[No.313-2]すっぱいぶどう
No.313-2
「それって“すっぱいぶどう”と似てない?」
すっぱいぶどう・・・イソップ寓話だ。
確か・・・。
「一言で言えば“負け惜しみ”の話だよね」
「そうね・・・そう言える」
心外ではあるものの、言われてうなづける部分も否定できない。
「別に勝ち負けには関係しないけど」
「誤魔化しているようにも聞こえる」
(誤魔化している?)
「そんなつもりはないけど・・・」
「ただ、どうせ押して帰るなら・・・と思ったの」
結局、家に着くまで1時間近く掛かった。
それだけの距離と時間・・・。
いわゆるモチベーションを維持するための、自分なりの方法だった。
「だったら“事故に遭ってたかも”は縁起でもないよ」
「・・・だね」
いつになく、同僚の言葉が心に響いた。
「茶化すつもりはないけど、いつになく“熱く”語ってない?」
「だって、本当に自転車の話だとは限らないでしょ?」
「彼氏を“自転車”に置き換えたとでも?」
一瞬だけ間を置いてたから、ふたりして大爆笑した。
「それは本当にない!ない!」
「だよね、あなたなら・・・」
そう・・・本当にそうなら“自転車は置いて帰った”はずだ。
(No.313完)
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