[No.312-1]重なるイメージ
No.312-1
登場人物=牽引役(女性)
=相手(女性)
-----------------------------
見晴らしの良い空間に、違和感を覚えた。
「・・・だよね?」
友人もそう感じたのだろう・・・お互い顔を見合わせる。
「あったよね?」
「うん、あった、あった」
最寄り駅へと続く道を歩いていた。
久しぶりに友人に逢い、そして歩くこの道もまた久しぶりだった。
「何だったっけ?」
「それが問題・・・」
違和感の答えは明白だ。
本来、あるべき建物が無くなっている。
おそらく、知らない内に取り壊されてしまったのだろう。
「いやだぁ・・・全然、思い出せないよ」
確かにあまり通らない道ではある。
だから、仕方がないとも言えなくもない。
「私たち、なに見てたんだろうね」
単に記憶の問題・・・。
けど、なぜだか、それだけでは片付けられない重みを感じる。
「そうね、これが“人”だったとしたら・・・」
例えば、教室から誰かが消えたとしよう。
でも、机は残されている。
「それで・・・ここに誰が座っていたっけ?」
「きっとそうなる」
例え話が相応しいかどうかは別にしても、こんな感じだ。
私たちは案外、見ているようで見ていない。
| 固定リンク | 0
「(013)小説No.301~325」カテゴリの記事
- [No.325-2]似てるけど似てない(2011.12.20)
- [No.325-1]似てるけど似てない(2011.12.18)
- [No.324-2]二度目の別れ(2011.12.17)
- [No.324-1]二度目の別れ(2011.12.16)
- [No.323-2]隣人(2011.12.13)
コメント