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[No.322-1]英国屋

No.322-1

登場人物
=牽引役(男性)=相手(女性)
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「喉でも渇いたの?」
「・・・どうして?」

とあるカフェの前で、つい足を止め見入ってしまった。
随分前に一度だけ訪れたことがある。

「どうして、って・・・ジッと見てたから」

そう思われても無理はない。
理由は異なるが、見入っていたのは事実だ。

「そうそう、喉が乾いた!」

色々と詮索されないためにも、この場はこれで乗り切ろう。

「・・・なんか変だけど、まぁ、いいわ」

多少の疑いを持たれながらも店に入った。
入ったとは言っても、オープンスタイルのカフェだ。
内外の区別がはっきりしない作りになっている。

「何にする?私はアイスティーのねぇ・・・」

偶然、莉乃(りの)が、あの日と同じメニューを注文した。

そもそもこのカフェの前を通ったことさえも単なる偶然だ。
何の意識もしなかったし、存在自体、忘れていた。

「なんにする?」
「ん?俺は・・・」

同じアイスティーでも銘柄を変えた。
これもあの日と同じだった。

「どうしたの?さっきからなんか変よ」
「そ、そうかな・・・」

アイスティーが運ばれてくるまでの時間が妙に長く感じられた。

(No.322-2へ続く)

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