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[No.312-1]重なるイメージ

No.312-1

登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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見晴らしの良い空間に、違和感を覚えた。

「・・・だよね?」

友人もそう感じたのだろう・・・お互い顔を見合わせる。

「あったよね?」
「うん、あった、あった」

最寄り駅へと続く道を歩いていた。
久しぶりに友人に逢い、そして歩くこの道もまた久しぶりだった。

「何だったっけ?」
「それが問題・・・」

違和感の答えは明白だ。
本来、あるべき建物が無くなっている。
おそらく、知らない内に取り壊されてしまったのだろう。

「いやだぁ・・・全然、思い出せないよ」

確かにあまり通らない道ではある。
だから、仕方がないとも言えなくもない。

「私たち、なに見てたんだろうね」

単に記憶の問題・・・。
けど、なぜだか、それだけでは片付けられない重みを感じる。

「そうね、これが“人”だったとしたら・・・」

例えば、教室から誰かが消えたとしよう。
でも、机は残されている。

「それで・・・ここに誰が座っていたっけ?」
「きっとそうなる」

例え話が相応しいかどうかは別にしても、こんな感じだ。
私たちは案外、見ているようで見ていない。

(No.312-2へ続く)

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