[No.358-2]桜
No.358-2
「だから、大丈夫!」
ひとりでしゃべって、ひとりで結論付けていた。
「散ることもないし、折れることもないから」
「・・・だから、だから・・・私は大丈夫・・・」
桜の話がいつしか、“私”に変わっていた。
・・・というより、最初から自分の話をしていたように思える。
その時、列車の到着を告げるアナウンスが流れ始めた。
「来ちゃった・・・ね」
彼女が乗り込む列車がホームに近付いて来た。
「桜に負けないように、私も頑張るから」
今までの話のつじつまが合ってきた。
彼女が大学に通うために、ふるさとを旅立つ。
それと同時に、僕たちの遠距離恋愛が始まる。
「無理するなよ」
「いつになく、やさしいじゃん・・・」
遠距離恋愛の始まりは僕たちにとって春の嵐なのかもしれない。
これから吹き荒れる風や雨に晒されることになるだろう。
でも、この桜のようにきっと大丈夫だ・・・そう信じている。
(No.358完)
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