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[No.370-2]一枚の写真

No.370-2

「名前・・・だって知らない」

正確に言えば、覚えていない。
当時は、“姓”なら知っていたはずだ。

「昔、ツアー旅行に行ったことがあって・・・」

気ままな、ひとり旅だった。
本来なら、ひとり旅とは言えないのかもしれない。
でも、知り合いが居たわけでもない。
だから、気持ちの上では、十分ひとりだった。

「言っとくけど失恋の痛手を・・・なんてことじゃないからね」

ただ、いくらひとりと言えども、その内、仲間意識は芽生える。

「それを見越して?」
「うん・・・ひとりと言いながら、誰かの温もりを感じたかったのかも」
「・・・で、その男性と知り合いになったんだ?」
「それがね、違うんだ」

その男性とは最後の最後まで話はしなかった。

「でね、別れ間際に一言二言だけ話したんだ」

皆がそれぞれの帰路に付こうとする瞬間だった。
何を話したのか全く覚えてはいない。
けど、何年来の友人のように、ごく自然に言葉を交わした。

「だから妙に印象が残ってて」

偶然なのか、必然なのか・・・。
写真に写る彼は、私好みの顔だった。

(No.370完)
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