[No.329-1]左の靴紐
No.329-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
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「・・・・」
「なに、苛立った顔してるの?」
友人の言葉に、ハッと我に返る。
「そ、そんな顔してた!?」
理由は分かっている。
視線の先には、だらしなく解けた靴紐が見えている。
「ナマズのヒゲみたい」
「ナマズのヒゲはもっとピン!と、してるわよ」
私は・・・いや、私の靴紐はナマズ以下らしい。
「いつも左だけ、解けてしまうの」
「右は大丈夫なわけ?」
いくらきつく結んでも、解けてしまうのは決まって左だ。
「別に大したことじゃないでしょ?」
確かにそうなんだけど、ただ・・・。
大したことじゃないというより、あることが気になっている。
「あること?」
例えば、うっかりお皿を落として割ってしまう。
「・・・なにか連想しない?」
「あのね・・・無理言わないでよ」
割った後、ドラマではあるシーンへと繋がることがある。
「ほら、割れたお皿を拾いながら・・・」
「もしかして、いわゆる“嫌な予感”ってやつ?」
靴紐が解けると、何らかの悪い予兆として考えてしまう。
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