[No.355-2]福山さん
No.355-2
「・・・妬いてる?」
「べ、べつに・・・」
それは本当だ。
やきもちを焼く以前の問題だ。
戦う前に戦意喪失・・・言わば“白旗”をあげている。
「素敵だと思うことと、好きだということは違うのよ?」
「なんだよ、それ・・・フォローのつもりか?」
「まぁ、男性にはわかんないと思うけど」
いや・・・素敵だと思うのだから、それはイコール、恋だ。
“愛”と言っても、言い過ぎではないだろう。
「大袈裟なんだから」
「目の前で、福山さんが素敵だと言われたら誰だって・・・」
子供と思われても仕方がない。
実際、高校生ならまだ子供だろうし・・・。
少なくても俺には佐緒里(さおり)の気持ちが理解できない。
「女子はそんなものなの、いずれ分かるから」
「できれば今、知りたいけどな」
福山さんの名前を出された時点で、なんか負けた気分になる。
付き合っている俺って一体・・・。
「ねぇ今度、福山さんのライブに行かない?」
「嫌がらせのつもり?それとも荒療法?」
「もぉ・・・ほんと困った人ね・・・」
そう言うと、一呼吸おいてから、僕をまっすぐ見つめて口を開いた。
「素敵な人を、その人よりもっと素敵な人と一緒に見たいだけよ」
(No.355完)
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