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2012年2月

ホタル通信 No.111

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.160 空と私
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

会話の内容や人物設定はほぼ創作であり、実話度としては、ほとんどゼロに等しい話です。

内容や設定的には実話度ゼロなんですが、根底に流れる想いを形にしたこともあり、全編に亘り自分の中では実話度は高めになっています。
その根底に流れる想いを形にしたもの・・・それが“空”だったのです

実は空を題材にした話は他にも作っています。
青空であったり夜空であったり、人の表情にも似た空を通じて気持ちを代弁させることも少なくありません。
単純に考えれば青空は「元気で活発」なイメージとなるわけですが、この話に限って言えばややダークなイメージです。
ただ、ダークと言っても空自体を悪いイメージにしたのではなく青空が作り出す“かげ”を取り上げています。

“かげ”と言うキーワード。
これも何度か取り上げたテーマです。“陰”であったり、“影”であったり、その時々により扱いは異なりますが、一言で言えば「光とかげ」の関係を小説にしています。
今回の話はそれをより強調した話として作っています。光に対する“かげ”ではなく、青空という「元気で活発」なイメージを持つ光と対比させました。

最後に、手前味噌ですが「光とかげ」を題材にした話は、冬のホタルでも特に応援歌の意味合いで書かせて頂いています。
確かに具体的な対象者が居るのも事実なのですが、自分を含めて、広くそれを感じて頂ければ幸いです
No111
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[No.343-2]枯れた花

No.343-2


「それは・・・残念ね」

・・・の割に、友人の言葉は残念っぽく聞こえてこない。

「ほんとにそう思ってる?」

つい、聞き返してしまった。
せっかく冬を越したポインセチアが枯れてしまった。
あの日以来、すっかり元気を無くして行った。
緑が薄くなり、葉もうなだれるように張りを失っていた。

「たかが、植物でしょ?」
「あぁー!今のセリフ・・・全国の植物ファンを敵に回したよ!」
「あのね・・・」

あの日のこと・・・分かってるから余計に悔やまれる。

「その日に何があったの?」
「ちょっと、汗かいたのでエアコンを・・・」

冷気の噴出し方向に、ポインセチアを置いていた。
気付いてはいたが・・・。

「寒い冬も越してきたわけだから・・・関係ないと思ったの」

恐らく、急激な気温の変化を与えてしまったのだろう。
次の日、明らかに悪い意味で変化があったからだ。

「分かるけど、落胆が大き過ぎない?」
「実はね・・・枯れた原因が他にあるって思ってるんだ」

エアコンが原因であるのは間違いないと思う。
ただ、枯れる少し前から別の植物も育て始めた。
葉が落ちて虫っぽいポインセチアと双葉が可愛い・・・。

「他の植物に浮気したからかもしれない」

有り得ないけど、そんな気がしてならない。
動物も植物も・・・ましてや人間だって同じことが言えるだろう。
それを植物から教わった気分だ。

(No.343完)

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[No.343-1]枯れた花

No.343-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「あっ・・・若葉が生えてる!」

ポインセチアに小さな若葉を見つけた。
葉が落ちてしまってから久しい。
もちろん、枯れていたわけではない。
葉がなくとも茎は瑞々しさを保っていたからだ。

「いよいよ、次世代の誕生ね」

我ながら大袈裟な表現を使った、なぜなら・・・。
私の中では結構驚きだったからだ。
一旦、葉が落ちたはずなのに、また生えてくるなんて・・・。

「麻利子(まりこ)に教えなきゃ!」

つい嬉しくなって、写メを送ろうと考えた。

(・・・もう少し待ってみよう)

まだ若葉が1枚だけだ。
どうせなら、もう少し葉が付いた方が見栄えがする。
今は茎が目立って、何だか雰囲気が虫っぽい。

「じゃあ、もうちょっと頑張ってね!」

数日もすれば後、2、3枚は葉が付きそうな感じだ。

「じゃあ・・・このあたりに・・・」

とりあえず日当たりが良さそうな場所に鉢を移すことにした。
育て方が難しいとは聞いている。
でも、日当たり良好!はどんな植物にも共通だろうと思った。

「ふぅ~、これでよし!と・・・」

鉢を置く前に、まず部屋を片付けた。
今の季節、体を動かすとうっすらと額に汗がにじんだ。

「今年最初の冷え始め~スイッチ・オン!」

この軽いノリが誤りだった。 

(No.343-2へ続く)

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[No.342-2]気遣い

No.342-2

『ごめん・・・土曜日だけど別の日に変更できるかな?』

数日後、由佳(ゆか)からメールが届いた。

『構わないよ、僕は』

ごく普通にメールを返した・・・後に気付いた。

(・・・もしかして)

以前にも何度か予定の変更はあった。
だから、今だって何ら不思議ではない。
ただ・・・今回は妙に引っ掛かった。

『もしかして、試験のことで気を遣わせてしまった?』
『大丈夫だよ、こっちで調整できたから』

問い掛けに対する直接的な答えにはなっていない。
けど、それだからこそ気遣いに溢れている。
それが嬉しかった。

『ありがとう、気遣ってもらって』
『その代わり、絶対に合格してね!』
『う、うん・・・もちろん!』

合格に向けて試験勉強のラストスパートが始まった。

(由佳のためにも結果ださなきゃ!)

本来、恐れていなかったことを恐れるようになった。
でも、結果を出すことが僕から由佳への気遣いとしよう。No342
(No.342完)

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[No.342-1]気遣い

No.342-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
(どうしよう・・・・か)

ちょっとした選択に迷っている。
いつも通りにするか、時間を早めるかどうか・・・。

『13:00までしか時間は取れないけど、大丈夫だよ』

いつもなら、15:00くらいまでならOKだ。
でも、その日だけは時間を早めたい理由があった。

『・・・次の日、試験なんだ』

別に隠す必要もないから、正直に話した。

『ラストスパートしたいので』
『うちはいいけど・・・大丈夫なん?』

この後も何度かメールを交わした。

試験のことは気になりもするが、由佳(ゆか)とも逢いたい。
その間を取ったような結論にした。

『じゃ、土曜日11:00にいつもの所で』

僕としては、そんな大袈裟には考えていない。
ただ、試験のことは言うべきか言わざるべきか、迷った。
試験の結果を後で聞かれることを恐れたのではない。
由佳に変な気遣いさせる可能性があったからだ。

『わかった、じゃあ土曜日に』

思いの他、あっさり約束が決まった。

(No.342-2へ続く)

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ホタル通信 No.110

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.199 環境が人を変える
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

登場人物の設定は創作ですが、登場自分が語る内容については、ほぼ事実です。

この話は仕事に対するひとつの考え方を小説化したものです。
小説上の私(=作者)は、どちらかと言えば“研究者”肌であり、幅広く手掛けるよりは、ひとつのことに集中したいタイプの人間です。少し見方を変えると“職人さん”とも言えるでしょう。

ある程度の所で満足し現状維持をしたいのではなく、突き詰めることができるのであれば、とことん突き詰めたい!タイプなので、そこそこモチベーションは高く仕事はできるタイプです。
ただ、その裏返しとして、変化を好まないのもまた事実でした。
トータルで考えた時、後者の変化を嫌う誤魔化しとして、職人さんに徹しようとしていたのかもしれません。
井戸の中に居た・・・というよりも、悪く言ってしまえばしがみ付いていた私は大海を知ることになりました。

・・・で大海に出た私、どうなったと思いますか?
モチベーションが高いから荒波も上手く泳ぎ切って・・・ではありませんでした。
波にのまれながら、潮に流されながら、気付いて見たら・・・。
あら、不思議!とりあえず向こう岸に辿り着いていました。決して自力で泳ぎきったとは思っていません。
波や潮の流れは言わば“環境”であり、その環境が私を向こう岸へと導いてくれたと考えています。

「環境が人を変える」
今でも私の中でひとつの格言となっています。自分で自分を変えることは、そんなにたやすいことではありません。
環境という言葉の中には“人”も含まれています。言い換えれば人が人を変える・・・私があなたを変え、そしてあなたは私を変えてくれるのです。
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[No.341-2]ニッコリが一番

No.341-2

「そりゃないだろう!」

でも、実際はそれより酷いのかもしれない。
大袈裟に言えば心の醜さが表情に出ていたはずだ。

「・・・でも、ありがとう」
「菜緒のお陰で・・・」

徐々にイライラが取れてきた・・・と言おうとしていた。

「うち?違う、違う!」
「違う・・・?」
「せいじゅうろうたちのお陰やで」

また出てきた、いつものあいつら・・・。
ただ、今回は連中の姿は見えない。

「今日はまだ登場してないだろ?」
「いいや、いてはる」

大急ぎで辺りを見回した。
机、テーブル、本棚・・・他、居そうな場所に姿は見えない。

「居ないけど?」

その言葉を聞いて、菜緒が僕の向きとは反対方向の壁を指差した。

「ほら、あれ」

壁に掛かったカレンダーに確かにやつらは居た。

「書いてあること、読んでみてみぃ」
「・・・えっ、と・・・」

ニッコリが一番。
No341
(No.341完)

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[No.341-1]ニッコリが一番

No.341-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
最近、以前にも増して仕事が忙しくなってきた。
そのせいだろうか・・・。

「あぁー!なんかイライラする」

自分でも言うのもなんだが、珍しく落ち着かない。
神経がピリピリしているというか・・・。

「どないしたん?珍しいやん」

いつもなら逆の立場だろう。
俺の方が、菜緒(なお)をなだめたりすることが圧倒的に多い。

「最近、忙しくて」

だったら、何だよ!と聞いてる方は思ってしまうだろう。
それに大抵、仕事は忙しいものだ。
それがどうしたと言うのか・・・情けないほど自覚している。

「たいへんやね~」
「へっ?」

いつもなら冗談とは言え、突っ込みのひとつでも入ってくる。
それが拍子抜けするほど、やさしい言葉だった。

「そ、そうなんや・・・大変やねん」

思わず、使い慣れていない関西弁で返してしまった。

「それに大変さが、顔に出てるやん」
「・・・どんな顔!?」

菜緒があえて変顔を俺に突き出してきた。

(No.341-2へ続く)

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[No.340-2]三毛猫ホームズ

No.340-2

当時、行き帰りの電車の中で、時間を惜しむように読んだ。
往復約1時間だけでは物足りないほどだった。

「でもね、家では全然読もうとは思わなかったの」

読書モードのスイッチがONからOFFへ切り替わる。
そして、電車に乗ったら、またONになる。

「今でもそのクセが抜けないのよね」

もっぱら、読書は電車の中で行う。
それは家の中でも、ましてやおしゃれなカフェでもない。

「俺はどうか分からないぞ」
「いいよ、人それぞれだもん!」

私がそうなだけで、彼に強制するつもりは全くない。

「まぁ、とりあえず受け取っておくよ」

そう言いながらも、何となく嬉しそうな背中を見送った。

「ねぇ・・・ねぇ・・・ったら!」
「・・・ん?あっ!ごめん、ごめん、夢中になってた」

今の彼は、待ち合わせの場所で本を読むタイプらしい。
夢中になり過ぎて、私の到着に気付かないことさえある。

「もぉ!・・・まっ、いいか」

その昔、付き合い始めた私達には、丁度良い共通の話題になった。

「なぁ、なんであの時、主人公は・・・」
「そうね、多分・・・」
「だろ!俺もそう考えてた」

私が小説を読むようになった理由は簡単だった。No340
(No.340完)

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[No.340-1]三毛猫ホームズ

No.340-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
私が小説を読むようになった理由は簡単だった。

「・・・なんだよ、これ?」
「なにって・・・見れば分かるでしょ」

どこからどう見ても、文庫本だ。
別に見た目が本で、中身は・・・なんてことはない。

「そんなの俺だって分かってるよ」

そんなことは言った私の方がよく分かっている。

「どうして渡したかって、理由を聞いてるんでしょ?」

多少、回りくどいのは、彼を試す意味があった。
ただ、試すと言っても、陥れる目的はない。
単純に彼の反応を見たかっただけだ。

「だったら、そう言ってから渡せよ」

不思議なくらい、当時と同じ展開になった。
立場は逆だったが・・・。

「たまには、小説でも読んでみない?」

渋々、受け取る姿もまた、当時の私と同じだ。
高校生の時、付き合っていた彼から渡された、一冊の推理小説。
推理小説どころか、本を読む習慣がなかった私をとりこに変えた。

「・・・後で“感想を聞く”なんてことは、なしにしてくれよ」
「別に読まなくったって構わないから」

案外、このセリフが効いた・・・私の場合は。

「そう言われると・・・」

逆に読みたくなるのも、また心情だ。

(No.340-2へ続く)

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ホタル通信 No.109

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.128 不透明な出逢い
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

何となく怪しげであり、また妖艶な雰囲気が漂うタイトルの割りに、内容自体はさわやか系です。

朝の自転車通勤のワンシーンを切り取った内容であり、全体的な雰囲気はほぼ実話ですが、話の要となる自転車同士の衝突は実際に起こっていません。
特に冬になると、反射鏡が曇って見えにくくなり、衝突までには至らないものの、ヒヤリとすることが少なくありませんでした。
このように十分過ぎるほど自覚しなからも、自転車のスピードを緩めることがなかったために「いつか本当に衝突してしまうかも」という想像のもとでこの話は誕生しました。

“出逢い”を乱暴な言い方をすれば、“衝突”とも言えなくもありません。出逢いとは何らかの衝撃的な要素も含んでいるために、少し大袈裟ですが衝突を採用しました。
従って、衝突と言うキーワードが誕生した瞬間にほぼストーリー展開は決まりました
それに非常に作り易かった話でもあり、30分程度で仕上げる事ができた記憶があります。

当初は「衝突=出逢い」と考え、単純に衝突をきっかけに付き合うことになった・・・程度しか考えていませんでした。
たたこれだと余りにも単純でストレート過ぎるために、あえて付き合う前段階の所で話を終了させることにしました。
そこで「一時停止するようになった」のは「注意深くなったから」と一旦、当たり前のことを書いた後に、一気にラストの一行で落としました

ほぼ毎日ブログを更新するためには、一話一話じっくり考えることができないため、牽引役になりきって自分で与えたシチュエーションに身を置き、一気に書き上げています。この話もその代表例なんですよ。
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[No.339-2]絆

No.339-2

「そんなこと言ってたら、この情報・・・」

別に情報社会に乗り遅れる気はない。

「けど、メールだけで済んでしまうことも増えてない?」

それに現場に行かずとも、ネットの中だけで解決可能だ。
そんな世の中に、多少なりとも寂しさを感じている。

「だから便利なんじゃない!」

確かに間違ってはいない。
私だって、その恩恵は受けている。
人との出逢いもネットから・・・なんてことも少なくはない。

「なんて言えばいいのか・・・繋がりが希薄になったのかな?」

それこそ、電話やメール一本で簡単に人とつながることはできる。

「これからはもっとそれが加速するんじゃない?」
「SFの世界じゃないけど、生身の人間同士が逢うことなんて・・・」
「・・・そうね、いずれなくなっちゃうのかもね」

さっきまで威勢のよかった友人も、ややトーンダウンした。
でも、逢えて話せたからこそ、色々な展開が待っている。

「科学技術が発達しても、逢おうね、私たち!」

逆に友人が熱くなっていた。
それに、科学技術という言葉まで飛び出す始末だ。

「も、もちろんよ!固い絆で・・・」

(きずな・・・か)

「どうしたの?考え込んじゃって?」
「どんなに科学技術が発達しても超えることできない・・・」

人と人とのネットワーク・・・それが絆だ。
No339
(No.339完)

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[No.339-1]絆

No.339-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
こんなことを言い出すと、きっと“おばさん”と言われるだろう。
いや・・・30歳手前は十分、おばさんなのかもしれない。

「だから、言ったじゃない!」
「そう、怒らないの」

友人と待ち合わせをした。
ただ、どこで待ち合わせるか、場所は決めていなかった。

「やっぱり、最初から場所は決めなきゃ・・・」
「そんなの、ケータイがあれば何とかなるでしょ?」

友人が現代っ子なのか、私が昭和の人なのか・・・。
とにかく、待ち合わせ場所を決めずに事が進む。
今回だって、“どこかの駅で”しか決めていなかった。

「来る途中でメールしたでしょ?」

いつもケータイを凝視してるわけじゃない。
気付いた頃には、その駅を通過した後だった。
それに・・・。

「駅ってね・・・広いの知ってる?」

お互い方向音痴であることも災いした。
約束の時間から1時間が過ぎた頃、ようやく出逢うことができた。

「でも、こうして出逢えたじゃん!」

相変わらず能天気と言うか・・・結果オーライの性格だ。

「あのね・・・どれだけしんどい思いをしたことか・・・」

目の前の友人に限らず、最近こんなことが増えてきた。
簡単に連絡できることが、裏目に出る。
コミュニケーションが取れるようで、案外とれない。

いつでも、どこでも・・・は、かえって関係を遠のかせていた。

(No.339-2へ続く)

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[No.338-2]想い出はセピア色

No.338-2

「想い出・・・?ようやく最初に繋がったわけね」

言葉の上では。

「・・・で最初に戻るけど」

ようやく、会話できる体制が整ったからだ。
それに、気になる発言もあった。

「セピア色って言ってたよね?」

それ自体、初めて聞いたわけではない。
想い出は時として色に例えられる。
セピア色はその代表格だろう。

「うん、どうしてその色なのかな?って」
「そんなの簡単だよ」

昔の写真を見ればそれは一目瞭然だ。
アルバムの中に眠る写真達は、時の流れの中で色褪せてくる。
もちろん、物理的な現象だけを言っているのではない。

「でも、今はデジカメの時代じゃない?」

確かに、見た目では色褪せることはないだろう。
けれど、ある意味、色褪せるから想い出なんだ。

「・・・ううん、そんなことない」

友人が言い出したことなのに、私が意地になっていた。

「記憶の中の想い出は・・・いつだって、セピア色だよ」

別に風化して行く写真に引っ掛けたわけじゃない。

「だって、カラーよりデータ量が少ないでしょ?」

だから、多くの想い出を人は記憶することができるんだ。

(No.338完)

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[No.338-1]想い出はセピア色

No.338-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうして想い出はセピア色・・・なのかな」

そう一言発した後、友人が大声で泣き始めた。

「ちょ、ちょっと・・・恥ずかしいじゃない」
「うぁたしのしちゅれぇんよりもてぇさいをぉきにするわけぇえ?」

泣きじゃくった声では、上手く聞き取れない。
ただ、背景は何となく想像できる。

「ごめん、ごめん!私が悪かったからさぁー」

以前も同じパターンがあった。
一言、名言らしき言葉を口にした後、泣き崩れる。

「ほら、男性なんて掃いて捨てるほどいるじゃない!」

言い終えた後、気付いた。

(私も前と同じこと言っちゃった・・・)

「ほんと?」
「ん・・・ほんと、ほんと!」

どうやら覚えていないらしい。

「だから、もう泣かないの!」

週末の居酒屋の喧騒は、今の彼女には丁度良い。
あれだけ泣いても、不思議なくらい掻き消されている。

「うん・・・分かった・・・もう、想い出にする」

この頃には、ビールの泡はスッカリ消えていた。

(No.338-2へ続く)

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ホタル通信 No.108

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.163 未来が見えたなら
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

ストレートな表現を避け、含みを持たせた表現が多い話に仕上げています。

タイトルでもある“未来”は、テーマとしては比較的創作しやすいものです。ただ、この話は未来というキーワードを使ったにもかかわらず、悪く言えばショボイ感じがしませんか?
小説の完成度が低いのも、その原因のひとつなのでしょうが、一番の理由は実話度が影響しているからです。
登場人物、飲み会の設定は事実ではありませんが、主軸となる“待つ”に関して繰り広げられる話は、ほぼ事実です。
従って、現実の話に対して、こんなタイトルを付けてしまったので、少しショボク見えるのかもしれません。

それでは内容について触れて行きますね。
まず、前半終了間際のセリフ「1年待てるのに、1日は待てない」・・・どんな意味を含ませているのか、分かりますか?
後半にその答えとなるような展開が待っています。
「1日は待てない」を言い換えると「付き合っている時には1日だって待てなかった」になります。
また「1年待てるのに」ですが、彼と別れメールのやり取りが無くなってから1年が経過したことは、結果的に1年待てたことに等しい・・・という意味を含ませています。

状況はどうであれ、1年間待つことができたのなら、1日なんて容易なはず・・・というのが、亜美の考えです。
だからこそ「もし未来が見えたのなら・・・こうなることが分かっていたなら・・・待てるはずなのに」と後悔の念が押し寄せてきた話になっています
ただ、これだと少し悲しい話で終ってしまうために、ラストにコミカルなオチを付けてみました。

だって、もう2年も待っているのだから・・・。実は創作ではなく、ほぼ事実な状況なんですよ
No108
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[No.337-2]うまくいかない

No.337-2

一呼吸置いてから、後輩の言葉に続けた。

「ふぅ~・・・仕方ないわね」

後輩は大きな勘違いをしている。
それに気付いてないから、気苦労も耐えないのだろう。

「話は変わるけど、今まで付き合った男性の数は?」
「・・・今、関係あるんですか?」
「だから聞いてるの!」

後輩が指を折り始めた。
その数と来たら・・・。

「うぅ・・・なんとも羨ましい・・・でも、ピッタリだわ」

付き合った人の数が多いほど、例え話の効果が出る。

「それぞれダメになったから、また付き合い始めるわけよね?」
「そうですけど」

今、付き合っている人は居ないらしい。
だったら、全ての恋愛は失敗していることになる。

「そんなのを繰り返して、ただひとりの男性を見つける」

仕事も同じだ。
言わば、ほとんど失敗すると思えばいい。

「仕事なんて上手く行かないのが日常よ」

逆に上手くいくことの方が非日常だ。
上手く行けばラッキー!と思えば良い。

「そう考えれば、気が楽にならない?」
「・・・そうですね、確かに!それに・・・」
「ただひとりを見つけても、上手く行かないこともあるんですね!」
No337

(No.337完)

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[No.337-1]うまくいかない

No.337-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうしたの?頭抱えて・・・」

後輩がその言葉通りのポーズをしていた。

「少なくても、楽しいことがあったわけではなさそうね」

返事を返さない後輩に対して、言葉を続けた。

「とりあえず話してみない?」
「・・・はい、実は・・・」

ようやくその重い口を開けてくれた。
予想通り、どうやら仕事の悩みらしい。

「本社部門なんてそんなものよ」

聞けば現場と上手くいってないようだった。
どの会社もそうだとは言えないが、概ねそうなることが多い。
やれ!と言う本社、そんなの無理!と突っぱねる現場・・・。

「確かに上から目線だと、ダメなんだろうけど・・・」

それでも、言うべきことは言わなければならない時だってある。
結果的にそれが現場のためになるのであればなおさらだ。

「理解してるんだけど・・・」
「だけど?」
「言っても、相手にしてくれなくて」

かつての私を見ているようだった。
現場のために、と思い放った矢が、いとも簡単に折られてしまう。

「折られてしまうのは私の心も・・・だけど」

もはや自虐的な域まで達しているようだ。

「ほんと、仕事が上手く進まない・・・」

(No.337-2へ続く)

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[No.336-2]温度差

No.336-2

「・・・記憶なんてそんなものよ」

正確に言えば、忘れたのではない。
もともと覚えていない、と言ったほうが似合う。
目に映る風景なんて、案外そんなものだ。

「あそこにね・・・私の家があったの・・・借家だったけどね」

父の仕事の関係で何度も転校した。

「・・・ごめん、覚えてなかった」
「ううん、気にしないで」
「私だって、私の家以外、覚えてないから」

仮に隣の家が空き地に変わっていたとしても、多分思い出せない。
見えているからといって、記憶に残るとは限らない。

「でも・・・ほんとにごめん」
「もういいよ・・・でも、昼おごってね!」
「・・・ここでいい?」

気付けば足しげく通った店の前だった。

「まだ、店やってたんだ!」
「思い切って500円使っちゃう?」

当時できなかったことでも、今なら簡単に実現できる。

「そうね、大人買いしちゃおうか!」

この駄菓子屋から、かつて家があった空き地が見える。
だからこそ、親の目を盗むように通った。
そんな記憶も懐かしい・・・。

「・・・どうしたの?」

他人には単なる空き地に見えても、私にとっては思い出の場所だ。
そんな想いが胸に込み上げてきた。

(No.336完)

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[No.336-1]温度差

No.336-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「何年ぶりかなぁ~」
「そうね・・・10年ぶりくらいかな?」

1年間だけ住んだことがある街の友人を訪ねた。
今だって親交はある。
ただ、こうして顔をあわせるのは転校して以来だ。

「どう、北海道は?」
「今はすっかり銀世界よ」

彼女は福岡、私は札幌。
ようやく、距離もお金もどうにかできる歳になった。
だから、こうして訪ねることができた。

「こっちは・・・随分と変わったみたいね」

一言で言えば、随分と都会的になった。
何が増えて何が減ったのか・・・具体的な記憶はない。
トータルとして、にぎやかな雰囲気になっていた。

「今、歩いてる道、覚えてる?」
「もちろんよ!」

たった1年であっても、通い慣れた通学路だ。
そう簡単に忘れられるものではない。

「この辺りも変わったのよね」
「でも、全然覚えていない」

それは私も同じだ。
かつて、建物があったであろう、目の前の空き地。
けど・・・全く、思い出せない。

「ほら、あそこも」

友人が目線の先の空き地を指差した。

(No.336-2へ続く)

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ホタル通信 No.107

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.145 出逢いは別れの始まり
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

小説のタイトルがイコール、テーマにもなっており、テーマそのものは王道とも言えるでしょう。

ただ、小説の内容へと繋がる“瞬間的なイベント”が発生したから書いたのではありません。逆に、“慢性的なイベント”と言えば良いのでしょうか
そう考えさせられるイベントにドップリ浸かっていた日常がそこにはありました。
前回No.106で紹介した「No.159 幸せを引寄せて」と同様に、商業的な要素が強いだけに、冬のホタルらしさは控えめです。

さて、内容に触れて行きます
テーマが王道な分、スムースに話を進めることが出来ました。いつもの通り、オチは決めず、登場人物に展開を委ねました。
物語がサクサク展開して、何となくオチにつながるであろう前振りも終わり、「そして、ゼロになった時・・・」まで書き上げたところで、
一旦、筆・・・じゃなくて、キーボードを叩く手がピタッ!と止まりました。

いつもオチや結末を考えずに、書き始めることがほとんどのため、今までもそんなことは起こっていました。
ただ、この小説に限って言えば、相当悩んだ記憶があります。
繰り返しになりますが、テーマが王道な分、妙なプレッシャーを感じていたせいかもしれません。
いつもは自己満足すればそれでいい・・・なんて思っていた所へ王道のテーマを選んだものですから

・・・で、散々悩んで、今のようなオチを付けることにしました。
直前に前振りが何となく出来ていたので、ゼロ、カウントダウントというキーワードを頼りに、その逆を表現することにしました。
“ゼロという別れを境に、マイナス方向に思い出が増えて行く”とすることもできたのですが、考え方としては難しく感じること、マイナスと言う言葉のイメージもあったことから、現在の表現にしています。
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