[No.372-2]誘った夜
No.372-2
『ごめんなさい、今は無理』
予想通りでも、予想外でもない。
この場合、なんと言えば良いのだろう・・・。
『そうなんだ、じゃあ、またの機会に』
文字を打ち込んだものの、送信ボタンを押すのをためらっている。
今は無理・・・その言葉をどう捉えて良いか、迷っているからだ。
次の機会がすぐに訪れるものなのか、それとも二度と・・・。
もちろん、後者ということも十分考えられる。
・・・と言うより、今は後者の匂いがする。
つまり・・・。
「これ、断られた・・・よな」
真意を確かめることなく、作ったメールを削除した。
しつこく誘うつもりはないが、潔く諦めた方が良いだろう。
『そっか、分かった』
結果が聞けただけでも、良しとしよう。
少なくとも彼女がしびれを切らしている訳ではなかったからだ。
メールはこれで途切れた。
逆に途切れて良かったと思っている。
これ以上続くと、返す言葉も続けていく話題も見当たらないからだ。
『今日、来れますか?』
今でも、この言葉の真意が分からずにいる。
(あの日、何もなかったのがダメだったのかな?)
そんな自意識過剰な考えも脳裏に浮かぶ。
誘われた夜、そして・・・誘った夜。
ちょっとほろ苦い、それぞれの夜。
(No.372完)
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