[No.312-2]重なるイメージ
No.312-2
「とにかく気になるから」
本来の用事はそっちのけで、手掛かりを探した。
記憶にないなら周りから情報を集めればいい。
「やっぱり、店だよね?」
「そう思う・・・両隣もそうだし、この辺りはちょっとした商店街だし・・・」
小さなパン屋さん・・・そんなお店が似合いそうな空間だ。
「なかなか手掛かりはないわね」
「いっそのこと、お隣さんに聞いてみる?」
「いや・・・」
こうなれば、是が非でも自分たちで解決したい衝動に駆られた。
単に思い出せないことが悔しいのではない。
うまくは言えないけど・・・。
大切な何かが、そこにあるように感じるからだ。
「分かった・・・わたしもそんな気持ち」
もう一度、周辺を見渡す。
そして、改めて自分の記憶に残るイメ-ジと重ね合わせてみる。
ぽっかり空いた空間に重なるもの・・・重なるもの・・・。
「・・・あれ?」
「どうしたの?」
「重ならない・・・」
何となく想い出したイメージと空間が重ならない。
「だから、調べてるんじゃないの?」
「そうじゃなくて、もとから無かったんだよ、ここには・・・」
「だったら、なぜこんなに違和感があるの?」
友人の言葉はもっともだ。
現に、わたしもそう感じていたからだ。
「両隣が新しく出来たからよ」
(No.312完)
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