[No.340-1]三毛猫ホームズ
No.340-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(男性)
-----------------------------
私が小説を読むようになった理由は簡単だった。
「・・・なんだよ、これ?」
「なにって・・・見れば分かるでしょ」
どこからどう見ても、文庫本だ。
別に見た目が本で、中身は・・・なんてことはない。
「そんなの俺だって分かってるよ」
そんなことは言った私の方がよく分かっている。
「どうして渡したかって、理由を聞いてるんでしょ?」
多少、回りくどいのは、彼を試す意味があった。
ただ、試すと言っても、陥れる目的はない。
単純に彼の反応を見たかっただけだ。
「だったら、そう言ってから渡せよ」
不思議なくらい、当時と同じ展開になった。
立場は逆だったが・・・。
「たまには、小説でも読んでみない?」
渋々、受け取る姿もまた、当時の私と同じだ。
高校生の時、付き合っていた彼から渡された、一冊の推理小説。
推理小説どころか、本を読む習慣がなかった私をとりこに変えた。
「・・・後で“感想を聞く”なんてことは、なしにしてくれよ」
「別に読まなくったって構わないから」
案外、このセリフが効いた・・・私の場合は。
「そう言われると・・・」
逆に読みたくなるのも、また心情だ。
| 固定リンク | 0
「(014)小説No.326~350」カテゴリの記事
- [No.350-2]どしゃぶりの雨の中で(2012.03.24)
- [No.350-1]どしゃぶりの雨の中で(2012.03.23)
- [No.349-2]眼鏡で背伸び(2012.03.20)
- [No.349-1]眼鏡で背伸び(2012.03.18)
- [No.348-2]女友達(2012.03.16)
コメント