[No.344-2]時計
No.344-2
当時、特に友達ともめた記憶はない。
そう考えると、時計がなくてもちゃんと出会えていたことになる。
「そもそも、時間なんて流れてなかったのかもしれないね」
「・・・えっ、あ、うん・・・」
友人の思い付きであろうその言葉に妙な納得を覚えた。
「ほら“後で空き地で”・・・程度で十分だったじゃない?」
その内、適当に人が集まって来る。
来るのが遅い・・・そんな話題なんて恐らく出なかったのだろう。
もともと集合時間が決まってないのだから。
「そうなると、時を・・・」
時を知る必要がない。
それに・・・。
「暗くなったり」
「駄菓子屋が閉まったり、どこかで母親の声がしたり」
「それに学校の放送が聞こえたら・・・」
「帰ればいいの家に!」
最後はふたり同時に声を出した。
時計がなくても、勝手に時を知らせてくれるものは沢山あった。
「言わば他人の時間で時が流れていたように感じる」
「そうかもしれない・・・悪い意味じゃなく」
「・・・今の私たちは、悪い意味だけどね」
友人が時間に追われる毎日を皮肉っぽく表現した。
「けど、子供の頃の名残は今でもあるわよ」
友人は時より、お腹の虫を威勢よく鳴らす。
(No.344完)
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