[No.352-2]針に気をつけて
No.352-2
捨てられたと聞いた後、彼女としばらく連絡が取れなくなった。
今思えば、正確には3日間・・・・ということになる。
「あの時、探していたんだ?」
「言ってくれれば・・・」
「せやかて、迷惑は掛けられへん!うちらの問題やし」
菜緒(なお)と彼の間に何があったのか、知ろうとは思わない。
けど、あの雨の中ましてやゴミの中・・・考えると胸が苦しくなる。
「辛いことも楽しいことも、半分づつの約束だろ?」
「・・・ごめん」
「まぁ・・・それにしても」
目の前の彼ら・・・キイロイトリは、もはや黄色ではない。
コリラックマも、リラックマに雰囲気が似てきた。
「せいじゅうろうは・・・あまり変化ないな」
もともと茶色のせいか、全体的な汚れはあまり目立たない。
「ただ・・・これは・・・ぷっ!」
「わ、笑ったら失礼やん!・・・て、ぷっ!」
その存在だけで十分笑わしてくれる、せいじゅうろう。
それなのに今は輪を掛けて・・・。
「背中のチャック開いてるし」
もともとそんな構造ではない・・・どうやら破けてしまったらしい。
けど、逆にそれが設定上の“本物感”をかもし出している。
「脱ごうとしたんやろか」
「確かに・・・設定では着ぐるみだしな」
いつものごとく、バカバカしいことを真剣に考えた。
「縫っちゃおうか?」
「そやな・・・でも、気いつけてな」
その気遣いは俺でなく、せいじゅうろうに向けられたものだった。
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