[No.310-2]名も無き彼女
No.310-2
「なんとなく・・・展開が読める」
「・・・多分、考えている通りだよ」
そう・・・僕は彼女が連れてきた友達に一目ぼれした。
その瞬間から、彼女には全く目が向かなくなった。
本来なら苗字から入り、いずれ名前を呼ぶこともあっただろう。
でも、それを口にする前に、友達を好きなってしまった。
「結局、彼女の名前を口にすることなく・・・」
「・・・別れた?」
「あぁ・・・自然消滅的に」
申し訳ない気持ちは今でも持っている。
だから、印象には残っている。
けど・・・名前となると別だ。
“覚えていない”というより、もともと記憶されなかった可能性がある。
「ますます、ひどい話に聞こえるね」
「・・・だろうな、今ならそう思う」
逆に今は、何としてでも思い出したい気持ちでいっぱいだ。
「だから、こうして話してみたんだ・・・何か進展しないかと」
「手掛かりになりそうなものは?」
彼女へつながる“モノ”や“人”は、なにも残っていない。
「じゃあ、やっぱり頑張って思い出すしかないじゃない」
彼女との接点を、改めて思い返してみる。
けど、そもそも接点自体がみつからない。
接点ができる前に、早々に彼女とは縁遠くなっていたからだ。
「うーん・・・ダメみたい」
それからも時より、思い出す努力を続けた。
そのせいだろうか・・・誰よりも深く記憶に残っている。
名も無き彼女のことが。
(No.310完)
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