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[No.338-1]想い出はセピア色

No.338-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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「どうして想い出はセピア色・・・なのかな」

そう一言発した後、友人が大声で泣き始めた。

「ちょ、ちょっと・・・恥ずかしいじゃない」
「うぁたしのしちゅれぇんよりもてぇさいをぉきにするわけぇえ?」

泣きじゃくった声では、上手く聞き取れない。
ただ、背景は何となく想像できる。

「ごめん、ごめん!私が悪かったからさぁー」

以前も同じパターンがあった。
一言、名言らしき言葉を口にした後、泣き崩れる。

「ほら、男性なんて掃いて捨てるほどいるじゃない!」

言い終えた後、気付いた。

(私も前と同じこと言っちゃった・・・)

「ほんと?」
「ん・・・ほんと、ほんと!」

どうやら覚えていないらしい。

「だから、もう泣かないの!」

週末の居酒屋の喧騒は、今の彼女には丁度良い。
あれだけ泣いても、不思議なくらい掻き消されている。

「うん・・・分かった・・・もう、想い出にする」

この頃には、ビールの泡はスッカリ消えていた。

(No.338-2へ続く)

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