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[No.307-1]蜘蛛の糸

No.307-1

登場人物
=牽引役
(女性)=相手(女性)
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「・・・ん?」

自転車のハンドルに手を掛けた時、あることに気付いた。
一匹のクモが、空中に浮いている。
もちろん、そんなわけはない・・・そう見えるだけだ。

(まさに綱渡り状態ね)

ハンドルとサドルの間にキラリと光る糸が一本見え隠れしていた。

「・・・でね・・・聞いてよ」

昨日のクモとの触れ合いを同僚に話した。

「よくもまぁ・・・冷静に話せるね」
「どうして?」
「だって、“キャー”とか“ワァー”がひとつも入ってないじゃない」
「そう言えばそうね」

全く、女子っぽくない私の行動に対するコメントだった。

「私なら絶対ムリ!」

あまり得意とする人は少ないだろう。
特に女子ともなれば・・・。

「それだと会社に行けないから、つまんで草むらに投げたの・・・」

私の言葉に明らかに同僚が引いている。

「そしたら、今日・・・」
「まさか・・・クモの恩返し?」

別に助けたわけじゃないから、恩返しは有り得ない。
それ以前に、恩返し自体有り得ないが・・・。

「ううん、また糸、張ってたの」

その時は、さすがに驚きの声が出た。

(No.307-2へ続く)

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