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[No.364-1]見えない壁

No.364-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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「どうしたの・・・知り合いでも居たの?」
「・・・えっ!?ううん、何でもない」

何でもないわけはないだろう。
明らかにすれ違った人を追うかのごとく、振り返ったからだ。

「ごめん、本当に何でもないんだ」
「・・・ほんと?」

別に追求するほどのことでもないが、妙に気にはなる。

「ごめんね・・・よく分かんないけど体が反射的に動いたの」
「だから、特定の人を追ったわけじゃない」

無意識に・・・と言うことだろうか?
それはそれで心配にもなる。

「ほら、こうやって行き交う人たちって、沢山いるじゃない?」

特に金曜日の夜とあって行き交う人が普段より多い。

「それが・・・?」
「みんな他人なんだよね」

当たり前のことを言っているし、難しい話をしているわけでもない。
なのに、真意が見えない。

「どういうこと?」
「けど、知り合いになったら他人じゃなくなる」

答えになっていない・・・でも、何かを伝えようとしている。

「それでも、いつかまた他人に戻っちゃうんだよね」
「それって、まさか・・・元カレのこと?」

金曜日の夜は行き交う人が多い。
ただ、妙な孤立感が私たちを包み込んだ。

(No.364-2へ続く)

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