[No.299-2]スクラッチ&ビルド
No.299-2
あれから、更に1ヶ月ほど経過した。
「元気にしてた?」
また、由実子(ゆみこ)から先に声を掛けられた。
ただ前回と少し違う。
今日は、あえてここで待ち合わせをしていた。
「・・・すっかり、無くなっちゃったわね」
「うん、跡形も無く」
なんだか、想い出まで無くなってしまったように感じる。
「私の部屋は、あの辺りだったね!」
「“あの”ってどこよ?」
「ほら、向こうに見える・・・向こう・・・?」
「どうかしたの?」
今まで気付かなかった。
寮の向こうに、こんな景色が広がっていたなんて・・・。
「公園・・・あったんだね」
「うん・・・私も今、気付いた」
寮に住んでいた頃は、全く気付かなかった。
「寮が無くなって、気付くなんて皮肉ね」
由実子の言葉は、何らかの教訓のようにも聞こえる。
事実、無くなって・・・失ってみて、気付くことは少なくない。
「でも、気付けてよかったよ」
「また、新しい想い出が作れそうね」
「・・・ってことは!?」
答える間もなく、ふたりで公園に向かって走り出した。
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