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2012年3月

[No.352-2]針に気をつけて

No.352-2

捨てられたと聞いた後、彼女としばらく連絡が取れなくなった。
今思えば、正確には3日間・・・・ということになる。

「あの時、探していたんだ?」
「言ってくれれば・・・」
「せやかて、迷惑は掛けられへん!うちらの問題やし」

菜緒(なお)と彼の間に何があったのか、知ろうとは思わない。
けど、あの雨の中ましてやゴミの中・・・考えると胸が苦しくなる。

「辛いことも楽しいことも、半分づつの約束だろ?」
「・・・ごめん」
「まぁ・・・それにしても」

目の前の彼ら・・・キイロイトリは、もはや黄色ではない。
コリラックマも、リラックマに雰囲気が似てきた。

「せいじゅうろうは・・・あまり変化ないな」

もともと茶色のせいか、全体的な汚れはあまり目立たない。

「ただ・・・これは・・・ぷっ!」
「わ、笑ったら失礼やん!・・・て、ぷっ!」

その存在だけで十分笑わしてくれる、せいじゅうろう。
それなのに今は輪を掛けて・・・。

「背中のチャック開いてるし」

もともとそんな構造ではない・・・どうやら破けてしまったらしい。
けど、逆にそれが設定上の“本物感”をかもし出している。

「脱ごうとしたんやろか」
「確かに・・・設定では着ぐるみだしな」

いつものごとく、バカバカしいことを真剣に考えた。

「縫っちゃおうか?」
「そやな・・・でも、気いつけてな」

その気遣いは俺でなく、せいじゅうろうに向けられたものだった。

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[No.352-1]針に気をつけて

No.352-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「こいつらにも迷惑かけたな」
「あの時は大変やったね」

菜緒(なお)が恐らく、目の前の彼らを代表して返事をした。

「だろうな・・・結局、汚れは取れなかったんだ?」
「うん・・・頑張ったんやけど、あかんかった」

以前、リラックマ、コリラックマ、キイロイトリをセットで買った。
どれも片手で持てるくらいのサイズのぬいぐるみだ。
買ったのは、菜緒にねだられたからではない。
ふたりで想いを共有できるもの・・・それが欲しかったからだ。

「でも、よく探したな」
「せやかて、うちらの大切な仲間やもん!」

仲間とはもちろん、ぬいぐるみのことだ。
他人に聞かれると間違いなく、不思議な顔をされるだろう。
小さい子供が発言しているわけではないのだから・・・。

「・・・だったな!大切な仲間だよな」

菜緒と住んでいる人間の“彼”に、仲間が捨てられた・・・。
ある日、そんなメールが届いた。
ただ、捨てられた背景は、あまり詳しく聞かされなかった。

「随分、探したんやで」
「そう言えばどこに居たんだっけ?」
「近所の空き地のゴミの中」

彼を問い詰め、自宅の窓から放り投げたことを白状させた。
彼らが居なくなってから、3日後のことだったらしい。

「確か・・・その頃ずっと雨降ってたよな?」

放り投げた場所は、いわゆる放置ゴミが散乱している場所だった。
そのためか、逆に持ち去られることがなかったらしい。
ただ、雨と周辺のゴミのために、かなり汚れる原因にはなった。

「そやで!発見した時も・・・やけど」

(No.352-2へ続く)

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ホタル通信 No.115

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.29 ノスタルジア
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

前回のホタル通信に引き続き、無責任さと完成度の低さが目に付く作品です。

さて、この作品、数有る“冬のホタル”の中で唯一、登場人物として母親という設定が登場しています。それも、親子2代にわたってです
前半は牽引役である私「A」と小説には登場していませんが、私の母親「B」で話が進んで行きます。後半になると今度は私「A」が母親になり、自分の娘「C」が登場し、話が進んで行きます。
つまり、私の母「B」と私「A」自身が母親になったために、親子2代という設定になります。
現在は、場面の変化や時間の経過を表すマークとしてを挿入するようにしていますが、当時は完全に読者の皆様を、突き放すような作りでした。

実話度は低めですが、全くの創作でもありません。
話のきっかけとなるものは複数あり、部屋の片付け、アルバム、デジカメ、人形などの“点”を線にしたところから始まりました。
小説のように、数々の写真に人形が写ってはいなかったものの私の手に握られていた人形がとても印象的だったため、このような話を作ってみました。

後半の4行目に「・・・内緒でその人形を・・・」のくだりがあります。
自分がしてきた行動を通じて、自分の母親の行動を知った・・・これが後半のポイントです。
イタズラ心もあるのですが親子をつなぐ絆として、その人形に役割を与えてみました

あなたの写真にもきっと写っているはずです。
あなたが笑顔になれるなら・・・と、そっと忍ばせてあるものが。
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[No.351-2]孤独のかげ

No.351-2

「友達や彼氏と暮らしてたとか?」

それを“ひとり”と表現するのはどうかと思う。
けど、自分の力で生きることを“ひとり”と表現した可能性はある。

「違うよ、うちひとりだけ」
「ペット・・・じゃないよな」

言いかけて自分で否定をした。

「でも、ある意味、近いかもしれへん」
「近い?人間じゃないってこと?」
「そやね~人間のようで人間じゃない」
「それって・・・」

まさか、こんな話をしておきながら、笑いで落とすつもりだろうか?
でも・・・考えられる。
彼女は、生粋の大阪人だからだ。

「妖怪人間とちゃうよ~!」
「えっ!・・・あはは、だよね」

笑いを取るまでは行かないが、暗くなりがちな話を暗く語らない。
それが彼女の“強さ”なんだ。

「じゃぁ、答えは?」
「・・・かげだよ、か・げ・・・孤独なかげ」
「いつもうちを、支えてくれてたんよ」

それは、いつの時も彼女に寄り添い、そして彼女を裏切らなかった。No351
(No.351完)

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[No.351-1]孤独のかげ

No.351-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「うち、高校は1年間しか行ってないやん?」

彼女はたまに返答に困る話をしてくる。

「・・・うん、なんとなく知ってる」

こう答えると同時に僕を指差した。

「・・・僕?」

高校中退者を目の前にして更に答えに困る。

「まぁ・・・一応、卒業したけど」
「ふ~ん・・・」

何とも言えない微妙な返事だ。
ただ、羨ましいとか、ひがんでいるわけではないようだ。
それは表情が物語っている。

「中退した後、ひとりで生活してきたんやで」

他人が聞けば恐らく“ひとりで?”と聞き返すだろう。
でも、僕は聞き返す必要はない。
その理由を知っているからだ。

「寂しかった?」
「いいや、ひとりやなかったし」
「ひとり・・・じゃない?」

一瞬、謎掛け風な答えに戸惑ったが、すぐに持ち直した。

(No.351-2へ続く)

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[No.350-2]どしゃぶりの雨の中で

No.350-2

「女子とは思えない行動ね」

確かに小学生の男子並みの行動だ。

「その発言、小学生の男子を敵に回すよ!」

とは言え、わんぱく少年そのものだ。

「それで?」
「・・・それで?って言われても・・・話は以上だけど」
「嘘付いてない?」
「嘘?・・・全部、ほんとだよ!」

事実、どしゃぶりの雨に降られて、それはもう・・・大変だった。
多少の脚色はあったとしてもだ。

「さっき話の最後になんて言ったっけ?」
「最後?・・・“もういいや”だけど」

明らかに何か言いたそうな顔をしている。

「“もういい”のは、雨に濡れること?それとも恋?」
「・・・そ、それは」
「私もね、したことあるんだ、同じこと」

聞けば、あえてどしゃぶりの雨を選んだと言う。
失恋の痛手をもっと自分を惨めにさらすことで乗り越えようとした。

「雨と一緒に苦しみも」
「・・・流れてしまえ・・・か・・・」

前の恋を今でも引きずっているのは事実だ。
無意識にどしゃぶりの雨に降られることを選んだのかもしれない。

「いずれにせよ、雨は避けるだけじゃなくて」
「たまには降られるのも良いかもしれない」

ただ、少し心配になった。
雨に苦しみや悲しみが混じっていることを考えたら・・・。

「大丈夫よ!地球には浄化作用があるからね」No350
(No.350完)

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[No.350-1]どしゃぶりの雨の中で

No.350-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「演歌のタイトル?」
「・・・違うよ」

本題に入る前に、少しだけ勘違いさせたまま話を続けることにした。

「じゃあ何よ・・・洋楽の邦楽タイトル?」
「また、変化球で来たわね」
「もしかして、今流行のAK・・・」

面倒になる前に、本題に戻すことにした。

「ごめん、ごめん、曲のタイトルじゃなくて」

単なる自然現象の“雨”に他ならない。
ただ、どしゃぶりを“単なる”という言葉で片付けて良いかは別だが。

「要は激しい雨ってこと?」
「そう、それそれ!」

1週間ほど前、急な大雨に降られた。
最初は小降りだったことが、判断を誤らせた。
大丈夫と思い、自転車を漕ぎ出して、少ししたら・・・。

「どしゃぶりになってしまったわけね?」
「うん、それに傘、持ってなかったし」
「そんなのコンビニに行けば・・・」
「行けたら行ってたわよ」

鶏が先か、卵が先か・・・的な話になるだろうか?
どしゃぶりのせいで一瞬にして、ずぶ濡れになった。
だから、コンビニに立ち寄るのさえ恥ずかしい状態になっていた。

「行こうか行かまいか迷っていたら」
「ますます、ずぶ濡れ?」

結局、もっと悲惨な状態に陥った。
まるで服を着たまま靴を履いたまま、お風呂に入ったようだった。

「それで、“もういいや!”と思って」

どしゃぶりの雨の中、自転車を滑走させた。

(No.350-2へ続く)

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ホタル通信 No.114

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.27 ひまわり
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

この話は数ある冬のホタルの小説の中で、一番無責任な小説です。何が無責任かと言うと・・・

初期の作品と言うこともあり、明確な方向性はなかったものの、“SFやファンタジーにはしない”ことは何となく決めていました。
この話にそれらの要素を含ませてはいませんが、読み終わった後に「・・・で?」という感想が残ります。
今では不思議系の話でも、不思議なまま話が終わらないように注意していますが、この話は不思議なまま終わっています。
結末に対して考えるすべ・・・伏線とかヒントも書いていませんしこれを無責任と言わずして何と言いましょうか

実話度はゼロですが、話のきっかけが全くなかったわけではありません。
ひまわりはポインセチアと共に、当ブログで度々登場する植物です。両方とも何かと縁があり、これらにまつわる話も自然に多くなりました。この話は、その第一弾と言うべき作品です。

それでは内容に触れて行きますね。
前述した通り、伏線もなにもない無責任小説なので、まずは読んだ通りです。ですから、一番の謎である「ひまわりを送っていた人」の設定をしていません。
ただ、亡くなった義理の父が、ひまわりが好きだったことがありそれをイメ-ジして書きました。そうなると天国から・・・ということになるので、あえて「無責任で行こう」と考えました。

ひまわりの種、そしてその種がまた花を咲かせるくだりはその亡き父が残してくれたものとして、遠回しに表現させています。
自分の中でひまわりは元気の象徴です。
一方で、色々と思い出すことが多い花であり、フッと寂しさを覚えることもあります。
No114
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[No.349-2]眼鏡で背伸び

No.349-2

だから、僕は軽く嘘を付いたことになる。

那央(なお)は、“度”が合わなくなったと聞いたはずだ。
僕はそれを分かってた、だから・・・。
“自分に似合わなくなった”と答えるべきだった。
“度”ではなく、あくまでもファッション的な好みによる理由だと・・・。

『ちゃんと合う眼鏡、買うんやで』
『ちゃんと合う眼鏡、買うよ』

オウム返しに近い、返事をした。
軽い嘘を付いている状態でも、話は成立している。

『今度、見せてな』

普段は眼鏡を掛けていない。
だから、あえてお披露目する必要があった。

『分かった、見せるよ』

実はファッション的な好み・・・の先にも理由があった。
でも、買い替える本当の目的を話す必要はないだろう。
買い替えることには違いがないのだから。

「少しは格好よく見えるかな?」
No349
(No.349完)

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[No.349-1]眼鏡で背伸び

No.349-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
『今、眼鏡屋さんに居るんだ』

那央(なお)からのメールに返信した。

『そうなんや、合わなくなったん?』

少しだけ、返事に間を作った。
軽い嘘を付く必要があったからだ。

『うん、合わなくなって』

眼鏡屋を訪れた理由は簡単明白だ。
まぁ、そんなに大袈裟に言うものではないだろうが・・・。
理由なんてたかが知れている。
新しく作るか、買い替えるか・・・概ねそのどちらかだろう。

『やっぱりそうなんや』
『それで買い替えようと思って』

言葉の上では、嘘を付いていない。
確かに買い替え目的で眼鏡屋を訪れている。
それに“合わない”から買い替えようと思った。

ただ、“合わない”のは那央が思っているそれとは違う。

(No.349-2へ続く)

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[No.348-2]女友達

No.348-2

「分かってるなら、直さなきゃ」
「苦手なんだよ、女・・・」

言い掛けて、ハッと口を閉じた。
目の間に居るのも、紛れもなく女子だ。
ポジション的には単なる知り合いであっても矛盾が生じる。

「なによ?途中まで言い掛けて」
「・・・いや、まぁ、苦手なんだよ、会・・・」

言い掛けて、また口を閉じた。
苦手なはずの会話が活発に行われている今この瞬間。
これまた矛盾が生じてしまう。

「・・・さっきから言い掛けてばかりじゃない」

うかつに返答できなくなった。

「と、とにかく緊ちょ・・・」
「・・・緊張・・・するってこと・・・?」
「えっ!?」

“じゃあ、私なら緊張しないわけ?”と顔に書いてある。
裏を返せば、もちろん・・・。

「ふ~ん、私って“女子”とは見られてなかったんだ?」

どうやら最初から感づかれていたようだった。

「そんなことないよ」
「いいよ、別に・・・でもこれで良く分かったでしょ?」
「・・・なにがだよ?」

表情が怪しい・・・いや、俗に言う“したり顔”で俺を見つめる。

「紹介した女子、色んなタイプが居たと思わない?」
「あぁ、確かに性格はみんな個性的だったけど・・・!?」

この後、女友達から告白された。

(No.348完)

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[No.348-1]女友達

No.348-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「結局、みんなダメにしちゃったんじゃない!」
「うぅ・・・」

当たっているだけに反論は小さなうめき声だけになってしまった。

「いつもアドバイスしてるでしょ?」

中学時代から知っている女子が居る。
自分の中では単なる“知り合い”程度のポジションだ。
友達と呼べるほどの関係でもない。
ただ、適当な言葉が見つからず、とりあえず“女友達”にしている。

「仕方ないだろ」

別の見方をすれば見合い写真を押し付ける親戚のおばさんだ。
テレビで似たようなシーンを何度も見かけた。

「全然、仕方なく思ってない!」

卒業を前に、高校3年間の集大成が“今”行われている。

「思ってるよ、でも・・・」

恋のキューピット役をかって出てくれたことには感謝している。
何度も彼女を紹介してくれたからだ。

「・・・でも、なによ?」
「いつも自然消滅するんだ」

原因は何となく分かっている。

「クールに惹かれて、本当にクールだから引かれる・・・でしょ?」

謎掛け風の言葉でも、漢字は目に浮かぶ。

「言っとくけど、クールって・・・」
「分かってるよ、本来の意味じゃないってことだろ?」

早い話、俺は無口だった。

(No.348-2へ続く)

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ホタル通信 No.113

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.170 窓に映る私
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

この話はメールのやりとりから生まれた内容を、設定等を変えて作りました。

話の主軸となるのは冒頭の言葉通り“心理テスト”です。ただ現実では主軸ではありませんでした。
内容は省略しますが、メールの中で“どの席を選ぶか”的なやりとりが行われ、それが何となく心理テスト風だった・・・これが話の発端です

“窓際を選ぶと自分に対する興味度が分かる”
これはメール中で書いた内容です。でも、その答えをメールでは明かしませんでした・・・で、その問に対する答えがこの小説になるわけです。
尚、自分がそう思っているだけの内容ですから、決して本物の心理学ではありませんのでご注意を

窓があると、つい外を見てしまう。
景色が綺麗だから見てしまうこともあれば、特にすることがないので、外を見てしまうこともあるでしょう。授業中に外を見てしまうのは後者の方ではないでしょうか?
授業というすることがあるのに、することがない・・・早い話、つまらない時は、その“逃げ”として外を見てしまうと考えました。
だから、窓際に座った時“自分に対する興味度が分かる”としたわけですが、これだと余りにも単純すぎますよね。
後半「でも・・・どうして私を・・・」の部分から、それ以前より2年経過した話になっており、前述通り、単純さを解消するためにもう一工夫加えた部分です。
窓に映る私の表情を見ていてくれた彼・・・もしかして、ニヤケていた私が居たのかも?こんな感じで終わらせています

最後に「あの会場は、特に・・・だったからね」のセリフ。
“・・・”の部分に何が入るのか正直覚えていません。流れからすれば、特に“綺麗な窓”のような気がしますが、あえて伏せる必要もありませんよね。でも、本気で覚えていません(笑)
No113
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[No.347-2]遅いメール

No.347-2

『・・・私も好きです』

メールの内容がガラリと変わり、そんな言葉で締められていた。
もちろん、“何を私も好き”なのかは不明だ。

「何書いたっけ・・・」

改めてどんな内容のメールを送ったのか、記憶をたどる。
けど、昨日の夕食さえ思い出すのに苦労する人間だ。
相当前のメールなんて記憶の隅にも有りはしない。

(ま、まずいな・・・)

「・・・いいや、考えようによっては・・・」

そう、チャンスでもある。
ある意味、どさくさに紛れてと言うか、勢いと言うか・・・。
そう考える間もなく、指が勝手に動いた。

『・・・僕もやっぱり好きだ』

“も”が重要だ。
相手が“私も”ときたからには、僕が何かを好きだと言ったはずだ。
さながら名探偵のごとく、返事をした。

それに万一の時には勘違いで済まそうと考えた。
その“何か”を動物とか食べ物に置き換えればいい。
本当は僕が好きなのは“何か”ではなく、はっきりしているが・・・。

『じゃあ、付き合ってください』
『もちろんだよ!』

これからバラ色か修羅場が始まることになりそうだ。
でも人生で一度や二度、こんなことがあっても許されるだろう。

『ありがとう、重いから覚悟しといてね』

重いのは彼女の想いではなく、荷物の重さだったことを後日知った。

(No.347完)

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[No.347-1]遅いメール

No.347-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「う~ん・・・」

一通のメールを前に、しばらく腕組みが続いた。
別に難しいことが書いてあるわけではない。

「これ・・・いつのメールに対する返信だろうか?」

そうなる原因はいくつかある。
僕が送信メールをすぐに消してしまう習慣があること。
それにメールにタイトルを付けないこともそうだ。
そして何よりも・・・。

「相変わらず、智香(ちか)の返信は遅いな」

とは言え、明日の約束を求めるような内容ではない。
仮にそうなら、とっくに関係は破綻している。

送るメールは、主に僕の近況報告だ。
それに返信しなければならない内容はあえて含ませていない。
こうなることが分かっているからだ。

「でも返事がなきゃないで・・・」

正直、寂しい。

「とにかく」

今、目にしているメールは、送ったメールの返信には間違いない。

『確かにそれが大事なんだよね・・・』

その一言に続いて、色々と話が展開していた。
ただ、“それ”とか“あの”とか言われても、答えは前のメールにある。
・・・であれば送信メールを消さなければいい。

(それはそれで、まぁ・・・なんだ・・・)

とりあえず有らぬ波風を立てない男のマナーとでも言っておこう。

(No.347-2へ続く)

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[No.346-2]パッセージ

No.346-2

「気持ちいいぞ!」
「いやよ、焼けちゃうから」
「じゃあ、俺だけ・・・」

そう言うとひとり夏の砂浜へ駆け出して行った。

「ほんと、子供なんだから」

遠くからでも何となく分かる。
彼のハシャギっぷりが・・・。

いつもの仲間たちは今日は居ない。
出逢ってから、初めてふたりきりで海にやって来た。

「こっちに来いよー!」
「だから、行かないってばぁ!」

恥ずかしくなるくらい、ありったけの大声で返事をした。
それでも、夏の海には十分とは言えなかった。

「ほらっ、よ!」
「わっ!あ、危ないじゃ?・・・あっつい!!」

彼が缶コーヒーを私に向けて放り投げて来た。
そして、そのまま砂浜に向かって彼が駆け出して行った。

「まったく、もぉ」

あの時とシチュエーションが似ている。
缶コーヒーの熱さが当時の記憶を呼び戻した。 

遠くでハシャグ彼の姿をボンヤリ見ている。
その姿と元カレの姿が瞳の奥で重なった。
No346
(No.346完)

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[No.346-1]パッセージ

No.346-1 パッセージ 工藤静香 歌詞情報

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
出逢いのきっかけは、笑ってしまうほどだった。

「なっ!そう思うだろ?」

(えっ!い、痛っ!)

誰かに左の肩を思い切り叩かれた。

「ちょ、ちょっと!」

反射的に叩かれた方に顔を向ける。
ひとりの男性がもうひとりの男性としゃべっている最中だった。
友人同士だろうか・・・。

(そんなことより!!)

人の肩を叩いておいて、一向にこちらを気にする気配がない。
相変わらず顔は向こうを向いたままだ。

「・・・」
「えっ!?」

声を出した理由はふたつある。
ひとつは私ではない誰かの名前を呼んだこと。
そして、呼びながらその男性が私の左手を握ってきたからだ。

「ところでさぁ・・・」

そう言うとようやく顔を私の方に向けた。
それと同時に・・・。

「・・・?わぁー!ごめん」

肩を叩かれてから、ほんの数秒間の出来事だった。

(No.346-2へ続く)

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ホタル通信 No.112

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.149 それぞれのイベント
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

この話は情景としてはほぼ実話であり、そこに心情を付け加えたような話に仕上げています。

一例ですが、高校野球が終わった後にそれをやっていたことに気付く・・・社会人になるとそんなことが少なくありません。
決して無関心だからということではなく、一言で言ってしまえば生活習慣が変わったせいだと感じています。
そんな私が卒業式帰りの学生たちを目にした所から話が展開して行きます。

実際に学生たちを目にしました。
多少の脚色はあるものの、名残惜しそうなその歩みが大変印象的でした。
その歩みは時を惜しむかのようであり、また次の一歩を踏み出せずに居る躊躇のようにも見えました。それがかつての自分と重なり、これがこの小説の土台となっています。

後半は全て創作です。
ラスト近辺はちょっと含みを持たせた作りになっており、一度読んだだけではマークが点灯します。従って解説を付け加える
とすれば次のようになります。
<解説>
私は卒業を前にずっと好きだった人に告白したが、その恋が実ることはなかった。でも、勇気を出して告白した事実は残った。
時は流れて今の私・・・好きな人はいるけど、告白することが出来ずに居る。それを知る同僚が、私の学生時代の話を聞いて、「学生時代は勇気を出して告白したのに、なんで今は出来ないのか・・・この意気地なし!」・・・って感じです

後半の展開のために、前半に卒業式のくだりを持ってきたのではなく、あくまでも前半を書いている内に、自然と“卒業式”と言うキーワードで前半後半が繋がりました。
また、そんなシーズンに入ってきました。それぞれのイベントがアチコチで生まれるんでしょうね。
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[No.345-2]行く手をさえぎる者

No.345-2

「ちょっと聞いてよ!」
「よくもまぁ・・・朝から色々ある人ね・・・」

まだ何も話していない。
ただ、こんなパターンが何度もあったから、友人も慣れていた。

「・・・で、今日は何?イケメンそれともダメ男?」
「なによ、そのダメ男って・・・」

言い返した割には語尾が弱い。

「・・・で、どっち?」
「それは・・・じゃなくて違うよ、今日は!」

話が完全に脱線する前に本線に戻そう。

「話を戻すけど」

戻すもなにも考えたら、話は全く進んでいなかったが・・・。
とにかく、朝の出来事を話した。

「ハト?人間は諦めたわけ?」
「また、そっちに話を持って行くんだから!」

急いでいる時に、行く手をさえぎるハトの群れ。
腹立たしくもあり、なぜか微笑ましくもある。
無関心ながらも、あの妙に人間慣れした態度。

「これがハトじゃなくて、イケメンならいいのになぁ~」

つい、本音が出て再び話を脱線させてしまった。
まさしく、少女漫画さながらの光景を妄想してみる。
イケメンが行く手をさえぎるほど、群がってくる・・・。

「・・・で、こんなふうに肩をギューっと抱きしめられたりして!」

自分で自分の肩を両手で抱きしめてみた。
その時、右手に何かヌメッとしたものを感じた。
No345
(No.345完)

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[No.345-1]行く手をさえぎる者

No.345-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
(ちょ・・ちょ、ちょっと!危ないー!!)

声には出さなかった。
その代わりに、耳をつんざくブレーキ音が早朝の静寂を破った。
犯人は手入れ不足の私の自転車だった。

「もぉー、危ないでしょ!」

自転車を止め、改めて声に出した。

「・・・っても、あんた達は・・・」

こっちの心配をよそに、何事もなかったように歩いている。
それもいつものように、あの独特の首振りでだ。

「腹が立つと言うより笑っちゃうよ、全く・・・」

たかがハト相手に、怒っても大人気ない。
いや、とりあえず“人間気”がないと言っておこう。
とにかく、無関心さが妙に笑いを誘う。

「今度からちゃんとよけるのよ、いい?」

もちろん、目の前のハトに対して言っている。
けど、これまた、聞いちゃいない。

(・・・ほんとに困った連中・・・)

気付けば目の前どころか、足元に群がっていた。

「こらぁー!」
「わっ・・・」
「・・・・えっ!あっ・・・す、すみません!」

たった今、通り過ぎた女性が驚いていた。

(No.345-2へ続く)

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[No.344-2]時計

No.344-2

当時、特に友達ともめた記憶はない。
そう考えると、時計がなくてもちゃんと出会えていたことになる。

「そもそも、時間なんて流れてなかったのかもしれないね」
「・・・えっ、あ、うん・・・」

友人の思い付きであろうその言葉に妙な納得を覚えた。

「ほら“後で空き地で”・・・程度で十分だったじゃない?」

その内、適当に人が集まって来る。
来るのが遅い・・・そんな話題なんて恐らく出なかったのだろう。
もともと集合時間が決まってないのだから。

「そうなると、時を・・・」

時を知る必要がない。
それに・・・。

「暗くなったり」
「駄菓子屋が閉まったり、どこかで母親の声がしたり」
「それに学校の放送が聞こえたら・・・」
「帰ればいいの家に!」

最後はふたり同時に声を出した。
時計がなくても、勝手に時を知らせてくれるものは沢山あった。

「言わば他人の時間で時が流れていたように感じる」
「そうかもしれない・・・悪い意味じゃなく」
「・・・今の私たちは、悪い意味だけどね」

友人が時間に追われる毎日を皮肉っぽく表現した。

「けど、子供の頃の名残は今でもあるわよ」

友人は時より、お腹の虫を威勢よく鳴らす。

(No.344完)

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[No.344-1]時計

No.344-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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自分の時間じゃない。
言わば他人の時間で“時”は流れていた。

「子供の頃?持ってるわけないでしょ」

話の発端は子供の頃の遊びについてだった。
ローカルなものからメジャーなものに至るまで話は尽きなかった。

「普通、そうよね」

話をしている内に、あることに対して疑問が沸いた。
・・・というより、記憶も定かじゃない。

「私なんて高校生からよ」
「それは私も同じ」

当時、腕時計をしている小学生を見たことがない。
単に田舎だからとか、そんな理由とは違う。
抽象的かもしれないが、一言で言えばそんな時代だった。

「当時、どうやって時を知ってたのかな?」

時計に代わるもの、例えばケータイだってなかった時代だ。

「・・・それもそうね」

家の中なら時計がある、けど外に出てしまえば・・・。
そんな疑問がフッと沸いて来た。

「ほら、放課後・・・」

友達と待ち合わせして遊ぶことは少なくなかった。
その時、どうやって・・・

「・・・時間を知ったのかな?」

また最初の疑問に戻って来た。

(No.344-2へ続く)

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