[No.308-2]天ぷらうどん
No.308-2
「おなかいっぱいやわ~」
菜緒(なお)が苦しそうにおなかをさすっている。
「俺も!」
男性でも少しきついボリュームだった。
それに評判通りの味と、えびの大きさでもあった。
「えびはどうだった?」
大きいだけではなく、衣のサクサク感も絶品だった。
もちろん、素材自体が秀逸であることは言うまでもない。
「それがなぁ・・・」
場の雰囲気に反するような、明らかに浮かない表情だ。
「えっ!・・・美味しくなかった?」
味覚は人ぞれぞれ違う。
それに評判が良いからと言っても、好みもある。
「ううん、食べてないねん・・・」
「食べて・・・ない?」
意味が分からず、菜緒から事情を聞いた。
「俺も食べるのに夢中だったから・・・」
確かに菜緒が食べているシーンは見ていない。
けど、理由はよく分からないが、食べていないと言い張っている。
「・・・それなら、えびの天ぷらはどこに行ったんだよ?」
「もしかしたら・・・」
今度は明らかに笑顔になっている。
「あー!やっぱり、せいじゅうろうが持ってるやん!」
(No.308完)
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