[No.299-1]スクラッチ&ビルド
No.299-1
登場人物
=牽引役(女性)=相手(女性)
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「あなたも来たの?」
同僚の由実子(ゆみこ)が私に声を掛けてきた。
「うん、だって・・・」
つい1ヶ月前まで住んでいた建物の解体作業が今日から始まる。
そこには約3年ほどお世話になった。
「いよいよ、女の園もおしまいね」
「・・・というより、大奥でしょ?」
会社の女子寮が閉鎖され、取り壊されることになった。
「みんなどうしてるかな?」
今はみんな、散り散りになっている。
「喜んでる人も居るんじゃない?」
寮に入ることは強制ではないにせよ、周知の事実ではあった。
それでも、何かと寮の方が便利であったことは間違いない。
通勤にしろ、食事にしろ・・・。
ただ、快適・・・というには程遠かったが。
「まぁ、なんたって、女の園だもんね」
気苦労は耐えなかった。
だから、寮の閉鎖を手放しに喜んだ人も多かった。
「・・・で、今日はなに?」
聞かなくても分かる答えをあえて求めた。
「あなたと同じ理由よ」
ほどなくして、重機の音が聞こえてきた。
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