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[No.302-2]早すぎたメール

No.302-2

「なんだよ・・・その“別の人”って」

はっきり口にしてはいるものの、今でも状況を理解していない。
別の人・・・別の人・・・。
頭の中で呪文のように唱えることで、ようやく意味を理解した。

「もしかして、同じメールをその人にも送ったの?」
「うん・・・」

これで、さっきの“来なくていい”理由が何となく分かった。
ただ、納得できないことがひとつある。

「僕の方が先に返事しただろ?」
「そやけど・・・」

話を続けても、彩(あや)を追い詰めるだけだと分かっていた。
でも、言わずには居られなかった。

「もういいよ!」
「近く・・・」

何か言いかけた彩を無視して電話を切った。

そのことが原因であることは疑う余地もない。
それから彩とは音信不通になった。

今でも思う。
あの時、冷静に引き下がっていれば良かったと・・・。
けど、当時の僕なら無理だっただろう・・・とも考える。
なぜなら、メールで二股を掛けられ、僕は選ばれなかった。
そしてその悔しさが怒りに変わったからだ。

そのことがきっかけで、メールを直ぐには見ないクセが付いた。
あえて一呼吸置いて見る、そして返事をするようになった。

「あの時、もう少しだけメールを見るのが遅れた・・・」

今も彼女のそばに居られたのかもしれない。
No302
(No.302完)

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