[No.338-2]想い出はセピア色
No.338-2
「想い出・・・?ようやく最初に繋がったわけね」
言葉の上では。
「・・・で最初に戻るけど」
ようやく、会話できる体制が整ったからだ。
それに、気になる発言もあった。
「セピア色って言ってたよね?」
それ自体、初めて聞いたわけではない。
想い出は時として色に例えられる。
セピア色はその代表格だろう。
「うん、どうしてその色なのかな?って」
「そんなの簡単だよ」
昔の写真を見ればそれは一目瞭然だ。
アルバムの中に眠る写真達は、時の流れの中で色褪せてくる。
もちろん、物理的な現象だけを言っているのではない。
「でも、今はデジカメの時代じゃない?」
確かに、見た目では色褪せることはないだろう。
けれど、ある意味、色褪せるから想い出なんだ。
「・・・ううん、そんなことない」
友人が言い出したことなのに、私が意地になっていた。
「記憶の中の想い出は・・・いつだって、セピア色だよ」
別に風化して行く写真に引っ掛けたわけじゃない。
「だって、カラーよりデータ量が少ないでしょ?」
だから、多くの想い出を人は記憶することができるんだ。
(No.338完)
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コメント
初めて訪問させていただきました。実に興味深い内容だと思います。これからも頑張ってください(最近『頑張る』という言葉が嫌いな人が多いのですが…)。
投稿: ジョン | 2012年2月16日 (木) 12時53分
コメントありがとうございます。
頑張る・・・確かに今の時代、言葉を選ば
なければならない時もありますね。
でも、素直に受け止めることができるなら
こんなに嬉しい言葉はありません。
また次も読んで頂ける小説を、頑張って作
て行きますね
投稿: Re:ジョンさんへ | 2012年2月16日 (木) 23時20分