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[No.336-2]温度差

No.336-2

「・・・記憶なんてそんなものよ」

正確に言えば、忘れたのではない。
もともと覚えていない、と言ったほうが似合う。
目に映る風景なんて、案外そんなものだ。

「あそこにね・・・私の家があったの・・・借家だったけどね」

父の仕事の関係で何度も転校した。

「・・・ごめん、覚えてなかった」
「ううん、気にしないで」
「私だって、私の家以外、覚えてないから」

仮に隣の家が空き地に変わっていたとしても、多分思い出せない。
見えているからといって、記憶に残るとは限らない。

「でも・・・ほんとにごめん」
「もういいよ・・・でも、昼おごってね!」
「・・・ここでいい?」

気付けば足しげく通った店の前だった。

「まだ、店やってたんだ!」
「思い切って500円使っちゃう?」

当時できなかったことでも、今なら簡単に実現できる。

「そうね、大人買いしちゃおうか!」

この駄菓子屋から、かつて家があった空き地が見える。
だからこそ、親の目を盗むように通った。
そんな記憶も懐かしい・・・。

「・・・どうしたの?」

他人には単なる空き地に見えても、私にとっては思い出の場所だ。
そんな想いが胸に込み上げてきた。

(No.336完)

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