[No.347-2]遅いメール
No.347-2
『・・・私も好きです』
メールの内容がガラリと変わり、そんな言葉で締められていた。
もちろん、“何を私も好き”なのかは不明だ。
「何書いたっけ・・・」
改めてどんな内容のメールを送ったのか、記憶をたどる。
けど、昨日の夕食さえ思い出すのに苦労する人間だ。
相当前のメールなんて記憶の隅にも有りはしない。
(ま、まずいな・・・)
「・・・いいや、考えようによっては・・・」
そう、チャンスでもある。
ある意味、どさくさに紛れてと言うか、勢いと言うか・・・。
そう考える間もなく、指が勝手に動いた。
『・・・僕もやっぱり好きだ』
“も”が重要だ。
相手が“私も”ときたからには、僕が何かを好きだと言ったはずだ。
さながら名探偵のごとく、返事をした。
それに万一の時には勘違いで済まそうと考えた。
その“何か”を動物とか食べ物に置き換えればいい。
本当は僕が好きなのは“何か”ではなく、はっきりしているが・・・。
『じゃあ、付き合ってください』
『もちろんだよ!』
これからバラ色か修羅場が始まることになりそうだ。
でも人生で一度や二度、こんなことがあっても許されるだろう。
『ありがとう、重いから覚悟しといてね』
重いのは彼女の想いではなく、荷物の重さだったことを後日知った。
(No.347完)
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