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2012年4月

[No.360-1]ふたつの月

No.360-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「たまに妖しく光るよね・・・月って」

今夜の月は、妖しいという言葉が良く似合う。
やや赤みがあり、霞が掛かったようにぼんやり光っている。

「何か起こりそうね、今夜は」

全く根拠はないが、ドラマや映画でもお馴染みのセリフだ。

「映画と言えば、SF映画でこんなシーンがあるんだけど・・・」

彼が映画のワンシーンを語り始めた。

ある男がうっそうとした森の中で意識を取り戻す。
自分は誰なのか、なぜ今ここに居るのか・・・分かっていない。
とりあえずその男は歩き出すことにした。
何時間も歩いた視線の先に、一際大きな光が見える。
ようやく、この森を抜け出すことができそうだった。
そして森を抜け、広がる大空を目の当たりにした時・・・。

(ゴクリ・・・)

「漫画みたいな喉の音だな?」
「だって、話の続きが・・・」

その男は何をみたと言うのだろうか。

「ねぇねぇ、早く続きを!」
「そうせかすなよ・・・で、大空に・・・」
「月が2つあったんだよ」
「月が2つ?・・・あっ、そうか!」

映画ではその男がどこに居るのか、あえて説明はなかったらしい。
でも、そのシーンだけで何を言いたいのか、分かる。

「少なくとも地球じゃないんだ・・・」

なんだが、空を見上げるのが恐ろしくなった。

(No.360-2へ続く)

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ホタル通信 No.119

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.40 転校生
実話度:☆☆☆☆☆(0%)
語り手:男性

実話度0%の作品ですが、手掛けるに至った経緯には多少現実的なものが含まれています。

話の牽引役は男性、そしてその相手が「矢島さやか」という女性で、作品上、どちらも高校生の設定です。
この女性にはモデルになる人が存在し、「彼女が学生生活をしていたらきっとこんな感じだろう・・・」を具現化したものです。
今現在の彼女の口から語られる昔話や性格的なものを参考にして話をまとめあげています

ただ、参考と言ってもほとんど“想像”の世界です。
彼女が高校生だった期間は1年間もなく、高校2年生をむかえることなく、校舎を後にすることになります。
なぜ、校舎を後にしたのか?を含めて、当時、彼女の置かれていた環境を昔話として聞く機会が多かったため、それを想像してみたのです。
想像で書く・・・それも、楽しく、明るい話として書いていませんよね?けど、これでも抑え気味に書いたんですよ。彼女の口から語られる昔話は小説のようなぬるい話ではありませんでした。

冬のホタルには、キーワードになる言葉やシチュエーションが存在します
高校2年生をむかえることがなかったのは・・・そうです、中退することになったからです。この高校中退もキーワードのひとつであり彼女の人生がそこから大きく変わって行きました。

最後に、作者の性別や年齢は今でも伏せています
ですから、今回の語り手はあくまでも牽引役である男性としていますが、女性である“矢島さやか”の可能性もあります。
・・・と、ちょっと、もったいぶったところで、小説の最後のセリフは事実なんですよ。
No119
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[No.359-2]好きだった

No.359-2

「過去形の女か・・・」
「しみじみ言わないの!」

(もう!まるでサスペンスドラマのタイトルみたいじゃない)

「でも、絵になると思わないか?」
「・・・まぁね、違う意味でだけど」

それに過去形にされた私に、どうしろと言うのか?
今、この瞬間にだって、過去形にされた。

「・・・で、カミングアウトしたわけだけど?」
「おい、おい・・・結婚したばかりだよ」

別に彼を誘惑しようとは思っていない。
それは彼だって同じだろう。
だからこそ、平然とカミングアウトできたはずだ。
まぁ・・・それはそれで寂しいものを感じるが・・・。

「冗談よ、冗談!」
「・・・まぁ、ちょっとは期待したけどな」
「もぉ、バカなこと言わないの!」

お互い、何も進展しないことは分かっている。
だからこそ、艶かしい話のひとつもできる。

「ほら!奥さん・・・呼んでるわよ」

彼の背中を熱い視線で見送る。

「あはは・・・私は別に好きじゃなかったのにね」

過去形とは言え告白されて、多少気持ちが高ぶっていた。
そのせいだろうか・・・錯覚を起こしているようだった。

「さぁ!・・・気持ちを切り替えて行くわよ」

目の前に、草食動物が群がっていた。

(No.359完)

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[No.359-1]好きだった

No.359-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「好きだったよ」

また、このセリフを聞いた。
これでもう、何回目になるのだろうか・・・。

「今言わずに、もっと早く言ってよ」

結婚披露宴の二次会に来ている。
披露宴には新郎側の関係者として出席した。

「それなりにアプローチはしてたんだよ」
「全然分かんないし!」

まったく、最近の草食系男子と来たら・・・。
まるでアプローチという言葉の意味を分かっていない。

(もっと、ガツガツ来てくれなきゃ!)

「そうか?それなりに行動してたけど」
「・・・それって遠回しに、私が“鈍感”って、言いたいの?」

反論した割には、思い当たる節がある。
もちろん、彼の行動ではなく、“鈍感”についてだ。

「・・・まぁ、別にいいけど」

確かに鈍感な所がある。
何がどう・・・具体的な何かがあるわけじゃない。
ただ、いつも結果的にそうなっている。

“好きだった”と過去形になるわけだから。

「何だよ、急にしおらしくなって」
「いつも過去形なんだよね、私って・・・」

カミングアウトされるのは、いつもこんなシチュエーションだ。
お酒と幸せの力が男性をそうさせるのだろうか。

(No.359-2へ続く)

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[No.358-2]桜

No.358-2

「だから、大丈夫!」

ひとりでしゃべって、ひとりで結論付けていた。

「散ることもないし、折れることもないから」
「・・・だから、だから・・・私は大丈夫・・・」

桜の話がいつしか、“私”に変わっていた。
・・・というより、最初から自分の話をしていたように思える。
その時、列車の到着を告げるアナウンスが流れ始めた。

「来ちゃった・・・ね」

彼女が乗り込む列車がホームに近付いて来た。

「桜に負けないように、私も頑張るから」

今までの話のつじつまが合ってきた。
彼女が大学に通うために、ふるさとを旅立つ。
それと同時に、僕たちの遠距離恋愛が始まる。

「無理するなよ」
「いつになく、やさしいじゃん・・・」

遠距離恋愛の始まりは僕たちにとって春の嵐なのかもしれない。
これから吹き荒れる風や雨に晒されることになるだろう。

でも、この桜のようにきっと大丈夫だ・・・そう信じている。No358
(No.358完)

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[No.358-1]桜

No.358-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「相当、荒れたようね」

昨日の暴風雨の爪あとが、いたる所に残されていた。

「傘も、ほら・・・」

バラバラになった数本の傘が、更にその凄さを物語っている。
でも、今この時、この場所でする話ではない。

「桜は・・・大丈夫だったようね」

言われてみればそうだ。
あれだけの暴風でも花が散るどころか、逆に咲き誇っている。
もちろん、枝も折れてはいない。
桜を見る限り、まるで何もなかったかのようだ。

「今、開花時期でしょ?ちょっと心配してた」

心配?・・・桜よりも、僕らのことの方が心配だ。

「意外に強いんだね、桜って!」

確かに意外だった。
けど、事実、散ってもないし折れてもいない。

「大きな風に吹かれても、大雨に降られても平気だよ」

何となく、表現に違和感を覚えた。

(No.358-2へ続く)

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ホタル通信 No.118

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.174 心地よい
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

久々に実話度100%の話です。語り手(小説上の牽引役)は設定上、男性ですが、作者であるかどうかは伏せさせて頂きます。これは、100%のお決まりのルールと言うことで

実話度100%ですから、登場人物の性別以外は、書いてある通りそのままです。
話の主軸は、食べ物の好き嫌いですが、単にそれだけではありません。チーズが嫌いだから、チーズに見た目が似ている食べ物も食べれなくなる・・・前半はそんな話です。
ところが後半で、牛乳に見た目が似ているカルピスは大丈夫と言う話が展開し、でも、豆乳はダメ・・・なにがなんだか分からない状態になっています。

趣味が合ったり、考え方が似ていたり、俗に言われる“馬があう”きっかけは数多くあると思います。食べ物の好き嫌いもそのひとつでしょう
ただ、今回の話は、嫌いな食べ物が同じだから馬が合うのではなく、言わば“嫌いな理由”に対して馬が合います。
会話が弾んだのは言うまでもありませんが、それが何とも心地よく感じたことから小説が生まれました。

では、どうして心地よく感じたのでしょう・・・
よくよく考えれば、それこそかゆい所に手が届くような会話のキャッチボールをしてくれたせいかもしれません。
背中がかゆい時、「もっと左・・・行き過ぎ・・・ちょっと右・・・そこ!」ってことがありますよね?きっと、これと同じなんですよ。
No118
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[No.357-2]スク-ルバッグ

No.357-2

「なにが出てくるやろかぁ~」
「自分のバッグやろ!」

つい、ツッコミを入れてしまった。

「せやかて、色々入れてるから、自分でも分からしません」
「おいおい・・・」

でも、その言葉通り、ゴソゴソが止まらない。
本当に何が出てきてもおかしくない雰囲気だ。

「・・・んっ?」
「えっ!なになに・・・」

奈々美(ななみ)の手が止まった。
何かを掘り当てた・・・いや、見つけたらしい。

「100円、見っけ!」

前言撤回だ・・・本当に掘り当てたようだ。

「なにが出てくるかヒヤヒヤするよ」
「それに、これも見つけた」

まるでトレージャーハントしているように見える。

「今度は何、見つけたの?」
「これ、覚えてはる?」

奈々美の手に握られているもの、それは・・・。

「それ・・・って、なに?」

全く記憶にない上、ラッピングされており、中身も分からない。

「チョコレート、去年あげそこねたけど」
「なんだぁ!それじゃ、覚えてないわけだ・・・ん?」

・・・って、ことは・・・。

(No.357完)

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[No.357-1]スク-ルバッグ

No.357-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「いつも大変だな」

奈々美(ななみ)が、バッグを抱えている。

「そう?うちはあんまり、大変やと思わへんけどな」

ひとつは普通と言えば普通のバッグだ。
そんなに大きくもない、淡いピンク色をしている。

「でも、そのバッグ・・・重そうだよ」

もうひとつのバッグを重そうに抱えている。

「それって、スクールバッグ・・・でいいのかな?」

中高生が持っている、それとよく似ている。

「そやね・・・確かに、それらしきコーナーで買ったわ」
「気に入ったの?」
「うん、実用性高そうやし」

シンプル・イズ・ベスト・・・そんな言葉が似合う。
まさしく収納するためのバッグであり、おしゃれは二の次だろう。
でも、初々しさを感じる、スクールバッグゆえに。

「それはそうと、何が入ってるの?」
「そんなん、女子に聞くんや?」

(・・・し、しまった!)

軽はずみな発言だった・・・そのせいで思い切り睨まれた。

「い、いや、その・・・ごめん!」
「あはは、冗談やんか、じょ・う・だ・ん!」
「そんなぁ~」
「せっかくやから、一緒に見よか」

そう言うと、スクールバッグをゴソゴソし始めた。

(No.357-2へ続く)

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[No.356-2]誘導メール

No.356-2

あえて狙ったものは、ふたつある。
ふたつとは言わない・・・ひとつだけでも反応があれば良い。

「いよいよ、今日だな・・・」

それに来るなら、そろそろ時間だ。
その時、メールの着信音がなった。

(き、来たぁ!)

思った通り、それも思った時間にメールが届いた。
他人からすれば、さながら予言者のように見えるだろう。
けど、自分としては“そうなるように”仕掛けた・・・言わば誘導した。

『誕生日おめでとう!素敵に歳を重ねてくださいね』

(よし、よし・・・狙い通り!)

もうひとつの狙い・・・・。
それは、あわよくばプレゼントのひとつでも貰おうとしたことだ。
別に高価なプレゼントを期待しているわけではない。
駄菓子程度でも十分だ。
実際、たまに限定品らしきお菓子を送ってくれる。

『ありがとう!お互い素敵に歳を重ねて行こうな』

浅い関係でも気に掛けてくれたことが嬉しかった。
確かに、そうなるように仕掛けたとしても・・・だ。
多少、後ろめたい部分もあるが、メールを強制したわけではない。
あくまでも、知華(ちか)の意思なんだ。

(とにかく、誘導成功!ということで・・・)

『そうよね!ずっと一緒に歳を重ねて行ければ』

あれ?・・・気のせいだろうか・・・。
No356
(No.356完)

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[No.356-1]誘導メール

No.356-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
あえて、こうなることを狙った。

『最近、どうですか?』

知華(ちか)から久しぶりにメールが入った。
主語がないので、何がどうなんだか、正直答えにくい。
でも、恋人同士ではないわけだから・・・。

『最近?相変わらず仕事が忙しくて』

無難な返事だろうし、事実でもある。

『私も・・・バタバタしている』

知り合いに毛が生えた程度の仲だ。
たまに近況報告をきっかけにして、何度かメールが交わされる。

『それと最近、腰が痛くて』

最近、急に腰が痛み出してきた。
寒さのせいだろうか?それとも歳のせいだろうか・・・。
そんな続きのメールを打とうとしていた時だった。

(・・・まてよ)

よからぬ考えが頭に浮かんだ。

「歳・・・そういえば誕生日、もうすぐだよな」

後数日で、1つ歳をとる。
この情報をメールに意図的に混ぜてみることにした。

『後、3日で・・・歳になるし、腰が痛くもなるさ!』

メールはここで途絶えた。
いつもの通りだ、別に気にはならない。
それよりも、3日後が楽しみだった。

(No.356-2へ続く)

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ホタル通信 No.117

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.99 パラレルワールド
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

人物設定は事実ではありませんが、シチュエーション的にはほぼ事実です。

通学や通勤で、いつも顔を合わせる人って居ますよね?
例えば電車。いつもと同じ時間に、同じ車両に乗ることが多くなるため、他人もそうであれば、必然的に顔を合わせるメンバーが決ま
ってきます。
たまに、その場所に本来居るべき人が居らず、代わりに見ず知らずの人が居たりすると、妙にその人に対して厳しい視線を送っ
たりします(笑)

電車と全く同じとは言えませんが、自転車でもそれこそ徒歩でも、見かける顔は案外決まっています。ですから、時間帯をほんの少し変えるだけでも、新鮮な気分になれます。
それを大袈裟に、“パワレルワールド”と表現し、小説のタイトルや話の主軸に据えました。

後半のラスト近くに、朝の顔なじみとすれ違うシーンがあります。
実はこれが小説を書くきっかけであり、これをラストシーンにしようと手掛ける前から決めていました
そこに朝のいつものシーンを付け加えていったのが、今回の構成になります。それと朝のシーンもほぼ実話なんですよ。

通勤や通学ですれ違う人たち。
その一瞬に感じることを小説に落とし込んでいく・・・結構多いかもしれません。
もともと冬のホタルはそんな小説の集まりなんですよね。大きなイベントから話を作ることは少なく、良い意味で「どうでもいいこと」を話の主軸にしています
No117
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[No.355-2]福山さん

No.355-2

「・・・妬いてる?」
「べ、べつに・・・」

それは本当だ。
やきもちを焼く以前の問題だ。
戦う前に戦意喪失・・・言わば“白旗”をあげている。

「素敵だと思うことと、好きだということは違うのよ?」
「なんだよ、それ・・・フォローのつもりか?」
「まぁ、男性にはわかんないと思うけど」

いや・・・素敵だと思うのだから、それはイコール、恋だ。
“愛”と言っても、言い過ぎではないだろう。

「大袈裟なんだから」
「目の前で、福山さんが素敵だと言われたら誰だって・・・」

子供と思われても仕方がない。
実際、高校生ならまだ子供だろうし・・・。
少なくても俺には佐緒里(さおり)の気持ちが理解できない。

「女子はそんなものなの、いずれ分かるから」
「できれば今、知りたいけどな」

福山さんの名前を出された時点で、なんか負けた気分になる。
付き合っている俺って一体・・・。

「ねぇ今度、福山さんのライブに行かない?」
「嫌がらせのつもり?それとも荒療法?」
「もぉ・・・ほんと困った人ね・・・」

そう言うと、一呼吸おいてから、僕をまっすぐ見つめて口を開いた。

「素敵な人を、その人よりもっと素敵な人と一緒に見たいだけよ」No355
(No.355完)

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[No.355-1]福山さん

No.355-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
どうあがいても、勝てないところがある。

「やっぱり素敵よね!・・・福山さん」

佐緒里(さおり)がコンビニ置かれた雑誌を手に取っている。
そこには彼女が好きなその“福山さん”が表紙を飾っていた。

「ねっ!そう思うでしょ?」

確かに男の目から見ても二枚目だ。
それに歌手としても俳優としても成功している。

「・・・まぁ・・・な」
「なによ!?気の無い返事しちゃって」

別にそれらをやっかんでいるからではない。
それに、同じ土俵で張り合えないのは、紛れも無く事実だ。
でも、自分の中で、そこはあまり重要視していない。

「他にも居るだろ?ジャニーズ系とか・・・」

ジャニーズ系になら俺が勝てる・・・ことは到底有り得ない。
間違いなく、ボロ負けだ。
けど、チャンスが全くないわけでもない。

「だって、歳が近いんだもん!」

福山さんにどうあがいても勝てないところ・・・それは年齢だ。
単に歳を重ねるだけの年齢を言っているのではない。
なんて言うか・・・。

「単に年上が好きだからじゃないのよ」

言われなくても分かっている。
だからこそ、勝てる気がしない。

(No.355-2へ続く)

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[No.354-2]わらしべ長者

No.354-2

読み方はすぐに解決できた。
ただ、せっかくなので他の地名もぼんやり眺めていた。
その時・・・。

「卒業した学校が目に入った?」

確かに実家の近くの高校が目に入った。
でも、卒業した学校ではない。

「卒業した学校じゃないんだけど・・・」
「思い出したんだ・・・卒業した学校を?」

だから、当初は卒業した学校を探す目的はなかった。
あくまでも、つながりの中で、そこにたどり着いた感じだ。

「うん、それで検索してみたら」
「・・・あったんだ、ホームページが」

そこには懐かしさと、随分と変わってしまった部分が共存していた。

「それで、結構夢中になって色々クリックしてたら・・・」
「あれ?なんでホームページ見てるんだっけ?」
「そう、当りぃ!」

あのニュースがなければホームページを見ることもなかっただろう。
事実、今の今まで見ようとも探そうともしていなかった。

「現代版、“わらしべ長者”って感じね!」
「わらしべ長者?意味が全然違うよ」
「“つながり”とか“つながる”という面では同じだと思うけど・・・」
「それが・・・ね」

わらしべ長者の意味は知っているつもりだ。
だから、あえてこんな表現をした。

「実は続きがあるんだ、この話に」

(No.354完)

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[No.354-1]わらしべ長者

No.354-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・あれ?なんでホームページ見てるんだっけ?」

とりあえず、独り言だった
後で考えればきっかけは、ひとつのニュースだった。

「頭、大丈夫?」
「失礼ね!」

昨日の独り言を、今度は目の前の人に話した。
確かにこれだけを聞くと、そう捉えられてもおかしくはない。

「だって、記憶喪失みたいなこというから」

記憶喪失とまでは行かないものの、中らずといえども遠からずだ。
無意識の内にホームページを見ていたのは間違いない。

「とろこで何のホームページ?」
「自分が卒業した学校・・・あっ!高校のね」

まず、ホームページがあることに驚いた。
もちろん、私が卒業した時にはホームページはなかった。

「見たいから見たんでしょ?」
「そうなんだけど、始めから見ようとは思わなかったんだ」
「う~ん・・・良く理解できない話ね」
「ごめん、あのね・・・」

一から話すことにした。
きっかけはひとつのニュースであり、それから連鎖が始まった。

「私の実家に近い住所が、テレビから聞こえてきたの」

場所のイメージはできるものの具体的な位置を知りたくなった。

「・・・でね、ネットで地図見てたら・・・」

読み方を忘れた、ある地名が目に飛び込んできた。

(No.354-2へ続く)

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ホタル通信 No.116

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.106 イルミネーション
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

小説上の季節は冬、それもクリスマスシーズン・・・と、言った所でしょうか。

イルミネーションに関しては、一般住宅の飾り付けをきっかけにして、街角のイルミネーションに繋げました。
北海道に住んでいたこともあるので、全体的な雰囲気や設定は“ホワイトイルミネーション”をイメージしています。
この時点では言わば背景しかなく、登場人物や話の主軸となるものは何もありませんでした。

登場人物は適当に決めて、まずは書き始めました。これぞ、略して“冬ホタ流”です。
登場人物に話を進めてもらい、そこから何かを作者が感じ取るのがいつもの書き方です。時期が時期だけに独り身には辛い話になったのは自然な流れだったと思っています

ただ、話は進めやすかったのですがラストが決まらず、かなり悩んだ記憶があります。
特に後半に「どうして光に魅せられるのかな?」というセリフを持ってきたせいで、この答えが出ずに苦労しました。内容を変えてしまおうか・・・とも考えましたが、2人が会話していたらきっとこんな展開になっていたと考え、あえて大いに悩むことにしました。
・・・で、出てきた答えが・・・そうなんです、小説と同じで「ええぃ!こうなったら・・・」と、かなり強引にオチを付けてみました。

さて、そろそろ締めくくりましょう。
話の展開が暗くて、悲しいものであっても、決して悲しい終わりがないのも“冬ホタ流”です
こればブログのサブタイトルとして、今でも守り続けています。
No116
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[No.353-2]ひろめ

No.353-2

「今なら逆におしゃれな名前かもしれないな」

今の時代、逆に“ひろ子”の方が普通過ぎるくらいだ。
“ひろめ”の方がインパクトはあるし、何となく艶かしい響きもある。

「随分、都合の良いこと言うよね」
「当時の彼女の気持ち、考えてあげたら?」

「・・・分かってるよ」

ノートに書かれた名前を見た時、ことの重大さに気付いた。
これを他の男子に見られたら、余計にエスカレートする・・・。
子供ながらそう予感した。

「けど・・・今までのことがあったから」
「ノートに落書きしたんだよ、わざと・・・名前の部分に」

他の男子の目に止まる前に、いわば証拠は消し去った。
もちろん、彼女からはますます嫌われたことは言うまでもない。

「それが気遣いとは思わないもんね、普通は」
「とにかく、いいとこあるじゃない!」

それに徐々に、イジられることも少なくなって行った。
飽きっぽさもまた小学生ならではだった。

「話は戻るけど、私がなぜ彼女の気持ちが分かると思う?」
「・・・美保ではなく、美保“子”だからだろ?」

似た経験をしたからだろう・・・“子”が何となく不自然に聞こえる。

「私の場合は“姓”の方だけどね」
「でも、もうすぐそれも想い出に変わるかも知れない」

明日、僕達は結婚する。

(No.353完)

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[No.353-1]ひろめ

No.353-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
今では逆に普通の方が目だってしまうだろう。

「・・・その気持ち分かる」

美保子(みほこ)が“ウンウン”とベタにうなづいている。

「そんなもんかな」

最近の子供の名前は読み難い・・・そんな話をしていた。
その時、あることを思い出した。
小学生の時、クラスに変わった名前を持つ女の子がいた。
名前と言っても、姓名の“名”のことだ。

「どうせ、からかっていたんでしょ?」

ある日、その子のノートに名前が書いてあるのを見た。
もちろん、自分のノートだから自分の名前を書いている。
ただ、良く見たら・・・。

「まぁ確かに今で言えば・・・イジってたな」

ノートに“ひろ子”と書いてあった。
本当は“ひろめ”が彼女の名前だ。

「想像するに、“ひらめ”って言ってたんでしょ、違う?」
「よ、よく分かるな」

そう、魚の名前に似ていることで、随分からかったことを覚えている。
これがもし“ゆきめ”だったとすれば、こうはならなかったはずだ。

「大体、男子なんてそんなとこ突いてくるじゃない」

僕を含めた男子の言動が“ひろ子”と書かせたのは間違いない。

(No.353-2へ続く)

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