[No.346-2]パッセージ
No.346-2
「気持ちいいぞ!」
「いやよ、焼けちゃうから」
「じゃあ、俺だけ・・・」
そう言うとひとり夏の砂浜へ駆け出して行った。
「ほんと、子供なんだから」
遠くからでも何となく分かる。
彼のハシャギっぷりが・・・。
いつもの仲間たちは今日は居ない。
出逢ってから、初めてふたりきりで海にやって来た。
「こっちに来いよー!」
「だから、行かないってばぁ!」
恥ずかしくなるくらい、ありったけの大声で返事をした。
それでも、夏の海には十分とは言えなかった。
「ほらっ、よ!」
「わっ!あ、危ないじゃ?・・・あっつい!!」
彼が缶コーヒーを私に向けて放り投げて来た。
そして、そのまま砂浜に向かって彼が駆け出して行った。
「まったく、もぉ」
あの時とシチュエーションが似ている。
缶コーヒーの熱さが当時の記憶を呼び戻した。
遠くでハシャグ彼の姿をボンヤリ見ている。
その姿と元カレの姿が瞳の奥で重なった。
(No.346完)
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