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[No.373-1]笑顔に逢いたい

No.373-1

登場人物
=牽引役(女性)
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(・・・ん?)

近くで猫の鳴き声が聞こえる。
猫が好きでも専門家でもないが、恐らく子猫の鳴き声だろう。
声が、か細いことに加えて・・・。

「えっ・・・と、どこかな?」

泣き声が聞こえる辺りをキョロキョロと見渡した。
すると、数メートル離れた先に、それは居た。
思った通り・・・子猫だった。
大きさからすれば、生まれたばかりのような気もする。

「鳴いてないで、こっちにいらっしゃい!」

つい、雰囲気で子猫を呼んでしまった。
もちろん、通じるなんて思っていない。

「あっ・・・ちょっと待ってよ!」

逆に私の声に驚いて、姿を隠してしまった。
でも、遠くには逃げてはいない。
まだ、泣き声が近くで聞こえるからだ。

(やっぱり・・・そうか!)

泣き声だけで子猫だと思った理由はふたつある。
ひとつは泣き声が、か細かったこと。
もうひとつは、誰かに呼びかけているような泣き声だったからだ。
もちろん、その“誰か”も想像はできていた。

「・・・と言うことは・・・・」

きっとその誰かは近くに居るはずだ。
そう直感した。

(そうなると・・・私がここに居ると、警戒して近寄れないわね)

まずは少なくともこの場所から立ち去らなくてはならない。

(・・・と見せかけて)

意地悪いが、完全にここから立ち去るわけではない。

(No.373-2へ続く)

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