[No.304-2]言えない一言
No.304-2
いくつかの物件を調べ、彼女に電話した時だった。
「やっぱり無理・・・お金掛かるし・・・」
「それはどこでも同じだろ?」
自分でも分かるくらいに、少しイラついた。
金額の大小はあれ、どこを借りてもお金は掛かる。
「やっぱり、不安やもん・・・」
(そりゃ、誰だって新天地じゃ不安だよ!)
「・・・で、どうする?」
「仕方ないけど・・・今のまま」
彼女は幼い頃から、世間並みとは言い難い生活を経験してきた。
それを・・・今回の一件を通じて知った。
「母親は再婚と離婚を繰り返すし、住むところも転々とした」
「小さい頃は、いいこと、ひとつもなかった・・・」
それから高校に入学すると同時に、家を飛び出した。
「それでな、仕事始めるようになったんよ」
働き始めると同時に今度は、高校を中退した。
これらの経験が、次第にお金への執着を生んだ。
「だから、お金を使うことに、すごく不安を感じる」
「それなら・・・」
「・・・・それなら?」
「一緒に暮らそう」・・・そう言えたのなら・・・。
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