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2012年1月

[No.335-2]天からの贈り物

No.335-2

「なんで笑うの?」

葉月(はづき)が不思議そうな顔をしている。

「そんなシビアな話じゃないよ」
「だって、裏切りとか監視とか・・・」

思っていた通りだ。
肝心となる話の出だしを聞いていないようだった。

「雨男の話をしてたんだ」
「雨男?それってあなたのこと?」
「そうだよ」

葉月の顔が明らかに曇った。
恐らく、雨男との関連性の無さに困惑しているのだろう。

「そう!って・・・」
「じゃ、最初から話すから」

話を最初に戻して、もう一度、“裏切り”までしゃべった。

「傘を用意したら、雨は降らない・・・」
「傘を用意しなかったら雨が降って、そりゃ惨めなものさ」

まるで雨男をあざ笑うかのようなシチュエーションになる。

「・・・監視って・・・」
「まぁ、雷様に見られてる!ってとこかな」
「・・・今日、傘持って来たの?」
「今日は傘がなくても多分、大丈夫だろ?」

新年会を前に、全員の目が僕を睨み付けた。
No335
(No.335完)

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[No.335-1]天からの贈り物

No.335-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・尋常じゃない話ね」

葉月(はづき)が急に口を挟んできた。

「あっ、あぁ・・・だろ?」

僕たちの会話が盛り上がっていたからだろうか。
どこからともなく急に首を突っ込んできた。

「何度も裏切られたし」
「それはひどいね・・・」

まるで僕の動きを監視しているかのようだった。
なぜなら、僕の動きの逆を仕掛けてくるからだ。

「だから無駄骨に終る」

せっかく用意したのに使われない。
逆に用意しなかった時は、ひどい目にあった。

「・・・どうなったの?」
「そりゃ、惨めなもんさ」

それを楽しむかのように、どこかで見ているのかもしれない。
そんな話で盛り上がっていたところだった。

「確かに、情報社会だからね」
「情報社会?」
「だってそうじゃない!今の時代・・・」

葉月がネットワークやら情報流出やら、真剣に語り始めた。
・・・やはり、勘違いしている。

「あはは!やっぱり最初から話した方がいいみたいだな」

(No.335-2へ続く)

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[No.334-2]ばいばい

No.334-2

その後も、メールを何度かやりとりした。
ただ、徐々に彼からの返信が減っていった。
それに・・・。

『日曜日逢えない?』
『ごめん・・・用事があるんだ』

あれ以来、彼とは逢ってはいない。
もともと、ギクシャクしていた延長と考えれば不思議ではないが。

『そうなんだ・・・わかった』
いな・・・』
『ううん気にしないで、じゃぁ、バイバイ』

メールを送信してから気付いた。

(・・・バイバイ・・・)

すぐに返信があった。

うんバイバイ』

立場は違えどもあの日と同じだった。
でも、今度は彼のバイバイに別の意味が含まれていると感じた。
もう、これで終わりだと・・・。

渡せなかったプレゼントが目の前で埃を被っている。
正確には、渡せるはずもないプレゼントを買った。

今思えばあの日、ギクシャクした関係にイラだっていた。
そんな、やけになった気持ちが言葉に別の感情を与えた。

「どうにでも、なってしまえ!・・・だったかな」

実際、どうにでもなってしまった、その感情通りに。

「・・・あはは、何だか笑っちゃうね」

プレゼントを手に取り、そのままゴミ箱へ放り投げた。

「バイバイ!・・・もう忘れるわ」

(No.334完)

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[No.334-1]ばいばい

No.334-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(男性)
-----------------------------
「じゃぁ、バイバイ」

これからお互い帰路に着こうとしている。

「うん・・・バイバイ」

ごく自然に手を振り合って別れた。
何度も言ってきた彼へのバイバイ・・・。
でも、今は別の意味も含ませた。

(どうしちゃったのかな・・・わたし)

最近、彼との関係がギクシャクし始めた。
発端は些細なけんかのはずだった。
それが今になっても、関係を修復できずにいる。

「あっ、待って・・・」

声にしたつもりだった。
でも、この人ごみの中では彼が振り向くことはなかった。

彼を呼び止めようと思ったのには理由がある。
さっきのバイバイ・・・。
そこには、永遠のバイバイの意味を含ませていたからだ。
どうして、急にそんな気になったのか、自分でもわからない。

(・・・大丈夫だよね?)

見た目は、普段と変わらないバイバイではあった。
恐らく、私がそんな気で言ったとは気付いていないだろう。
ただ、不安を感じずにはいられない。

『誕生日のプレゼント、なにがいい?』

別に不自然じゃない。
毎年、この時期になったら、聞いていたことだ。
取り急ぎ、メールを送った。
とにかく、さっきのバイバイを払拭するためにも。

『そうなだぁ・・・じゃあ・・・』

今思えばこの時彼は気付いていた・・・永遠のバイバイに。

(No.334-2へ続く)

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ホタル通信 No.106

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.159  幸せを引寄せて
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

小説で繰り広げられる展開は、ほぼ創作です。前半の買い物や後半の桜見物に関しては実話度ゼロです。

この話は、それこそ日常生活の中で感じていたことを小説にしたようなものです。
かばんを持つ手は左手、傘を持つ手は右手です。尚、小説上は傘も左手で持つということにしています。
確かに、これだと矛盾しません。かばんを持っている時に雨が降ってきたら、右手で傘を持つことになります。ただ、かばんがなくても、傘を左手で持つことはありません。
「もしかして、持ち物によって、利き手が変わる?」そんなどうでも良い疑問から、この話は誕生しました。

・・・で、この話を具現化しようと思った時に、ほぼ今のアイデアと同じ展開を思い付きました
手は何かを持つためにあったり、人と人をつなぐためにあったり。
特に後者は物理的なものもあれば心の中のつながりを具体的に見える形として、表現することもあるでしょう。これらをひとつにまとめるような形で小説にしました。

ラストシーンが先に決まり、話をさかのぼるように前半を書き上げました。
主軸は事実であっても展開はほぼ創作であるために、悪い意味で商業的な仕上がりになっています。従って、話としては綺麗にまとまり過ぎている感は否めません
ただ、要所要所で現実のエキスを散りばめています。一例では桜の名所を訪れるシーンは実際に行ったことがある場所をイメージして書いていたんですよ。
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[No.333-2]みなみちゃん

No.333-2

「そうそう、まぁ、今年もよろしく!ってことで」

新年の挨拶がてら、結衣(ゆい)と逢った。
それが、挨拶そっちのけで、こんな話題になってしまった。

「そうね・・・あけおめしてなかったね」

あえてメールでも、新年の挨拶はしなかった。
逢う約束はしていたから、その時しようと考えていた。

「それは私も同じ・・・とっておいたの」
「じゃ・・・改めて」

少しだけ仰々しく、新年の挨拶を交わした。
メールより、何倍も伝わるものがある。

「私こそ・・・じゃなくて」
「みなみこそ、今年もよろしくね」

「もちろん!応援してる」

アイドルとそのファン・・・のような会話だった。
もちろん、お互い冗談でやっている。

「うん、じゃぁ・・・みなみ頑張る!」
「総選挙も頑張って!」

つい、お互いノリノリになってしまった。

「みなみ、今年はセンター目指して頑張るぅ!」

(No.333完)

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[No.333-1]みなみちゃん

No.333-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「それ、わたしも見た!見た!」

年明けに人と会うと、年末年始に見たテレビの話から始まる。
・・・ことが多い。

「出演してたよね?」
「・・・ん?」

一瞬、考えこんでいた。
でも、すぐさま、意味が分かったようだった。

「あ~出てた!」

もちろん、目の前の人が本当に出演していたわけではない。

「やっぱり、良く似てたよ」
「そうかなぁ~」

今を時めく、アイドルグループのひとりに似ている。
決して悪い気はしないだろう。

「ちょっとだけ、アダルティな・・・だけど」
「そうね、10年後のみなみちゃん!って感じ?」
「あはは!」

笑いはしたものの、実際そんな感じだろう。
ちょっと、歳の離れたお姉さん・・・と言ってもいい。

「微妙ーだけど、まっいいか!」

(No.333-2へ続く)

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[No.332-2]愛は悲しみより深い

No.332-2

「どう・・・次の恋には進めそう?」
「自信はないけど・・・ね」

失恋なんて、どこにでもある話だ。
ただ、いざ親友ともなれば多少、話が違ってくる。

「今が苦しくても、いずれ・・・」
「そうね、笑える日が来る・・・か」

慰めではなく、自虐的に笑い飛ばすことが必要と感じた。
だから、あえてこんな話をした。

「・・・ちょっと待って」
「どうしたの?」
「今が、どん底だと仮定すると・・・」

咲(さき)が何やら、ブツブツと独り言を言い始めた。

「あなたの言葉を借りれば、いずれ底を見上げることになるよね?」
「そうよ、だから・・・」

今なんて、気にするほどのことじゃない。
もっと、底が待っているのだから・・・。

「・・・ということは」
「そんなの決まってるじゃない!」
「また、失・・・あっ!」

更に今よりも大失恋が待っていることになる。

「何度も聞くけど、これって良い例えだよね?」
「も、もちろん・・・よ!」

最後に話を上手くまとめる必要が出てきた。
咲の疑いの眼差しが、凄いからだ。

「悲しみのどん底を見上げる、愛と言うさらに深い底・・・」No332
(No.332完)

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[No.332-1]愛は悲しみより深い

No.332-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
どん底を見上げる・・・どこかで耳にしたことがあった。

「私も聞いたことがある、確か・・・」

大きく分けて、ふたつの意味を持つだろう。
ひとつ目は、悪い意味でだ。
底だと思っていた所よりも更にその下がある。

「例えば、株価ね」
「これが底値だと思ってたら・・・なに?そんな顔して」
「“株価”って言葉が出てきてビックリしたのよ」
「もぉ!私だってぇ」

とりあえず、うまい例えだと思う。
限りなく底値だと思っていたら、更にその下を行く。

「じゃあ、ふたつ目は?」

ふたつめ目は逆に良い意味でだ。
どん底に落ちたつもりでも、本当の底はもっと下の方にある。

「それって、良い意味?」
「あきらめの境地!という意味でだけどね」

さっきまでどん底だっと思っていた底を見上げる。
冷静に考えれば、事態は更に悪化している。

「でも、なんだか可笑しくない?」

今、居る“どん底”も、いずれ見上げることになるのだろうか?
そう考えれば、この底は底であってどん底じゃない。
そう思えれば、多少気も楽になる。

「そうね、逆にやる気のひとつでも出そうな気がしてくるね!」
「でしょ~!」

咲(さき)には、今、こんな話が必要だった。

(No.332-2へ続く)

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ホタル通信 No.105

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.36 明日の笑顔
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

以前、ホタル通信で“変りダネ小説”を何度か紹介させて頂きましたが、それにも負けないくらいの変わった話です。

早い話・・・何が負けないかと言えば、この話、もはや小説ではありません。なぜなら、チャットのやり取りを小説風にしているのですから。
ただ、実話度はそんなに低くはありません。実際に小説に良く似たチャットが展開されたのです。
そのチャットの内容に、身の周りで実際に展開された話(以下現実)を加えて仕上げたのが今回の小説になります。

『ずっと辛い想いをしてきたのに、今も辛いことばかり』は現実に交わされた会話の一部です。
現実の話とチャットで全くの他人と交わした話が非常に似通っていたために、これらの話を混ぜてひとつの話として完成させました。ただ、後半は全て創作です。

後半は、まぁ、ありがちな展開であり、ラストもそんなに凝った作りではありません。
最後のあやのセリフ『伝わっていると思うよ。今日もありがとう』の“も”が、いわゆるこの話の答えになります。
以前チャットした“あや”とその後チャットをした“あや”が同一人物だということです。

最後にもう少し内容に触れておきますね。
あやとあやが同一人物・・・小説だから、そんな偶然を演出したわけではありません
『それと、メッセージ素敵ですね』というあやのセリフ・・・これを伏線にしました。彼女に伝えたかったメッセージ・・・彼女にしか伝わらないメッセージ・・・
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[No.331-2]ライバル

No.331-2

「興味本位でしょ?みんな」

つまり、ライバル同士の戦い。
はっきり言えば・・・

「女の戦い・・・だと」
「そうだろうな・・・でも、僕はそうは思っていない」

その場をとりあえず取り繕うために、口にしたのではない。
本当にそうだとは思っていなかった。

「ほんと?」
「さっきも言っただろ、お互い頑張ってたのは知ってたよ」
「それに、犬猿の仲じゃないわけだろ?」

ライバルだけど、仲が悪いわけではない。
そんな雰囲気を、これも周りが作り上げている。

「そうね、逆に好きなくらい」

もともとライバルとはそんなものだ。
見た目は対立状態でも、真の部分は似ている部分が多い。
それに好敵手・・・と言われるくらいだ。
実力の上でも過不足がなく、競い合うには丁度良い。

「まぁ、世紀の対決を楽しんだら?」
「そうね、そうする」
「そう、そう、竜虎の対決!・・・なんてね」
「・・・」

さっきまでの彼女とは表情が一変した。

「それで・・・どっちが竜で、どっちが虎なわけ?」
「えっ!それは・・・」

どちらを選んでも結果は見えていた。
No331
(No.331完)

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[No.331-1]ライバル

No.331-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
口は災いの元・・・思わぬところで・・・。

「いよいよ明日ね・・・」

口調は静かでも、意気込みを感じる。

「相手は例のライバルだったよな?」

商品企画のプレゼンが明日行われる。
明日は言わば、社内における決勝戦のようなものだ。
どちらか一方が採用される。

「うん・・・予想通り一番手ごわい相手が残ったわ」

彼女たちのライバル関係は社内でも有名だった。
だから、興味本位で見られることも少なくなかった。
でも、僕にはそうは映らなかった。

「そうだな、彼女は彼女で頑張ってたもんな」
「そうね・・・それは認める」

同じ仕事内容だ。
遅かれ早かれ競い合う関係になる。

「それにしても、周りが騒ぎすぎ」
「・・・だな」

今回のプレゼンはいつにもなくビックプロジェクトにつながる。
だから、周りがザワ付くのも分かる気がする。
ただ・・・。

「そうね、違う意味でだけど」

仕事の大きさも手伝って世紀の対決とまで言われるようになった。
まるで、格闘技でいうタイトルマッチのようでもあった。

(No.331-2へ続く)

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[No.330-2]たわいのない会話

No.330-2

「よう見てみぃ~!」

ふたつのせいじゅうろうを俺の目の前に持ってきた。
結論から言えば同じ物だ。
それは、さっきからずっと思っていた。

「見るもなにも、同じものだろ?」

ただ、菜緒(なお)のことだ。
見えない部分が違うとか・・・そんなことを言い出しかねない。
ん・・・待てよ・・・。

「もしかして、キイロイトリに書いてある字が違・・・」
「違う、それは関係ない」

あくまでも、せいじゅうろう自体だと言い張る。

「これ、一緒に買いに行っただろ?」

あることを除いては紛れも無く、同じ商品だった。
キイロイトリに書いてある誕生日を除けば。

「でも、違うねん」
「じゃ、どこがだよ?」

もっと早く言えばよかったセリフを今、口にした。

「顔、違うやろ?微妙に」
「あのね・・・大量生産してるんだから、違うわけなぁ・・あ!?」

否定形で話を終われなかった。
菜緒の言う通り、微妙に・・・いや、良く見るとかなり違う。

今度はふたりして、目をキョロキョロし始めた。
No330
(No.330完)

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[No.330-1]たわいのない会話

No.330-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
「どうした?考えこんじゃって」
「・・・どぉ思う?」

主語がないのはもちろん、話の背景も分からない。
でも、何となく話のアウトラインは見えている。
ただ、今更ながらこいつらを、どう数えたら良いのだろうか?
二匹?・・・多少、失礼な気もする。

「この、せいじゅうろうのことか?」

菜緒(なお)がせいじゅうろうと向き合っている。
それもかなり、真剣な眼差しだ。

「せやで」
「ふたつ並べて、なんだよ?」

とりあえずふたつと数えた。

「あんな、違うんよ」
「違う?なにが・・・?」

質問をよそに相変わらず、真剣に向き合っている。
でも、一点に集中しているような向き合い方ではない。

「さっきから、目が左右に動いてない?」

それも、かなり忙しく動いている。
状況からすれば、何をしているのかは分かる。
ただ、その理由までは分からない。

「比べてんねん!」
「・・・って、なにを?」

話が進んでいるような進んでいないような・・・。

(No.330-2へ続く)

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ホタル通信 No.104

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.21 四分儀座流星群
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

現在のブログを立ち上げる前に、非常に短期間だけ公開したことがあるブログで、四分儀座流星群について触れたことがありました。

四分儀・・・声に出しても、漢字で書いてもそれにどんな意味があるのか、分かりませんでした
四分儀そのものをザックリ説明すれば、角度を測る装置です。
流星群は、Wikipediaにてご確認いただければ幸いです。
話の発端は、小説の通り、聞きなれない流星群であったことに加えて、調べてみると六分儀座、八分儀座があったことで話が膨らんで行ったことによるものです
まるでクイズの問題としても使えそうなネタですよね?別に笑える話ではないですが、妙に盛り上がったことを覚えています。

冒頭は、少しコミカルに入りました。
かなり初期の作品で、毎度の通り、お恥ずかしい出来栄えなのですが、当時の盛り上がった雰囲気をややオーバーに表現しています。
話の主軸や展開についてはほぼ実話で、楽しげな雰囲気が伝わるように創作を所々盛り込みました。

数ある短編小説の中でも、更に短編の小説として誕生しました。
当時は“実話”を生かすために、あえて創作要素を少なくしていたこともその理由です。
ただ、余りにも状況説明を省略し過ぎると、色々と不都合が出るため、その反省として現在のスタイルが定着しました。

・・・とは言うものの、万人受けすることが狙いでもなく、小説と呼べるほど、そんな質の高いモノを狙ってはいません。
あくまでも日常を小説風に切り取り、そこに何らかの想いを乗せることを大事にしています。
No104
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[No.329-2]左の靴紐

No.329-2

「ふ~ん・・・で、実際になにか起こったわけ?」

興味なさげな返事の割に、表情は食い付いている。

「ううん、特にこれと言って」
「ただ・・・いつもそんな気になるだけ」

お笑いで言えば、ネタを振ったにも関わらずオチがない。
言わば“振り逃げ”の話しだとは理解している。

「確かに、靴紐が切れたりしたら・・・」
「そんな気にもならなくはないけど」

実際に何も起きていないなら、そう考える必要はない。
なのに、なぜ・・・私が聞きたいくらいだ。

「トラウマがあるとか?」

少なくとも、記憶している範囲ではそれは考えられない。

「いっそのこと解けないようにしちゃおうよ!」

提案口調の中に“面倒だからさぁ”という言葉が隠れている。
でも、解けなければ、余計な考えが起きないのも事実だ。

「そうね・・・絶対に解けないようにしよう!」

接着材で接着しようか・・・そんな大胆な意見も出た。
解く時どうするのか、もちろん考えてなどいない。

「こうね・・・こうして・・・二重にして」
「そこまでしたら、解く時大変だよー!」

いつの間にか、必死になっていた。 
さっきまでは、どうでも良かったことなのに。

「これでどう?もう、解こうにも解けないわよ」

靴紐と共に、もうひとつの紐も固く結ばれていくのを感じた。No329
(No.329完)

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[No.329-1]左の靴紐

No.329-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
-----------------------------
「・・・・」
「なに、苛立った顔してるの?」

友人の言葉に、ハッと我に返る。

「そ、そんな顔してた!?」

理由は分かっている。
視線の先には、だらしなく解けた靴紐が見えている。

「ナマズのヒゲみたい」
「ナマズのヒゲはもっとピン!と、してるわよ」

私は・・・いや、私の靴紐はナマズ以下らしい。

「いつも左だけ、解けてしまうの」
「右は大丈夫なわけ?」

いくらきつく結んでも、解けてしまうのは決まって左だ。

「別に大したことじゃないでしょ?」

確かにそうなんだけど、ただ・・・。
大したことじゃないというより、あることが気になっている。

「あること?」

例えば、うっかりお皿を落として割ってしまう。

「・・・なにか連想しない?」
「あのね・・・無理言わないでよ」

割った後、ドラマではあるシーンへと繋がることがある。

「ほら、割れたお皿を拾いながら・・・」
「もしかして、いわゆる“嫌な予感”ってやつ?」

靴紐が解けると、何らかの悪い予兆として考えてしまう。

(No.329-2へ続く)

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[No.328-2]プラネタリウム

No.328-2

「・・・感動したからだろ?」
「そんなんやない」

センチメンタル?それともノスタルジア?それとも・・・。

「それじゃ・・・なに?」

つい、口が反応して切り返してしまった。
触れてはいけない部分があるかもしれないのに。

「なに、って言われても自分でも分からへん」
「・・・それ・・・」

言い掛けて、口を閉ざした。

「そう言えば・・・」

昨日のテレビのワンシーンに通じるものを感じた。
とある映画の製作記者会見の席で、ある女優が突然泣き出した。
不自然な涙に、当然、芸能リポーターが飛び付く。

「内容が内容だけに、今の自分と重ねたんじゃないかと思う」

そんな分かり易いシーンもあれば、無意識に出る涙もあるだろう。
自分でさえ、何に対して涙が出ているのか、分からない・・・。

「・・・そんなこともあるかもしれないな」

随分と長い前置きにも関わらず、大した結論には至らなかった。

「せやけどな・・・少なくとも悲しい涙とはちがうねん」

そう言うと夜空の星に負けないくらい、瞳が輝いていた。No328
(No.328完)

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[No.328-1]プラネタリウム

No.328-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
-----------------------------
菜央(なお)が、星好きだということは知っていた。
知るも何も、プロフィールにそれこそ堂々と書かれていたからだ。

「最近のはやねぇ~」

最近のプラネタリウムについて、話始めた。
聞くだけでも、凄そうなイメージは伝わってくる。
菜央の話が上手いのか、それとも僕の認識が古いのか・・・。

「プラネタリウムっていったら、アレしか思い出せないよ」
「なんやねん、アレって?」

記憶の中のプラネタリウムは、何となく宇宙船をイメージさせる。
宇宙船と言うより・・・月に降り立つ着陸艇と言うべきだろうか。

「子供の頃、百科事典で・・・」

丸い大きな球体に小さな穴のようなものが無数にある。
それが何本かの脚によって支えられていた。
子供心にそれは異形の物体に見えた。

「伝わるかなー?」
「伝わるも何も、今だってそんなに変わってへん」

そんなに変わっていなければ、イメージは伝わったはずだ。

「装置だけが凄いんと違うんや、あんな・・・」

早い話、演出も凄いと言いたいらしい。
映像や音・・・とにかく天体ショーとして成立しているようだ。

「・・・でな、何でか知らんけど、見てたら涙が出るねん」

(No.328-2へ続く)

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