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[No.340-1]三毛猫ホームズ

No.340-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
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私が小説を読むようになった理由は簡単だった。

「・・・なんだよ、これ?」
「なにって・・・見れば分かるでしょ」

どこからどう見ても、文庫本だ。
別に見た目が本で、中身は・・・なんてことはない。

「そんなの俺だって分かってるよ」

そんなことは言った私の方がよく分かっている。

「どうして渡したかって、理由を聞いてるんでしょ?」

多少、回りくどいのは、彼を試す意味があった。
ただ、試すと言っても、陥れる目的はない。
単純に彼の反応を見たかっただけだ。

「だったら、そう言ってから渡せよ」

不思議なくらい、当時と同じ展開になった。
立場は逆だったが・・・。

「たまには、小説でも読んでみない?」

渋々、受け取る姿もまた、当時の私と同じだ。
高校生の時、付き合っていた彼から渡された、一冊の推理小説。
推理小説どころか、本を読む習慣がなかった私をとりこに変えた。

「・・・後で“感想を聞く”なんてことは、なしにしてくれよ」
「別に読まなくったって構わないから」

案外、このセリフが効いた・・・私の場合は。

「そう言われると・・・」

逆に読みたくなるのも、また心情だ。

(No.340-2へ続く)

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