[No.307-2]蜘蛛の糸
No.307-2
「・・・とは言っても悲鳴じゃないわよ」
「そんなの分かってるわよ」
さすが同僚・・・飲み込みが早い。
「だって、今日も糸、張ってるのよ」
だから、思わず声が出た。
“あんた何やってんのよ”・・・と。
「そのクモって、前日の?」
「うん、多分そう・・・そっくりだったから」
決して冗談のつもりで言ったのではない。
状況的にも、そう考えるのが妥当だと思ったからだ。
「嫌がらせ?それとも好かれてる?」
「そうね・・・好かれてると思いたいね」
それにしても、2度も糸を張られるなんて妙な気分だ。
わざわざ、自転車に・・・それに前と全く同じ場所だし・・・。
「よほど居心地が良かったんじゃない?」
「今度、会ったら聞いておくよ」
でも、今日は昨日と違い、大変だった。
クモを前と同じように草むらに投げようとしたら・・・。
「糸がくっついちゃって」
払いのけても、糸が私にまとわり付く格好がしばらく続いた。
意外にクモの糸はしつこかった。
それならば、いっそのこと・・・。
「朝、時間もないから仕方なく・・・」
「えっ!そんな可哀・・・ん・・・そっちじゃなくて!?」
「うん、ほら・・・」
朝から同僚の悲鳴が響き渡った。
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