払いしたとでも?」

でも、確かに彼と別れてから、運気が好転したようにも思える。
彼と別れることになったのも、御札の効果なのだろうか?

(No.376完)
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[No.376-1]御札の効果

No.376-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
御札を買った背景は簡単だ。
単に厄年の厄除けのつもりで買った。

「玲奈(れいな)って、信じるタイプなんだ?」
「信じるもなにも、ちょっと気になったから」

もともと厄年なんて気にしてはいなかった。
ただ、最近、何かと災難に見舞われた。
それに、思い返せば・・・。

「ほら、最初の厄年って、19歳前後って言われてるじゃない?」
「・・・そうなの?」

なるほど・・・無関心らしい。

「もぉ!調子狂うわね・・・でね、その時・・・」

後付の予言のようだが、確かに悪いことが続いた。
例えば、高校1年の時から付き合っていた彼氏と別れた。
それに別れた後は、しばらく彼氏ができなかった。
合コンしても、サッパリだったし・・・。

「確認するけど、それって厄年のせい?」
「・・・じゃなければ、どう説明するのよ」

自分で発言しておいて、自分の図々しさに呆れた。
それは友人も同じらしい。
表情を見れば分かる。

「で、2回目の厄年も何かあるんだ?」

どうやら、昔話は軽く流されたらしい。

「最近、体調も良くなかったし・・・それに」
「それに?」
「結局・・・別れちゃった、彼と」
「そうなの!?」

だからこそ、厄年なんだ。
じゃなければ、どう説明すれば良いのか・・・。

「それで御札買ったんだ?」

(No.376-2へ続く)

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ホタル通信 No.127

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.30 理由~今でも~
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

登場人物の設定は創作ですが、当時の心境を綴った、かなり事実に近い話です。

当時作った作品は、このように心境を語るタイプが多くありました
また、小説の中ではそれを和らげるかのように「ブログ」を始めたことになっていますが、これは事実なんですよ。
つまり、そのブログは「冬のホタル」になり、正確に言えば短期間だけ公開していた、冬のホタルの前身となるブログです。

心境を語るタイプの小説は、事実に近いにためにそのまま読んで頂いて、何かを感じて頂ければ・・・と思います。
・・・とは言え、少しだけ内容に触れさせて頂きますね。
まず、後半中盤に“誘導尋問”のくだりが登場しますが、この部分についてはラストへつなぐための単なるクッションとして挿入していますので、そのような事実はありません。

さて、話は一旦変わりますが、実話度は別にしても“事実を題材にして小説を作る”スタイルは今も昔も変わりませんが人物設定等は都合よく作り変えています。
従って、仮に作者が男性だと仮定すると、相手の女性側の視点に立って小説を作ることがあります。
例えば「メールのやりとり」が本当に行われているとすれば自分が送信した内容も受信した内容も知っているわけですから、どちらの立場にでもなることが可能です。

厳密に言えば、相手の視点に立つことはできても、心境までも正確に読み取ることはできません
従って、そこには「予想、希望、願望」など、不確かな要素で話が構成されることも少なくありません。
ですから、今回の小説のラストは「作者は女性で自分の視点で語ったもの」か「作者は男性で相手の視点を予想、希望、願望を含ませ語ったもの」のいずれかになります。
No127
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