[No.364-2]見えない壁
No.364-2
「今、すれ違った人だって・・・」
「・・・今は他人でも、そうじゃなくなる日が来るかもしれない」
「でも、今はすれ違うだけ」
孤立感はひとりの時より、大勢の中に居る時の方が強く感じる。
少なくとも私はそうだったからだ。
「対比というか・・・」
「大勢がひとりを際立たせていると言えばいいのかな・・・」
行き交う人の波が、友人をそうさせたのだと思う。
ただ、孤立感を持ったとしても、孤立には繋がらない。
逆に、人の温かさに触れてみたくなる。
「そうね・・・なんだか急に彼のこと、思い出しちゃって」
「自分でもよくわからないけど」
「ううん、そんなことないよ」
人の気持ちなんて、天気よっても変わるくらいだ。
「だから、気にすることないよ!」
「ごめんね、心配掛けちゃって」
見えない壁が、今の私たちを取り囲んでいる。
だから、行き交う人に触れることができない。
手を伸ばせば触れられる距離に居るのに・・・。
「見えない壁か・・・」
「けど、見えないなら、無いのと同じことよね?」
「・・・そうだよね!」
他人と知り合いの境界線は、見えない壁によって仕切られている。
その壁は無色透明であっても、壁を越えることは出来ない。
でも、声は届く。
だから、人は声を掛けて知り合いになろうとするんだ。
(No.364完)
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