[No.353-2]ひろめ
No.353-2
「今なら逆におしゃれな名前かもしれないな」
今の時代、逆に“ひろ子”の方が普通過ぎるくらいだ。
“ひろめ”の方がインパクトはあるし、何となく艶かしい響きもある。
「随分、都合の良いこと言うよね」
「当時の彼女の気持ち、考えてあげたら?」
「・・・分かってるよ」
ノートに書かれた名前を見た時、ことの重大さに気付いた。
これを他の男子に見られたら、余計にエスカレートする・・・。
子供ながらそう予感した。
「けど・・・今までのことがあったから」
「ノートに落書きしたんだよ、わざと・・・名前の部分に」
他の男子の目に止まる前に、いわば証拠は消し去った。
もちろん、彼女からはますます嫌われたことは言うまでもない。
「それが気遣いとは思わないもんね、普通は」
「とにかく、いいとこあるじゃない!」
それに徐々に、イジられることも少なくなって行った。
飽きっぽさもまた小学生ならではだった。
「話は戻るけど、私がなぜ彼女の気持ちが分かると思う?」
「・・・美保ではなく、美保“子”だからだろ?」
似た経験をしたからだろう・・・“子”が何となく不自然に聞こえる。
「私の場合は“姓”の方だけどね」
「でも、もうすぐそれも想い出に変わるかも知れない」
明日、僕達は結婚する。
(No.353完)
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