[No.327-2]京阪電車
No.327-2
次々に飛び込んでくる風景を、ひとつずつ胸に刻んだ。
彼が見ているであろう、この景色を。
(私、どうして、こんなことしてるのだろう・・・)
たまに自分の行動力に驚くことがある。
行動力のすごさに驚いているわけではない。
普段、行動を起こさぬ私が、思い付きと勢いだけで行動を起こす。
それに驚いている。
(どれくらい時間が掛かるのかな?)
降車駅は分かっている。
でも、そこまで乗車している時間までは把握していない。
(まっ、関係ないか)
誰かと待ち合わせているわけでもない。
とにかく、目的地まで到着しさえすれば、それで良い。
『間もなく・・・淀屋橋・・・・』
目的地を告げるアナウンスが流れた。
(意外に近かったのね)
普段なら、せっかちな私はもう扉の付近に立っている。
だけど今はもう少し、このままでいたい。
彼の軌跡をたどる旅が、間もなく終るからだ。
今でも、ふと思い出すことがある。
あの時、なぜあのような行動を起こしたのかと。
それもわざわざ有休を使ってまで・・・。
「・・・京阪電車か」
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コメント
はじめまして。
映画「阪急電車」見ました。
ハートウォームないい映画でした。
題名に惹かれてお邪魔しました。
テンプレートも味わいがあって素敵です。
少しずつ拝読させていただきますね。
投稿: 尾道貴志 | 2013年12月 3日 (火) 00時50分
コメントありがとうございます。
映画「阪急電車」とは似て非なる小説ですが
電車って様々なドラマの舞台になる、特別な
存在のような気がしています。
よければ、またお越しください。お待ちして
おります。
投稿: Re:尾道貴志さんへ | 2013年12月 3日 (火) 23時20分