[No.366-2]スカーフの謎
No.366-2
「心当たり?」
「理由は分かんないけど、誰かは見当がついていたんだ」
当時、年上の女性と仲良くなった。
付き合ったわけじゃないが、向こうからアプローチされていた。
「ふ~ん、案外もてたのね」
もてたというより、悪く言えば遊ばれていたのかもしれない。
ただ、狭い社内だ・・・すぐ話題になった。
「・・・でな、いわゆる“お局さん”の耳に入って」
ここで初めて女性の恐ろしさを知ることになった。
もちろん、嫉妬心の矛先は僕ではなく、その女性に向けられた。
「結局、しばらくしてその女性は会社を辞めたんだけど・・・」
「辞めたその日に入っていたんだ、スカーフが」
もちろん、単なる偶然かもしれない。
ただタイミング的にどうしても彼女が入れたとしか思えない。
「どう思う?同じ女性として」
「・・・そうね・・・・」
そのスカーフに想い出があるわけでもないし、見たことすらない。
だから、なぜスカーフだったのかは最大の謎だ。
自信の痕跡を残すのなら、もっと分かり易い何かを残すべきだろう。
「まぁ、適当な何かが無かったのかもしれないけどな」
例えば口紅を残されると、かなり考え込んでしまうだろう。
執念と言うか・・・だから、ソフトなものを残したのかもしれない。
「私も同じ立場なら、スカーフにするかもしれない」
「えっ、どうして?」
「・・・それじゃ、はい!これ」
梨江(りえ)が身に付けていたスカーフを僕に渡した。
何とも言えない甘い移り香がする。
なるほど・・・そういうことか。
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