[No.360-1]ふたつの月
No.360-1
登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
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「たまに妖しく光るよね・・・月って」
今夜の月は、妖しいという言葉が良く似合う。
やや赤みがあり、霞が掛かったようにぼんやり光っている。
「何か起こりそうね、今夜は」
全く根拠はないが、ドラマや映画でもお馴染みのセリフだ。
「映画と言えば、SF映画でこんなシーンがあるんだけど・・・」
彼が映画のワンシーンを語り始めた。
ある男がうっそうとした森の中で意識を取り戻す。
自分は誰なのか、なぜ今ここに居るのか・・・分かっていない。
とりあえずその男は歩き出すことにした。
何時間も歩いた視線の先に、一際大きな光が見える。
ようやく、この森を抜け出すことができそうだった。
そして森を抜け、広がる大空を目の当たりにした時・・・。
(ゴクリ・・・)
「漫画みたいな喉の音だな?」
「だって、話の続きが・・・」
その男は何をみたと言うのだろうか。
「ねぇねぇ、早く続きを!」
「そうせかすなよ・・・で、大空に・・・」
「月が2つあったんだよ」
「月が2つ?・・・あっ、そうか!」
映画ではその男がどこに居るのか、あえて説明はなかったらしい。
でも、そのシーンだけで何を言いたいのか、分かる。
「少なくとも地球じゃないんだ・・・」
なんだが、空を見上げるのが恐ろしくなった。
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