« ホタル通信 No.119 | トップページ | [No.360-2]ふたつの月 »

[No.360-1]ふたつの月

No.360-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「たまに妖しく光るよね・・・月って」

今夜の月は、妖しいという言葉が良く似合う。
やや赤みがあり、霞が掛かったようにぼんやり光っている。

「何か起こりそうね、今夜は」

全く根拠はないが、ドラマや映画でもお馴染みのセリフだ。

「映画と言えば、SF映画でこんなシーンがあるんだけど・・・」

彼が映画のワンシーンを語り始めた。

ある男がうっそうとした森の中で意識を取り戻す。
自分は誰なのか、なぜ今ここに居るのか・・・分かっていない。
とりあえずその男は歩き出すことにした。
何時間も歩いた視線の先に、一際大きな光が見える。
ようやく、この森を抜け出すことができそうだった。
そして森を抜け、広がる大空を目の当たりにした時・・・。

(ゴクリ・・・)

「漫画みたいな喉の音だな?」
「だって、話の続きが・・・」

その男は何をみたと言うのだろうか。

「ねぇねぇ、早く続きを!」
「そうせかすなよ・・・で、大空に・・・」
「月が2つあったんだよ」
「月が2つ?・・・あっ、そうか!」

映画ではその男がどこに居るのか、あえて説明はなかったらしい。
でも、そのシーンだけで何を言いたいのか、分かる。

「少なくとも地球じゃないんだ・・・」

なんだが、空を見上げるのが恐ろしくなった。

(No.360-2へ続く)

| |

« ホタル通信 No.119 | トップページ | [No.360-2]ふたつの月 »

(015)小説No.351~375」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.360-1]ふたつの月:

« ホタル通信 No.119 | トップページ | [No.360-2]ふたつの月 »