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[No.359-2]好きだった

No.359-2

「過去形の女か・・・」
「しみじみ言わないの!」

(もう!まるでサスペンスドラマのタイトルみたいじゃない)

「でも、絵になると思わないか?」
「・・・まぁね、違う意味でだけど」

それに過去形にされた私に、どうしろと言うのか?
今、この瞬間にだって、過去形にされた。

「・・・で、カミングアウトしたわけだけど?」
「おい、おい・・・結婚したばかりだよ」

別に彼を誘惑しようとは思っていない。
それは彼だって同じだろう。
だからこそ、平然とカミングアウトできたはずだ。
まぁ・・・それはそれで寂しいものを感じるが・・・。

「冗談よ、冗談!」
「・・・まぁ、ちょっとは期待したけどな」
「もぉ、バカなこと言わないの!」

お互い、何も進展しないことは分かっている。
だからこそ、艶かしい話のひとつもできる。

「ほら!奥さん・・・呼んでるわよ」

彼の背中を熱い視線で見送る。

「あはは・・・私は別に好きじゃなかったのにね」

過去形とは言え告白されて、多少気持ちが高ぶっていた。
そのせいだろうか・・・錯覚を起こしているようだった。

「さぁ!・・・気持ちを切り替えて行くわよ」

目の前に、草食動物が群がっていた。

(No.359完)

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