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2012年5月

[No.367-2]姓名判断

No.367-2

誰しも一度や二度の経験はあるだろうから、当然かもしれない。

「うち、名前の上では幸せになれるやろ?」
「・・・うん」

正直答えた。

「だから、気にせえへんほうがええよ」
「ハズレるみたいやから」
「・・・ん?」

意味が良くわからない。

「占いの結果と現実は反対になるってこと」
「・・・それって、僕に対する気遣い?」

どうやら、僕の名前でも占ったことがあるようだ。
僕は名前の上では、不幸せな人生を歩むらしい。
ただ、現実は幸運にも、そこそこ幸せに恵まれている。

「でも、それなら・・・」
「うちのことは、気にせんでええよ」

なぜか、余裕の表情だった。
実は彼女には言わなかったが、“ある名前”でも占ってみた。

「・・・あのな、実は・・・」
「なに?」
「・・・いや・・・ごめん、なんでもない」

なぜあの時、彼女が余裕だったのか、1年後知ることになった。
彼女も僕と同じように、“ある名前”で占っていたようだった。No367
(No.367完)
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[No.367-1]姓名判断

No.367-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
特に何があったわけでもない。

たまたま姓名判断のバナーが目に入っただけだ。
好奇心というほどの気持ちではないが、そのバナーをクリックした。

「えっと・・・幸せな家庭・・・」

最初は自分の名前を入れてみた。
姓名判断自体はネット上で、何度かやってみたことがある。
だから“言われる”ことは大体予想できていた。
案の定、あまり誉めてはくれなかった・・・。

「・・・に恵まれるか」

今、ある人の名前を入れて結果を見ている。
一言では言い難い関係にある、ひとりの女性だ。

「皮肉なものだな」

彼女は幸せな家庭には恵まれなかった。
むしろ、不幸だった・・・と言ったほうが早い。

「名前の上では、幸せが手に入るのにな」

小さい頃から苦労の連続だ。
両親のこと、学校のこと・・・それに・・・。
とても聞くに堪えない話が、いくつもあった。

「姓名判断?・・・うん、知ってたよ」

(意外・・・じゃない・・・か)

ある日、さりげなく、姓名判断のことを聞いてみた。

(No.367-2へ続く)

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[No.366-2]スカーフの謎

No.366-2

「心当たり?」
「理由は分かんないけど、誰かは見当がついていたんだ」

当時、年上の女性と仲良くなった。
付き合ったわけじゃないが、向こうからアプローチされていた。

「ふ~ん、案外もてたのね」

もてたというより、悪く言えば遊ばれていたのかもしれない。
ただ、狭い社内だ・・・すぐ話題になった。

「・・・でな、いわゆる“お局さん”の耳に入って」

ここで初めて女性の恐ろしさを知ることになった。
もちろん、嫉妬心の矛先は僕ではなく、その女性に向けられた。

「結局、しばらくしてその女性は会社を辞めたんだけど・・・」
「辞めたその日に入っていたんだ、スカーフが」

もちろん、単なる偶然かもしれない。
ただタイミング的にどうしても彼女が入れたとしか思えない。

「どう思う?同じ女性として」
「・・・そうね・・・・」

そのスカーフに想い出があるわけでもないし、見たことすらない。
だから、なぜスカーフだったのかは最大の謎だ。
自信の痕跡を残すのなら、もっと分かり易い何かを残すべきだろう。

「まぁ、適当な何かが無かったのかもしれないけどな」

例えば口紅を残されると、かなり考え込んでしまうだろう。
執念と言うか・・・だから、ソフトなものを残したのかもしれない。

「私も同じ立場なら、スカーフにするかもしれない」
「えっ、どうして?」
「・・・それじゃ、はい!これ」

梨江(りえ)が身に付けていたスカーフを僕に渡した。
何とも言えない甘い移り香がする。
なるほど・・・そういうことか。

(No.366完)
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[No.366-1]スカーフの謎

No.366-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「なっ・・・不思議な話だろ?」

1年前くらいに、不思議な体験をしたことを思い出した。
きっかけは、梨江(りえ)が身に付けているスカーフを見たからだ。

「結局、何だったんだろうね」

会社のロッカーの中に薄いピンク色のスカーフが入っていた。
もちろん、自分の物ではない。

「ロッカーはひとり用だったんだよね?」
「そうだよ、自分専用」
「鍵は?」
「・・・そんな習慣はなくて」

別に貴重品を入れるわけでもなく、単なる物置に近い。
自分だけでなく他の人もそんな使い方をしていた。

「それに更衣室にあったわけでもなくて」
「どこにあったの?」
「事務所内」

女性と違って、着替えることもない。
コートやスーツの上着を掛けておく程度だ。
だから、更衣室になくても良かった。

「鍵も掛かっていないし、事務所内にあるから・・・」
「・・・誰でも入れようと思えば入れられるね」

スカーフは女性だけの装飾品ではないとは思う。
けど、さすがにスーツ姿で出勤してくる男性は身に付けないだろう。

「だから、誰かが意図的に入れたと考えてる」
「たまたま、あなたのロッカーの前に落ちていたとしたら?」

確かに有り得ない話ではない。
ただ、そうだとしても・・・。

「まずは女性に聞くだろ?落し物があったって」

実は意図的だと思う理由に心当たりがあった。

(No.366-2へ続く)

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ホタル通信 No.122

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.57 ごめんYO
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

登場人物やシチュエーションは事実と異なりますが、主軸となるものはほぼ事実です。

いわゆる変換ミス・・・これがこの話を作るきっかけです。
変換ミスとは言え日本語変換のミスではなく、ローマ字入力をそのまま表示させたミスとでも言いましょうか・・・。
ただそれくらいなら、日常茶飯事なんですが、語尾が“YO”になったせいで、どうしても文章がラップ調にしか見えなくなりました。これが、どうにも可笑しくて・・・

この“YO”をどう生かして小説にしようか、考えていた時に、偶然にも小説と同じような出来事がありました。でも、社内ではありませんよ。
そこで、喧嘩した時の仲直りの道具として“YO”を使うことを思い付きました。ただ、仲直りの道具として使われたのはあくまでも小説の中だけであり、実際には使っていません。

喧嘩した時、謝りたいけど謝れない・・・そんな心境を、少し描いてみました
そんな時、まるで救いの神のごとく“YO”を飛び込ませてみました。勇二がそれを狙ってミスしたのかどうかは別にしても、結果的にこれが、仲直りのチャンスになります。まさしく救いの神!となったわけです。

でも、そんな感じじゃないでしょうか?喧嘩した時って。
意地を張っていることを見抜いて欲しい・・・だから後、ほんの少しだけ謝って欲しい・・・
そしたら、折れてあげられるのに・・・いつもその前に諦めてしまうんだから男性って!という具合に。
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[No.365-2]ポスター

No.365-2

「これか?」

本当はあえて聞く必要もなかった。
何らかのアニメに登場する誰かだとは見れば分かる。

「好きなの?」
「好きだよ」

別にアニメが好きなことを悪く言うつもりはない。
ただ、現実に存在しない女の子とは、張り合いようがない。
顔やプロポーションだって、現実のそれとはかなり異なる。

「嫌いか?」
「嫌いじゃないけど、あまり関心はないわね」
「あはは!そうなんだ」

(なによ、その「あはは!」・・・って)

確かに友達の中にも、アニメが好きな人が居る。

「別にいいじゃない!」
「ごめん、ごめん」

アイドルを好きになっても叶わぬ夢で終わるだろう。
でも、可能性はゼロではない。
一方、アニメはどうあがいても可能性はゼロだ。

「ゼロ?そうとも言えないぞ」

架空の人物を好きになって、一体どうしようと言うのだろうか。

「よく見てみろよ、それ・・・誰かに似てないか?」
「誰って・・・」

よく見ると、印刷したというより、塗ったような“手作り感”がある。
それを裏付けるかのように、筆やら絵の具が置いてあった。

(No.365完)
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[No.365-1]ポスター

No.365-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
何となく、予想はしていた。

「そのポスターの人・・・だよね?」
「そうだよ」

アイドルのポスターが貼ってあっても不思議ではない。
自分の部屋にも貼ってあるからだ。

「彼女みたいなのがタイプなんだ?」
「だね!」

(何が「だね!」よ、まったく・・・)

彼女を部屋に呼んだわけだから、やっておくことがあるはずだ。
部屋の掃除は基本中の基本として・・・。
見えるようにあえて出しておくもの。
そして・・・。

「私と正反対のタイプよね?」

こうなるから、見えないようにあえて引っ込めて欲しかった。
堂々と貼ってある、そのポスターを・・・。

「・・・かもな」
「ふ~ん」

やきもちではない。
勝っているとも言えないが、負けてもいない。

(まぁ・・・これはこれとして)

それよりも気になるのが、もう一枚のポスターだ。

「その隣は、なに?」

本来は「誰?」と聞くべきだろうし、そう聞いてもおかしくはない。
でも、そう聞くには少し抵抗があった。

(No.365-2へ続く)

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[No.364-2]見えない壁

No.364-2

「今、すれ違った人だって・・・」
「・・・今は他人でも、そうじゃなくなる日が来るかもしれない」
「でも、今はすれ違うだけ」

孤立感はひとりの時より、大勢の中に居る時の方が強く感じる。
少なくとも私はそうだったからだ。

「対比というか・・・」
「大勢がひとりを際立たせていると言えばいいのかな・・・」

行き交う人の波が、友人をそうさせたのだと思う。
ただ、孤立感を持ったとしても、孤立には繋がらない。
逆に、人の温かさに触れてみたくなる。

「そうね・・・なんだか急に彼のこと、思い出しちゃって」
「自分でもよくわからないけど」
「ううん、そんなことないよ」

人の気持ちなんて、天気よっても変わるくらいだ。

「だから、気にすることないよ!」
「ごめんね、心配掛けちゃって」

見えない壁が、今の私たちを取り囲んでいる。
だから、行き交う人に触れることができない。
手を伸ばせば触れられる距離に居るのに・・・。

「見えない壁か・・・」
「けど、見えないなら、無いのと同じことよね?」
「・・・そうだよね!」

他人と知り合いの境界線は、見えない壁によって仕切られている。
その壁は無色透明であっても、壁を越えることは出来ない。
でも、声は届く。
だから、人は声を掛けて知り合いになろうとするんだ。No364
(No.364完)
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[No.364-1]見えない壁

No.364-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうしたの・・・知り合いでも居たの?」
「・・・えっ!?ううん、何でもない」

何でもないわけはないだろう。
明らかにすれ違った人を追うかのごとく、振り返ったからだ。

「ごめん、本当に何でもないんだ」
「・・・ほんと?」

別に追求するほどのことでもないが、妙に気にはなる。

「ごめんね・・・よく分かんないけど体が反射的に動いたの」
「だから、特定の人を追ったわけじゃない」

無意識に・・・と言うことだろうか?
それはそれで心配にもなる。

「ほら、こうやって行き交う人たちって、沢山いるじゃない?」

特に金曜日の夜とあって行き交う人が普段より多い。

「それが・・・?」
「みんな他人なんだよね」

当たり前のことを言っているし、難しい話をしているわけでもない。
なのに、真意が見えない。

「どういうこと?」
「けど、知り合いになったら他人じゃなくなる」

答えになっていない・・・でも、何かを伝えようとしている。

「それでも、いつかまた他人に戻っちゃうんだよね」
「それって、まさか・・・元カレのこと?」

金曜日の夜は行き交う人が多い。
ただ、妙な孤立感が私たちを包み込んだ。

(No.364-2へ続く)

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ホタル通信 No.121

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.85 聞き間違い
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

今回の小説は、とある歌詞の一部を聞き間違えていたことから始まります。

その歌詞を普段、口ずさんだりすることも多かったのですがどこか違和感を感じていました。
それでも明らかに変ではないために、そんなものだろうと考えていました。ところが、改めて歌詞を調べて見ると・・・こんな経験を小説にしてみました。

さて、話の構成としては割りと良い具合に仕上がっていると思っています。ラストの展開は書き始めてすぐに思いつきましたので、そうなるように中盤の会話を進めて行きました。
香苗の聞き間違えから始まり、僕が以前聞き間違えていたという事実が発覚し話が終わります。

ところで、僕が何を聞き間違えて「香苗が僕のことを好きって・・・」になったか分かりますか?
実はその答えは用意していません。具体的な答えを決めず単に含みだけを持たせています。従って、読み手はもちろん作者も読後に色々と考えることができる楽しみを持たせています。

最後に一番気になる小説の冒頭の歌詞
“美人”以外は実在の歌詞のはずなんですが・・・誰の何という歌詞か忘れてしまいました。
ちょっと調べて見たのですが、ヒットしないようですし、もしかしたら、これ自体も創作している可能性も否定できません。
お恥ずかしい限りですが、随分前の作品のため、覚えていません・・・すみません!
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[No.363-2]イルカに乗った・・・

No.363-2

「やっぱり、売ってたやん!」

水族館の見物もそこそこにお土産店に入った。
確かに店の一角で売られている。
でも、売ってはいるものの、数える程度の種類しかない。

「これなんか、どう?」

いわゆるミニタオルとでも言えば良いのだろうか?
ハンカチサイズの大きさで、タオル生地だ。

「それも捨てがたいけど、遊ばれへんやろ?」
「遊ぶ?あぁ・・・そうだったな」

聞こえが悪いかもしれないが、彼女はひとり遊びをよくする。
彼女にとっては、独り言に近いレベルだろう。
ただ、俺にはそれが少しせつなくも見える。

「じゃ、これだろ!どう考えても」
「うちもそれがええわ!」

やはり、遊ぶとなると、ぬいぐるみが適している。
それにサイズも丁度良い。

「・・・で、これは・・・」
「イルカに乗った、せいじゅうろうやろ?」

シチュエーションは恐らくそうであろう。
けど、そう見えないのが笑える。

「乗ってるというより、寝そべってる?」
「そやね~」

イルカに乗ったせいじゅうろうならぬ、イルカで寝そべっている・・・。

「いや、寝そべってるというより・・・」
「ダラダラしてるんや!イルカの上で!」

何となく、俺がイルカ役になりそうな予感がした。No363
(No.363完)
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[No.363-1]イルカに乗った・・・

No.363-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
気付けば身の回りは、せいじゅうろうで溢れている。

「どんなのが売ってるやろか~」

菜緒(なお)と遠出することになった。
・・・とは言え、日帰りできる距離だ。
それにそこには何度も行ったことがある。

「どんなのって・・・なにが?」
「せいじゅうろうに決まってるやん!」

正確に言えば・・・・。
俺と菜緒のケータイにぶら下がっているのが、せいじゅうろうだ。
ある時、菜緒がリラックマを、こう命名した。
だから本来は、これ以外のリラックマをせいじゅうろうとは呼べない。
まぁ・・・そんなに真剣に考える内容ではないが・・・。

「ご当地キティちゃんとかあるやろ?」
「なんだ、ご当地もののことか」

今に始まったことではない。
つい最近では、大きなエビフライを持ったせいじゅうろうを買った。

「水族館だから・・・」
「魚のかぶりものしてるやつとか!?」
「あはは!ありそうだな」

実際、様々なかぶりものに挑戦している。

「・・・プッ!挑戦してるやて」
「笑うなよ」

いつの間にか、せいじゅうろうに敬意を表している自分が居る。
随分、彼と彼らには助けられたからだ。

「とにかく、楽しみや!」

一路、水族館を目指した。
菜緒と俺・・・そして後部座席に座る、せいじゅうろう達と共に。

(No.363-2へ続く)

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[No.362-2]移り行く季節

No.362-2

「逆に思い出させちゃった?」
「ううん・・・逆に忘れてなかったから」

思い出すもなにも、忘れていなかった。
だから、何かをきっかけに思い出す必要もない。

「ありがとう、今日誘ってくれて」
「ううん・・・春は出逢いと別れの季節って言うけど」

私はその別れの方だった。

「身近に居ると、軽々しく発言できないね」
「時間が解決してくれるから・・・平気よ」

今までだってそうしてきた。
正直に言えばそうするしか手立てがなかった。

「・・・早く夏にならないかなぁ~」

きっと、その頃には忘れることができている・・・そう信じている。
そんなこともあって、夏が待ち遠しくもある。

「でも、まだ全然春だもんね」

桜が散り始めているとは言え、まだまだ春全開だ。

「ほんと、散ってはいるものの・・・」

何気なく落ちてくる桜の花びらを手にしようとした、その時・・・。
避けるかのように、フワフワと空に向かって飛んで行ってしまった。

「・・・今の見た!?」

(No.362完)
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[No.362-1]移り行く季節

No.362-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「わぁ~、綺麗ね!」

分かっていても、つい口にしたくなる。
桜が見事なまでに咲き誇っているからだ。
ただ、今日はやや風があるせいだろうか?
桜並木は、舞い散る花びらも多い。

「これは、これで風情があるじゃない」

さながら桜の雨に、桜の水たまりといったところだろうか。
こんな風情のあるシチュエーションはそう長い期間、続かない。

「それに、ほら!こんなに桜に濡れちゃった・・・」

友人が雨に引っ掛けた話を続けた。
確かに、小雨に降られたように、花びらが頭や肩に乗っている。

「うまいこと言うわね」

どうやら桜の雨は、しばらく止みそうにない。

「こんな雨ならいつでも歓迎だよ!」

こんな雨なら悪くない、ただ・・・。

「これくらいの雨じゃ、涙は隠せそうにないけどね」
「まだ・・・引きずってる?」
「・・・かもしれない」

私の身を案じてだろうか・・・。
舞い散る花びらが少し増えたような気がする。

(No.362-2へ続く)

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ホタル通信 No.120

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.33 夕焼けは晴れ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

初期の作品によく見られた“ダーク”な要素を含んだ小説です。
ただダークと言っても“悪”というわけではありません。

実話度は極めてゼロに近く、内容はほぼ事実ではありませんが「もしかしたら、そうなっていたかも・・・」という事実を含んでいます。従って、実話度がゼロで終わって、逆に良かった作品です。

では内容に触れて行きますね。
まず、当時は話の中で、時間経過や回想シーンがあってもあえて何も説明していませんでした。現在はを入れることにより、何らかの変化があることを皆様にお伝えしています。今回の話は本来であれば3度、が必要になります。

ひとつ目は前半の中盤「・・・雨になる理由も知っている」の後にを入れ、回想シーンに入ります。そして「ごめん、ごめん・・・」の前に回想シーンの終わりを表す、ふたつ目のが必要になります。
ホタル通信を書く前には、一度読み直しているのですが、「ごめん、ごめん」の下りがどうしても話の流れに噛み合わず、少し考え込んでいました。
「ごめん、ごめん」は「な~んだ、頼りにならないわね」に対する答えであるため、その間に回想シーンを入れたことで会話が噛み合っていないように見えます。

三つ目は、後半の出だしにが必要です。
後半は前半から数日~数ヶ月、経過していると考えてください。
特に具体的な経過日数は設定していません。
後半は直接的な表現は避けていますが、美沙の遺影に対して話が展開していきます。
冒頭に「実話度がゼロで終わって、逆に良かった」と書きました。
当時そうなる危険性があったのは事実で、その緊張感がこんな小説を生み出したのかもしれませんね。

決して明るい話ではありませんが、“冬のホタル”の原点のような作品です。笑顔で話を読み終えて頂ければ幸いです。
No120
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[No.361-2]続・成長

No.361-2

「いつもは制服を見慣れていたから」
「まず、っていうくらいだから、他にもなにかあるのね?」
「まぁな、そっちの影響が大きかったと思うよ」

誰だか分からなかった原因は2つある。
ひとつは、私服だったこと。
もうひとつは・・・。

「化粧してたんだよ、薄くだけど」
「すれ違っただけの割には、よく見てるじゃない?」

(そりゃ、好みのタイプだからな!)

・・・なんてことは、口が裂けても言えない。

「すれ違ったとは言っても一瞬じゃないだろ?」

やや遠くから、だんだんと近付いてくる。
その段階で、見覚えのある顔だとは気付いていた。

「だからこそ、違和感があったんだよ」

見慣れた顔なのに、なぜがピンと来ない。
・・・で、すれ違った後に気付くことになった。

「でもな、話の中心はそこじゃないんだ」

そもそもなぜ化粧をしていたのか?もしかしたら・・・。

「春休み限定かもしれないし・・・」
「卒業したのかもしれない、ってことね?」

これもまた、ひとつの成長と感じた。
それを制服ではなく、今回は化粧で感じることになった。

「でも、分かってないなぁ~」

ちょっと小ばかにしたような目つきで僕を見る。

「化粧が少し濃くなったのよ」
No361

(No.361完)
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[No.361-1]続・成長

No.361-1 No.270 成長

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
(ん?・・・あれ?)

「ん?・・・あれ?前にもこんな感覚が・・・」

ある女性・・・というより、女の子とすれ違った。
見覚えのある顔だ。
ただ、何となく違和感があり、すぐには思い出せない。
あの時のように・・・。

「以前もそんなこと言ってたよね?」
「それは否定しない」

確かに以前、話したことがある。
正確に言えば、話した時期も同じだ。
若干、今回の方が早いが・・・。

「その続き?」
「みたいなものだけど、別の女の子だよ」
「・・・で!何度も言うけど、変な目で見てるわけじゃないからな!」

昨日、見覚えのある女の子とすれ違った。
けど、誰だったのか、すぐには分からなかった。

「結局、誰だったの?」
「さぁ~・・・」
「けんか、売ってる?」

別に間違った答えを言ったつもりはない。
名前を知ってるわけでもないし、もちろん知り合いでもない。
だから、必然的に答えはそうなる。

「とにかく、よくすれ違う女の子だったんだよ」
「その割には、思い出せないわけ?」
「だから・・・それを・・・」

これから話そうとしていた。

「まず、私服だったんだよ」

最初は驚いたが、よく考えれば丁度春休みの時期だった。

(No.361-2へ続く)

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[No.360-2]ふたつの月

No.360-2

「まっ、その後はSF映画らしく・・・」

その後はエイリアンだの戦闘だの、王道の展開が続いた。

「ところで、何でこんな話してるんだっけ?」
「あれ?なんでだっけ・・・」

何かを思い出そうとする行動が、自然に目線を上に向かせた。

「あー!月が妖しい!」

私の声とほぼ同時に彼も反応した。
妖しい月の話が、すぐにSF映画に変わってしまった。

「映画の話をするから、話がズレちゃったじゃない!」
「ズレた?・・・月の話にはかわりないだろ?」
「そうじゃなくて」

確かに話は繋がってなくもない。
ただ、私が言いたかったのは、そこじゃない。

「じゃあ、なんだよ」
「・・・スルーしたでしょ?」
「スルー?」

映画の話しに変わる直前の私のセリフを、彼は拾わなかった。
最大限のアピールを、超さりげなくしたはずなのに・・・。

「・・・今夜がどうかしたとか、しないとか、だっけ?」
「まぁ、そんな感じ」

この際、細かいことは言ってられない。

「で、それがどうしたわけ?」
「もぉ・・・だから、こんな夜は何かが起こるの!」

彼のくちびる目がけて飛び込んだ。

(No.360完)
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