[No.340-2]三毛猫ホームズ
No.340-2
当時、行き帰りの電車の中で、時間を惜しむように読んだ。
往復約1時間だけでは物足りないほどだった。
「でもね、家では全然読もうとは思わなかったの」
読書モードのスイッチがONからOFFへ切り替わる。
そして、電車に乗ったら、またONになる。
「今でもそのクセが抜けないのよね」
もっぱら、読書は電車の中で行う。
それは家の中でも、ましてやおしゃれなカフェでもない。
「俺はどうか分からないぞ」
「いいよ、人それぞれだもん!」
私がそうなだけで、彼に強制するつもりは全くない。
「まぁ、とりあえず受け取っておくよ」
そう言いながらも、何となく嬉しそうな背中を見送った。
「ねぇ・・・ねぇ・・・ったら!」
「・・・ん?あっ!ごめん、ごめん、夢中になってた」
今の彼は、待ち合わせの場所で本を読むタイプらしい。
夢中になり過ぎて、私の到着に気付かないことさえある。
「もぉ!・・・まっ、いいか」
その昔、付き合い始めた私達には、丁度良い共通の話題になった。
「なぁ、なんであの時、主人公は・・・」
「そうね、多分・・・」
「だろ!俺もそう考えてた」
私が小説を読むようになった理由は簡単だった。
(No.340完)
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